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異世界転移(最強を目指す者語り)  作者: 出戻りわたあめ
一章 異世界転移編
18/30

戦闘開始

本日2話目


ダンジョン都市アスタールから森に向かうには急いでも数時間は要してしまう。


森に間もなくつく頃には気がつけば陽が最も高く昇る時刻へとなっていた。


もし、ブランが坂井と出会ってしまっていたら生存は絶望的だろう。


残念な事にブランが坂井に既に出会っている確率は高い。


森がクロム村とダンジョン都市の間にある以上ブランがアスタールに向かっているというエルの言葉が正しければとっくの昔に遭遇しているはずだ。

にもかかわらず俺達はブランどころかここまでの道のりで人に遭遇することはなかった。


気が変わって戻ったのなら良いのだがブランの必死さをみるにその可能性はないだろう。


「ラインハルトさん。そもそも、ブランは何を運んでいたんですか?」

依頼中は本人もいる手前聞かなかったが当の本人を探すための情報を得たいし問題はないだろう。


「ん、それがな……俺も知らねぇんだ」

「は? 知らない。そんなはずがないでしょ」

依頼を受ける上で荷物の確認位はするもんだと思っていたのだが気まづそうに頬を掻くラインハルトが嘘を言っているようにも見えない。


「実は依頼人さんは王都でもそこそこ名の知れた商会の主でな下手に刺激するなとアスタールのお偉いさんからお達しが来てたんだよ」

「そうですか」

知らないなら仕方ない諦めるか。


「私は知っているぞ」

諦めかけているの並走するアインが声を発した。

 

