2 年上会議
一番目の義兄、レイナード視点です。
俺はレイナード・ナヴェーレ。ナヴェーレ侯爵の息子で、今は8歳です。
俺には1つ下に妹が、3つ下に弟がいます。あと、5つ下に腹違いの妹が1人います。俺のお母様とシエラさんは仲は悪くないですが、話をしません。ですが、そんな2人に共通の話題ができました。それは腹違いの妹、ミエラリスが原因です。
ミエラリスが3歳とは思えないほど賢いことは前からわかっていましたが、この前あいつが来たときに改めて凄いと思いました。
そのとき俺のお母様は体調を崩して休んでいたので、俺、マリアーゼ、ヴィルモンド、シエラさん、ミエラリスが会いました。どうやらミエラリスだけを見にきただけだったので、いつもみたいに叩かれずにすみました。
あいつが出て行ってホッとしていると、ミエラリスが扉を睨んだまま動いていないことに気づきました。
心配して声を掛けようとすると、ミエラリスは汚いものを見るような目をして、可愛い顔を憎々しげにを歪ませて、チッと舌打ちしました。
俺は驚きました。いえ、俺だけではなく部屋にいた全ての人が目を見開き凍りつきました。主人に失礼なことをしたからではありません。『幼子でもわかるほどに主人は堕ちたのか』そう察したからです。
そのあとミエラリスは眠ってしまいました。さっきの顔が嘘みたいな、可愛らしい寝顔でした。俺達はそのまま部屋に留まっていました。使用人達もあいつが屋敷に居ないので、仕事に戻らずミエラリスの寝顔を微笑ましそうに眺めていました。
そのとき、シエラさんが戦術級魔法並みの言葉を投下しました。
「この子にあんな顔されるなんて………………早くくたばらないかしら」
和やかだった空気が、一瞬にして氷点下に達しました。
普段は優しいシエラさんが、闇よりも深く黒い毒を吐いたからです。
この空気に耐えかねたのか、マリアーゼが口を開き、
「お、お母様も同じこと言ってました……」
………………マリー。それは逆効果だよ……。
内心冷や汗ダラダラの俺達に対して、シエラさんは嬉しそうに「いいことを聞いたわ」と笑い席を立つと、スキップしながら屋敷の奥へと消えていきました。
きっとお母様とお話しをするつもりなんでしょう。
ちょうどいいので、俺達も話そうと思います。
「マリー、ヴィル。ミエラリスのことどう思う?」
「すっごいかわいい!」
「頭がいいとおもいます」
話しながら使用人達に目配せをして、部屋から出てもらいました。
さっきの話はほぼ全ての使用人が聞いていたけど、問題ありません。み~んなあいつが大嫌いだからです。
「そうだね。ねぇ、そんな子をあいつの好きなようにさせるのは、嫌だよね?」
「「うん」」
「だからさ、俺達でミエラリスを守ろう」
「「はいっ!」」
◯◯◯◯◯
この話は部屋に居なかった使用人達にも伝わり、ミエラリスは屋敷中(父除く)から『賢い子』認定された。
更に義母、メリエッタと母シエラの仲を深め、レイナード達兄弟の結束の要因となった。この日から、子供達はまだ幼い義妹を、そして母親達は可愛い我が子等を魔の手から守る為に協力していく。
知らないうちに目的の1つを達成したミエラであった。