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異世界転移(最強を目指す者語り)  作者: 出戻りわたあめ
二章 ダンジョン都市アスタール編
23/30

異変


「今日も大漁だねジンくん」

ダンジョンを出ると採取した素材を換金するためダンジョン都市アスタールのギルドへと俺達はついていた。


当然ながらミクロ村とは比べ物にならないくらい大きな規模のアスタールの冒険者ギルドだが、冒険者の数もまたミクロ村とは比べ物にならないくらい多く、受付に着くまでに10分程待った。


「今日はゴブリン三匹とシルバーコング五匹です」

 「おめでとうございます。シルバーコング討伐成功でC級に昇格です」

 「ありがとうございます」

 モンスターを狩り続けて一月でやっと目的のランクに到達した。

 というのも、冒険者ランクはCランクから一人前といわれるらしく稼ぎが良い依頼を受けられるようになる。

 それは同時に命の危険が高まると共に強力なモンスターと戦えるという事だ。

 正直、今のランクで戦えるモンスターでは役不足で全力で戦う事が出来ないでいた。


 

 それに、どうしてもランクを上げなければいけない理由もあった。


 「これで対人系の依頼も受けれるようになったな」

 ギルドでは明確に対人を想定した依頼は一人前のCランクからしか受けられないらしい。


 先月のような商人護衛は外敵から依頼主を護るのが依頼内容で対人間を想定しているわけではないという曖昧な線引きなされており大丈夫だったようだ。


 「......ジン、ごはん」

 同じくCランクに昇格した大食いキャラとして認知されてきたエルが服の裾を引っ張って促してくる。


「そうだな、そろそろお昼にするか」

 昼時の混雑に紛れるように適当に空いている席に座する。


 「いつも通りでいいか?」

 「......ん」

 ギルドの職員を呼び出し、お決まりのメニューを注文する。 


 数分を要した後、俺の前には野菜スープにコッペパンのようなパン一つの質素な料理とも呼べるのか微妙な料理が置いてあり、エルの前には丼にお米のようなものに山盛りの肉がのり、特製の甘辛い汁がかかった所謂牛丼が置いてある。

 それも、三杯もだ。


 小さな体のどこにそんな入るのかと最初は驚いたが今となっては見慣れた景色だ。


 「エル、今日は早速Cランクの依頼を受けようと思うんだがどうだ」

 「……ん、ダンジョン?」

「いや、たまにはダンジョンを出て依頼を受けよう」

「……なんで?」

「ダンジョンは人が多くて暴れにくいし……それに魔法に制限がかかるだろ」

俺の魔法は炎系統だ。狭い場所や室内とは相性が悪い。ダンジョン内では魔法を使うにあたってセーブしなければいけない場面がでてくる。


「エルのように地属性系が使えたら良かったんだけどな」

俺はスキルの力でエルと同じ精霊魔法を使えるようになった。

俺が得れるのはあくまでエルに関してだけだったようで精霊魔法のスキルは得たもののそれに付随する精霊事態は別のものとしての判断らしく、精霊事態は俺とエルは別々の精霊だった。


「……エルも、ジンと同じできない」

俺が地属性を使えないようにエルは炎系統の魔法が使えない。

エルが云うには炎はエルフとの相性が最悪らしい。


「まぁ、兎に角、今回は全力を出してみたいというのが優先したいことだからダンジョンは避けたいんだ」

 「......ん、わかった」

 「おお、じゃあ、これ何てどうだ」

 エルが賛同してくれることは分かっていた、予め当たりをつけていた依頼書を見せる。


 「......オーガ?」

 「そうだ、力を試すにはもってこいの相手だろ」

 例に漏れず俺のよくしる異世界ファンタジーに酷似したこの世界には二本角のオーガがちゃんと存在する。

 パワーも頑強さもあるオーガはまさにうってつけの獲物だった。


 「......わかった」

 「よし、じゃあ提出してくる」 

 行くと決まったのなら善は急げだ、早速受付に向かう。


 







 

 場所は変わり無事依頼が受理された俺たちは無事受理された依頼を遂行すべく西門前に来ていた。その傍らには一頭の馬がいる。


 というのも、依頼先の村は遠く馬で駆けても数刻はかかるらしく、歩きなんてもっての他だと購入していた。



 

 「意外といけるな」

 出発と同時に馬に跨がると未経験にもかかわらず意外うまく乗れた。

 誰かの経験を得たのか、身体能力が上昇しバランス感覚が強化されたのか定かではないが乗れるならそれに越したことはない。

 

