3 義兄弟
母譲りの翠がかった銀髪と紫の瞳。今は可愛らしいが、成長すれば絶世の美女になることは誰の目にも明らか。
そんな女の子に私は転生した。
でも父親のせいで死んでしまうかもしれない。
母も自分も、義母達も誰も死なずに幸せに暮らしたい。
あいつと家は正直どうでもいい。
私が初めて史上最高の屑と対面してから数日後。
あまり会話もしなかった義兄達が、何かと構ってくれるようになった。というか前と変わりすぎて、『もしや家出の前兆?!』と身構えてしまったほど。でもそれはシエラと義母メリエッタが仲良くしているところを見て違うとわかった。
いつの間に仲良くなったんだろう?
今まであいさつぐらいしかしなかったので、改めて紹介してもらった。
…………悲鳴を上げなかった私を褒めてほしい。
なぜかって?
全員ゲームに出てくんだよーーっ!!
しかも、一回しか出てこないモブじゃない、攻略対象とその家族として!
誰だ『ミエラリスは王子に義兄を重ねているのでは?』って言ったやつ!身内近くにいたじゃねーか!!
…………………ゴホン。
私には義兄が2人、義姉が1人いる。
レイナード、マリアーゼ、ヴィルモンドの3人だ。それぞれ年が5つ、4つ、2つ離れている。
話は変わるが、アルカディア王国の貴族は、13歳になる年に王立の魔法学園の中等部に入学する義務がある。ちなみに初等部もあるが、王族の推薦が無いと通えない。
ゲームが始まるのは15歳の、中等部3年生。主人公が転校してきた日。
攻略対象者は第一王子、宰相の息子、騎士団長の息子、大司教の息子、そして二番目の義兄ヴィルモンドの5人。レイナードは婚約者がいるので攻略対象外だが、王子の側近、ヴィルモンドの兄として登場する。
義姉のマリアーゼもヴィルモンドの姉として登場。悩む主人公にアドバイスをする。
前世のわたしの憧れで、今は家族の義兄達が遊んでくれる。
とても嬉しい。とても幸せだ。
この時間が崩れるのは嫌だから、私は考える。皆(父除く)が笑顔でいられるように。
と、その前に一番年が近いヴィルモンドが浮かない顔をしているのに気がついた。
何が原因だろう?
ゲームの設定を思い出しながら考える。……最近考えてばっかりだ。
彼は毒舌で、実は寂しがりや……だっけ?
それを今の状況に当てはめると……………おや?もしかして……年上達に構って貰えなくてヤキモチ妬いてる?可愛い。
私は義兄を見つめる。じ~~~~っと。
「えっと、ミエ…ラリス……?どうしたの?」
メリエッタさんと同じ明るい茶髪に綺麗な緑色の眼。父親の遺伝子どうしたんだ?この義兄弟も、私も。まぁ、あっても嫌だがな!
おっと、そうじゃなくて。
「あ、あの、わたしのことはミエラとよんでください。そのかわり………“おにいさま”とおよびしてもいいですか?」
たぶんこれでいい。末っ子君、お兄ちゃんって呼ぶと嬉しいと思う。わたしも末っ子だったからね!“わたし”だってむだに26年生きてたわけじゃない。
……じゃない…はず。
トスッ
んぅ?何か聞こえた気が……?
「………」
「……?」
え、マズかった?……お願い何か言って。すごい気まずい。
「あっ、ヴィルだけずるいわ。ミエラ、私のことも“お姉様”って呼んでちょうだい」
「ひぇっ!?あ、はい、おねえさま」
「きゃ~、嬉しいわ。私ね、ずっとお姉様って言われるのが夢だったのよ!」
「僕がいるじゃないですか!」
「妹は別なのよ!」
「2人共落ち着け……。はぁ…俺もいいか?」
マリアーゼとヴィルモンドの言い合いが始まり、それをレイナードがたしなめる。騒がしくなってしまったが、マリアーゼのおかげで気まずい空気が吹っ飛んだ。
お姉様、ありがとうございます。
お兄様達と遊びながら、前世の記憶をたどっていく。
えーと、
①お義母様達が家を出て行く→解決
②お母様が亡くなる→お義母様がいるからたぶん有り得ない=解決
あとは……
あ、ミエラ、誘拐されるんだっけ?