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5 出会い

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 フィルティのしゃべり方が上から目線と感じたので修正しました。




 私がトレーニングを始めてから早2年。

 体力も同い年と比べると格段に多くなり、そして私の学問や礼儀作法の勉強も多くなってきた。


 父親は、我が姉マリアーゼをこの国の第一王子の妃にしたいと考えているよう。歳も近く、確かレイナードお兄様と同い年だったか。それ故に父はお姉様とついでに私の教育を厳もしくやるように、とお母様達に言いつけているらしいのだが………。



「2人とも覚えがいいわね」

「焦らなくていいのよ?」



 よくできれば褒めてくれ、悪さをすれば必要な分叱り、時には心配してくれる。




 ………2人はこの世界の、母の鑑なのではないだろうか?







 そんな毎日を過ごしていたが、ある日父親が襲来した。


 なんでも、上級貴族……伯爵以上しか参加できない、王家主催の大規模なお茶会(ティーパーティー)が近々あるそう。ただし、参加できるのは一家4人まで。

 そのお茶会に、なぜか私が参加することになってしまった。残りは父親、マリアーゼお姉様、ヴィルモンドお兄様。

 レイナードお兄様は公爵家……つまり王族の推薦があり、アルカディア王立魔法学園の初等部に通っているため参加できない。魔法学園は全寮制なので、長期休暇にしか会えないからとても寂しい。




 物凄く心配だ。

 主に道中、私やお姉様達が洗脳されないかが。


 私が青ざめていると、メリエッタさんが声をかけてきた。



「大丈夫よミエラちゃん。私のお父様があなた達のこと見て下さるようだから。うふふふふふふふ…」



 ………なんと心強い。メリエッタさんは事前に手を打っていたようだ。最後の笑い声は怖かったが。




 さて、出席が決まったからには色々と準備がある。お茶会と言っても、その本質はお見合い会。もちろん私達の。

 つまり、きれいなドレスを着て、お化粧をしなければいけない。私も精神年齢30だが、ドレスへの憧れはある、が………。





 ワタシハ、コノヨノジゴクヲミタ。



 皆さんは着せ替え人形遊びをしたことがあるだろうか?


 見ているほうは楽しい。そりゃかわいいからね。



 だが、着せ替えされるほうからすると、苦痛以外の何物でもない。


 最初は可愛い可愛いと言われ、嬉しくて笑っていたが、重いドレスにだんだんと顔が引きつっていき、気づいたら無表情になっていた。




 ……わぁ~…コレ毎回やるのか~。


 最終的にドレスはふわふわしたピンク色のものに決まった。私のエメラルドグリーン(?)の髪と合わさって、お花みたいな印象だ。


 ちなみに、メリエッタさんの父で元騎士団長のフレドリック・フォン・ヒルダー()()主催のお茶会のときは、親戚だけの小規模なものだったので、外出用のワンピースを着て行った。

 まあ、それでも高価なものなのだが。


 しかし、何故公爵家のご令嬢が、あの、屑を体現したような男に嫁いだのか不思議だ。






 そんな悩み事をしていたせいか、私は思い出せなかった。


 このお茶会で、ゲームだとミエラリスの取り巻きになる、1人の令嬢に出会うことを。







 ◯◯◯◯◯







 お茶会は王城で行われた。私達は王都に住んでいるので移動は短い。プラメミウス(ちち)も一応王都に住んではいるが、しょっちゅうどこかに出掛けている。

 王都から少し離れたナヴェーレ領は、父の右腕と言われる使用人が運営している。もちろんその使用人も父のことを嫌っていて、プラメミウスが捕らえられることになっても奴に逃げ場はない。

 外堀どころか内堀までも着々と、確実に、埋められているようだ。




 会場に着くと父は豚みたいな身体をした貴族とどこかへ行ってしまった。

 残された私達は立ち尽くし、唖然とした。

 父親の評価が10段階ぐらい落ちたのは言うまでもない。

 もっとも、もうマイナス数十に突入しているのだが。


 だが、そんな奴でも血は繋がっている。成り上がり貴族の子供である私達に向けられたのは、侮辱と軽蔑の目…………


 ではなく、それを通り越した哀れみと同情の視線。



 ついには会場を案内してくれるご婦人達まで現れて………






 その優しさに、とうとう涙腺が決壊してしまった。


 成り上がりとはいえ、侯爵令嬢が公の場で泣いてはいけない。

 そう分かってはいたが、初めてお母様と離れたこと、そして、心の片隅で、父親からの愛情を期待していた自分に気づいてしまったこと。

 これらが合わさり、涙が止まらなかった。





 しばらくして、国王陛下とその家族が入場した時には、もう泣き止んでいた。



『私の親はお母様達だけ。私に父と呼べる(ひと)は居ない。私はもう迷わない』



 そう決意して。





「少しよろしいでしょうか?」



 可愛らしい声と共に私の前に姿を現したのは、艶やかな黒髪に、深海のような瞳の美幼(?)女。

 はて、同年代の女の子に知り合いはいなかったはず。



「ああ、失礼いたしました。私はフィルティ・レイダン。レイダン伯爵の一人娘ですわ。ミエラリス・ナヴェーレ様で間違いありませんでしょうか?」



 フィルティ


 彼女の名前を聞いて今更ながら、このお茶会はミエラリスの取り巻きとの出会いイベントだと思い出した。



 だが少しおかしい。

 彼女は、太っているはずなのだ。なのに目の前のこの子はスラリとしている。



 まさか……


 私は辺りを見回し、誰もいないことを確認すると、小さな声で囁く。



「『ガクウワ』の推しキャラは誰?」

「ヴィル様一択」

「右に同じく」



 フィルティは即答、もちろん私もだ。

 そしてガシッと握手する。



「会えて良かったわ同胞。フィーと呼んでもいいかしら?」

「もちろんですわ。私は立場の関係上、ミエラ様と呼ばせていただいても?」

「ええ、いいわ。でも2人だけの時はミエラと呼んでちょうだい」

「分かりましたわ」



 目を見合わせ笑いあう。


 まさか自分以外にも転生者がいたとは。

 嬉しい誤算だ。




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