 「エル、しっかり捕まってろよ」

 「......ん!」

 後ろに座るエルがこしに回した腕に力を込める。

 これならば落ちることもないだろう。


 「よし、少し速度を上げるぞ、いけバニク」

 軽く背を叩いて速度を上げて道を駆け抜ける。

 因みにバニク何て安直な命名をしたのは勿論エルだ。






 それから、どれくらい走ったのだろうか、日が落ち空が薄暗くなり始めた頃、道が二手に分かれる。右側がコロブスロンという大きな街に繋がる街道らしい。しかし、俺達の目的地のキヤケ村は左側の道だ。


 キヤケ村の道はモンスター等が往来することで自然にできた獣道らしく、整備などは勿論されておらずでこぼとしており、周りも草や岩が無造作に混在している。


 構わず進んでいると視界の先に影を発見する。



四つん這いの影は此方の様子を窺っているのか動かない。


「あれは、モンスターか……」

「……ちがう。人」

「本当か」

エルに言われて精霊魔法モードを使い、視力を強化して改めて影に目を凝らす。


すると確かにそれはボロ布を羽織っただけの人らしきものだった。


人が地面に倒れて動かない状態がどういう意味を示すのか察するのは容易だ。


「エル」

「……ん」

俺の背からひょっこりと出していた顔をエルは戻す。

エルは人の死が自分の命を投げ出すのを厭わない程苦手だ。

俺だって人が当たり前に亡くなるこの世界に来てから感情の揺らぎこそ少なくなったが何も感じないわけじゃない。



「悪いな」

同情したとはいえ、急ぎの今、弔う事はできない。

万が一にも亡骸を踏まぬように速度を落として横を通りすぎる。


「……ジン、まって」

「どうした」

問いに答える事なくエルは倒れるそれに掌を向ける。

同時にエルから魔力が発せられ緻密に練られていく。


練られた魔力は魔法へと変換される。


ふわりと、優しい風が舞う。

風は倒れるそれを包み、そっと肢体を持ち上げて人が踏まぬよう端に優しく置かれる。

 

 「行くか......」

 「......ん」

 背後を振り替える事なく俺達は進んでいく。








 「ここがキヤケ村か」

 ミクロ村よりも寂れているのだろうか、村には活気が感じられない。

 

 「先ずは話を聞かないといけないよな」

 依頼の詳細を尋ねようと辺りを見渡すも近くに人影はない。


 「いや、これは誰も居ないのか」

 近くにだけじゃない、村の何処を見ても耳を澄ましても人の声すら耳に届くことはなかった。

 

 

 「......ジン、あそこ」

 エルが指し示す場所には小さな納屋が立ち並ぶ中で一回り大きい建物がある。恐らく、村の中で一番の権力者の村長の住み処だ。


 「そうだな、あそこに行くか」

 村長の家なら何かの情報を得られるかもしれない。


 「すいませーん。誰かいますか?」

一応の礼儀として扉をノックするが返答はない。

しかし、扉に近づいた事で内に人の気配がすることには気づいていた。


いや、或は他の家の住人も中に閉じ籠っているだけなのかもしれない。


問題は村の住人全てが息を殺し閉じ籠る程の原因が何なのかだ。


「ダンジョン都市アスタールから来た冒険者なのですがいないなら帰りますよ」


出てこないなら帰ればいい。だけど、それは困るはずだ。全員が怖れる何かを解決してくれるかもしれない者、それもこれが最後の希望だと考えた時、何の反応を示さずにいられるだろうか。

例え村長が我慢したとしても…………


その予想は正しく、聞き逃す事のできない物音が聞こえてくる。


「……出て来てくれますね」

俺が存在感の確信したことが相手に伝わったのか少しの間を開けて溜息が扉の向こうで吐かれる。


 「……冒険者証を見せてくれぬか」

 「分かりました」

 冒険者証を見せれば俺のランクや名前等の情報が分かる。身分を証明するにはうってつけだ。


僅かに開いた隙間に冒険者証明を差し入れる。

真剣に確認しているのだろう、少しの時間をかけて熟読した村長は驚きの声を発した。


「冒険者ギルドに加入してから一月といくばかでCランクに上がるとは……」

Cランクに昇格するまで平均的にどれ程かかるものなのかは知らないが村長の反応を見るに早い方ではあるのだろう。


しかし、考えてみれば特段驚く事ではないのかもしれない。


ミクロ村の冒険者達を単独で蹴散らす坂井と互角に魔法戦を繰り広げたエルや、坂井とエルの力を完全とはいえずとも得ている俺が他の新人よりもやれるのは客観的に見ても間違いない。


  逡巡の後に答えが出たのだろう、扉が開かれ真っ白な顎髭を携えた老人が出てくる。

 

 「分かりました......是非我らの話を聞いていただきたい」




 

 




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