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異世界転移(最強を目指す者語り)  作者: 出戻りわたあめ
二章 ダンジョン都市アスタール編
28/30

痕跡

更新頻度ぉぉぉ!


 一千のオーガの群れ。

 マロンから伝えられた群れの規模は想像以上だった。

 「一千とは......随分と大規模ですね」

 漠然としか思い浮かべられないが一千という数は決して少なくはない。多数の冒険者や軍がいるダンジョン都市でなければ壊滅させられていたかもしれない。


 「はい。幸いオーガの群れは都市に進行してくる様子はないのですが、危険度は言うまでもなく高いですからね。ギルド依頼として直ぐにでも発行することになりますよ」

 「いつ頃ですか」

 「現時点では五日後の予定です。進軍してくる前に此方から叩きに行くのですが、召集に時間がかかるため五日後と相成りました」

 ダンジョン都市アスタールはその名の都市の中にダンジョンがある。

 ダンジョンは塔のように高く、その内部もまた、広く幾重もの階層に分かれている。

 ダンジョンの階層はまだ未確認の場所も多く、現在確認されている階層は45層までらしい。


 ダンジョン都市というだけあって都市に集まる冒険者の目的は主にダンジョンの探索というてんにあるため殆どの強者はダンジョンの中に潜っているため集めるにも時間がかかるというわけだ。


 本来なら戻って来る時間も考慮すれば五日で戻るのは不可能に思えるがそこは、何かしらの移動手段があるのだろう。


 「オーガの群れという事で危険度はAランクです」

 危険度Aランク____確か都市壊滅の脅威に対してつけられる称号だったはずだ。

 下に3つ、上に1つの計5ランクに分けられているらしい。


 「でも、昨日も言った通りジン君はまだ新入りなんだから無理に出なくてもいいんだからね」

 確かにギルド発行の依頼とはいえ、強制される訳ではない。断る事も可能ではある。


 とはいえ、断る事が出来ない場合がある。

 一つは村や町に問わずギルドが建設されている地域がモンスター等の災害に襲われた場合、その地にいる冒険者として対処しなければならないというもの。


 もう一つが、王族や貴族等の有力者の指名依頼だ。

 厳密には断る権利はあるのだが断れば、まず有力者の顰蹙を買うことになるし、この国にいずらくなる。

 人によっては命まで狙って来るかもしれない。


 有力者の指名依頼事態はまず行われるものではないらしいがこれも実質断る事が出来ない依頼だ。



 今回の場合は冒険者側からオーガを討伐しにいく、つまり、地域の外で行われる依頼の為、俺にも断る権利があるということだ。


 「ジン君、聞いていますか?」

 「はい、ちゃんと聞いていますよ。そーですね。もしかしたら俺は行かないかもしれません」

 確定したわけではないが、その可能性もある。

 自分からでは断りにくい状況ではあったのでマロンさん自身から言ってくれたのは渡りに船だった。


 「ジン君、まさか違う用事でもあるの?」

 「はい、多分ですけどね」

 「多分なの?」

 マロンさんが不思議そうに首を傾げるが仕方ない。

 断言したくとも出来ないのが実情だ。



 「まぁ、その事はいいわ。ジン君、今日は何の用で来たの?」

 そうだ、オーガの群れについてばかり話していて本題を伝え忘れる所だった。


 「今日は尋ねたい事があって」

 「聞きたい事?」

 「はい。最近盗賊や泥棒関連の依頼はないですか」

 「ありますよ。ついてきてください」

 「いやいや、大丈夫ですよ。あるなら自分でボードから探しますから」

 掲示板には数百枚の依頼書が貼られている。

 ランク分けに分かれているとはいえ、探すのは一苦労だが、窃盗関連の依頼があると分かれば時間をかけて探すのも苦ではない。


 「遠慮しなくても大丈夫ですよ?」

 「いえ、本当に平気ですから」

 探す事よりも寧ろ残業で睡眠不足であろうマロンさんに迷惑かける方が精神的にくるものがある。


 「もう、分かりました。でも、分からない事があったら直ぐ読んでくださいよ」

 「分かりました......と、そうだ、マロンさんこれ、どうぞ」

 「これは、茶葉ですか?」

 「はい、休憩時間や家で是非飲んでください。少しは癒されるだろうし、きっとぐっすり寝れますよ」

 「ありがとうございます!」

 マロンさんは喜色満面の笑みで喜ぶ。

 軍施設で飲んだ紅茶から思い付いたプレゼントだったが反応を見るに買っておいて正解だった。 


 


 「ふんふんふふ~ん♪」

 上機嫌なのか鼻唄を唄うマロンさんから離れて掲示板の元に行く。正直入り口でマロンさんと話しているのは目立ってしようがなかった。



 「さて、どんなのがあるのか」

 山ほどもある依頼書に流れるように視線を向けていく。一つの依頼書に目が止まる。


 「奴隷狩り......」

 一つ気前に対峙した坂井達が起こした奴隷狩りは一端に過ぎない。他の箇所でも奴隷狩りは続いている。


 「物騒だな」

 他にも冒険者の行方不明に依頼途中の辻斬りと不穏な依頼が多い。

 

 「と、今は関係ないな」

 再度視線を依頼書に巡らせる。

 すると、目的であった依頼書を見つける。


 ____壺が盗まれた。金が盗まれた。絵画が盗まれた。宝石が盗まれた。宝刀が盗まれた......確かに掲示板には幾つかの窃盗の依頼書がある。

 しかも、依頼書が発行された日付がそれぞれ近い。

 もし、これがアインの言う怪盗の犯行なのだとしたら思った以上にその存在は広まりつつあるのかもしれない。



 仮にそれぞれ違う人物の犯行なのだとしてもこの都市にはそれだけ盗みを働く人物が多いということになり、それだけ情報源が多いということで困ることは特にない。



 「取り敢えずこれくらいでいいか」

 適当に五枚の依頼書を剥がして手に取る。

 このまま受付迄持っていき受理してもらえば依頼を受けた事になる。


 「マロンさん、お願いします」

 「あれ、ジン君、早いですね」

 「直ぐ見つかりましたからね」

 元々少しでも情報を得るために来ただけだ、盗み関係の依頼なら詳細は問わない。

 要は何でもいいということだ。


 「____はい。これで受理完了です」

 差し出した書類に判を押して受理される。

 

 「ジン君、頑張ってくださいね。後、茶葉ありがとうございました。大事に飲みますね」

 「その前に自分の体を大事にしてくださいね」

 「はぁい」

 マロンさんはおどけたように返事する。


 「じゃあ、俺いきますね」

 「また、来てね」

 バイバイと手を振るマロンさんと別れてギルドを出る。

 

 

 

 

 「そうなんざますよ。ほんの少し目を離していたらワタクシのネックレスが盗まれたのでざますよ!」

 ギルドを出た俺は受けた内の一つの依頼者の元まで来ていた。


 依頼者のモノワール夫人はカンカンに怒っている。

 

 「ちょっと聞いてるざますか」

 「聞いてますよ。それより、どれくらいの目を離してたんですか」

 「お風呂に入るほんの三十分程でざます。うっかり置き忘れてしまって」

  「ということは、内部の者の犯行と考えた方がいいかもしれませんね」

 「まぁ、それはありえませんわ、ワタクシの使用人はワタクシに忠実でそのような事はいたしませんもの」

 「はぁ、じゃあ、敷地を見て回りますね」

 


 依頼者のネックレスは三階の自室に置いていたとの事だった。一階と二階の廊下には使用人がいたというし外部から侵入したのなら使用人に気付かれぬように入ったか、目的の場所だった夫人の自室に直接入ったかのどちらかだ。


 もしそうならば侵入した際の痕跡があるかもしれない。


 「おいおい、あったよ」

 三階窓の下枠の辺りに黒い土の様なものが付着しているのを精霊魔法モードで強化された視力で確認する事が出来た。


 正直期待はしていなかった。推論はあくまでもし外部犯だった場合の話で半ば当てずっぽうだった。

 そもそも、外部犯と断定する材料が一つも無かったからだ。


 だけど、実際に窓の下枠の辺りに土が残っていた。

 あれがもし、窓から侵入した者の靴に付いていた土なのだとしたら侵入者の存在が真実味を帯びてくる。


 「問題は侵入の仕方だな......」

 土が付着しているのは一ヶ所だけだ。

 もし、身体能力でひといきに部屋の窓まで上ったのなら十五メートル以上を跳んだ事になる。


 この世界に来て、人間の限界を超えた身体能力を手にした俺でも素の状態では十五メートルのジャンプにするには至らない。


 本当にジャンプで上ったのなら犯人の身体能力はかなり高い事になる。

 


 情報の為と安請け合いしたが怪盗の捕縛は想像よりも難しいのかもしれない。


 まぁ、魔法を使った可能性もあるし、そもそも、土も今回の盗みとは関係ないのかもしれない、断定するには女性が不足している。



 「他の場所に行ってみるか」

 比較すれば情報の精度は増す、残り四ヶ所の依頼主の元に行けば小野豆と答えはでるだろう。



 ____結果だけを云えば残りの内一ヶ所に同じように土の付着とそれとは別に傷をつけられた場所が一ヶ所あった。


 現段階では断定はできないものの怪盗に近づきあるような、そんな気がしていた。


 

 

 

  

 

 計五つの依頼主の元を周り終えると、エルとライカの進捗具合が気になった俺は泊まっている宿に戻ってきていた。


 結局宝玉について俺が得た情報はゼロだ。

 もし、エル達が宝玉の場所を突き止めているなら、面倒そうな怪盗、若しくは盗人に無理に関わらなくても良くなる。



 僅かな希望を抱きながら二階の部屋に行くため階段を登っていると、ふと声が漏れて聞こえて来る。



 「エルちゃん、ジンさん戻ってきたですよ!」 

 「......どうしよ」

 「わからないです!」

 漏れてくる声は慌ただしい。

 希望がどんどんと不安に変わっていく。


 嫌な予感がし、正味部屋に戻りたくもないのだが、そういうわけにもいかないだろう。

 

 「ただいま」

 「......おかえり」

 「お帰りなさいです」

 エルは相変わらずの無表情で、ライカは下手くそな作り笑いで俺を迎える。


 そんな二人の頬には何かのソースがついている。

 よくよく見れば幾つかの串も落ちている。


 「何か言うことはないか」

 「ごめんなさいです、帰りに買い食いしてしまったです」

 真っ先にライカが土下座の体勢をとって謝ってくる。


 「......ジン、ごめん」

 隣に立つエルも謝ってくる。


 「はぁ、まぁ、帰りに買ったのならいいさ。妙に焦ってるから何事かと思ったぞ、大した事なくてよっかた」

 ビクリとエルとライカが反応を示す。

 何故だか嫌な予感がしてきた。


 「......ジン、ごめんなさい」

 再度謝ってきたエルは袋を差し出してくる。

 ぺたんこになった袋には見覚えがある。


 「エル、まさかこれは......」

 「......ん、そう」

 信じたく無かったが、エルはコクりと頷いて肯定する。


 エルが差し出した袋は依頼で得た金銭を入れていたものだ。それがすっからかんの状態でエルに握られている。


 何があったんだ......。

 

  

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