「本当ですか」

 「ああ、本当だ。ブラン商会の馬車の中には人間が詰め込まれていたんだよ」

 「人間ですか……」

 「そう、奴隷として売るための――――人間は時に高額な商品となるからな」

 商品。胸糞悪い言葉だが納得できる部分もある。


 「……ジン」

 悲しそうに俺を呼ぶエルもまた奴隷として販売される寸前だったんだ。

 エルの容姿や実力からどれだけの金額を費やしても手に入れたいと思う輩は幾らでもいるはずだ。


「済まない。君の前でする話ではなかったね。だが、安心してくれブラン商会の者は捕える事になるから」

 「どう云う意味ですか」

 「そのままの意味だ。王国の許可なしに人間を扱うのは違法だからね」

 むやみやたらに人間を売っていいわけではないのか。

 少し安堵したが同時に疑問が湧いてくる。


 「じゃあ、何でブランの護衛依頼を黙って受けさせたんですか」

 ブランが犯罪を犯していることを知っていたなら前もって逮捕できたはずだ。


 「犯罪者だからこそ利用価値があるだろう」

 先頭を走る兵士たちに聞こえないように呟かれた事の意味を理解すると背筋がぞっとしてくる。


 「……?」

 アインの言葉を理解していないのかエルは首を傾げている。


 「ブランが奴隷を扱っているとなれば奴隷商人狩りの犯人を誘き寄せるのに最適だろ」

エルを襲った盗賊が森に残っている可能性は十二分にある、そこに新たな餌を放り投げた訳だ。


けど、本当に恐ろしいのはこの作戦は盗賊を呼びやすくする上に俺を確かめるという目的の達成もできるという一石二鳥の作戦なところだ。


この作戦を考えた奴は間違いなくいい性格をしている。


「利用価値ってやっぱ考えたのお前かよ」

「はて? なんのことかな?」

「相変わらず性格の悪い野郎だな」

どうやら、作戦の立案者はアインだったようだ。

質実剛健のような見た目をしていて狡賢い性格をしているって濃すぎる。


「無駄話はここまでだ。森が見えてきたぞ」

 離している間にも駆けていた俺達は森の中に進入する。

 枝葉によって視界に影が差すが漏れ出る光で見えにくくなるが進むのには問題ない。


 「さて、エルフのお嬢さんの言う通りなら、ブラン商会の者達はこちら側の出入り口の付近にたどり着いているはずだが……いないな」

 エルのお陰で得た瞳で完全にクリアな視界を得ているが幾ら見渡してもブランは見つからない。


 「この辺りにはいないのか」

 聞こえてくるのは虫の鳴き声やモンスターの足音や呻き声だけだ。

 坂井と出会っていたらするであろう戦闘音は聞こえてこない。


心配は杞憂でブラン達は坂井に遭遇していなかったのか、それともやはり、既に手遅れだったのかは分からないが捜索を止める事はできない。

俺達はただ捜し続けるしかない。

 

「……ジン、ジン」

ブランの姿を探そうとキョロキョロ辺りを見渡しているとエルが名前を呼んでくる。


「……みつけた」

「本当か!」

「……ん、あっちから、おときこえる」

エルが指差す一点に視線を向けるも姿は見えるはずもなく音も聞こえない。


「そういえば、エルフは聴力が人とは比べ物にならないくらい発達しているんだったな」

一点を指差すエルを見てアインが思い出したように言う。

確かにエルの耳は長く人よりも大きい。普通よりもよく聞こえるのかもしれない。

それに改めて見るとエルの耳は何かを受信しているかのようにピクピクとしている。


「アインさん。ここはエルの指示の通りに行きませんか」

「そうだな。現時点では手掛かりはないんだ。それしかないだろう」

「うし、じゃあここからはより慎重に行動するぞ……アイン、お前はそろそろ戻れ」

「そうだな。そうさせてもらおう」

ラインハルトに言われたアインは事情を理解できていない俺をほっといて後ろ向きに去っていく。

 

 「いいんですか」

 人数は多いに越したことはないはずだ。

 それに、アインの様なリーダーがいた方が士気はたかいはずだ。


 「いいんだよ。上に止められているのにもかかわらず人を出してくれたんだ、あいつはよくしてくれた。後は、下の者達が頑張る番だ」

 「はぁ」

 人手は多い方がいいというのが本音だがアインに警戒する必要がないとして良しとしよう。


 ……それに、作戦決行はアインがいない方が好都合かもしれない。


「分かりました。それでは急ぎましょう」

密接した大木や葉で道といえない道をただエルが指し示した方角を頼りに突っ走っていく。

正直、これが外れたら闇雲に探す以外に選択肢が無くなってしまう。

それで無駄にする時間の分だけ取り残された冒険者達の危機は大きくなる可能性がある。


「死ぬんじゃないぞ」

エルやドグマの時のような無力感に苛まれるのはもう嫌だ。いるかも分からない神に祈るしかない。






「……は、神とやらに祈ったおかげか」

エルに示された方角を進んでいくとモンスターとも昆虫とも違う。言葉が聞こえてくる。

距離がまだあるのか明瞭な意味はよく分からないが確かに人間が発した言葉だった。


他の者にも聞こえてきたのか自然と足音が更に小さなものになる。


忍び足で進むと直ぐに声の主の者達へと辿り着く。


「――っ、くぅ」

辿り着くと同時に見えた物に思わず手を握りしめてしまう。


横転した馬車の近くではブランが仰向けに倒れており、相手が気にくわなくとも最後まで守ろうとしたのか護衛の兵士が倒れており、その中には新人兵士であったリオの姿もある。


血の海に沈んだ彼等が既に息絶えているのは明白だ。


「くそが」

同僚の死を見て怒りを露にしたラインハルトが毒づいてるのが何処か遠くに聞こえる。


……間に合わなかった。


「――俺はまた、何も出来なかったのか」

やはり、神等いない。いるのならこんなのあんまりだ。何処まで俺を追い詰めるんだ。


「うぉぉぉ!」「やれぇぇ!」


怒りが沸いてくる。それをぶつけるのは駆けつけた歓声を上げて此方に気づいていない盗賊共にか。


何かに集中しているのか輪になって興奮している盗賊達を殺すのは容易い事だ。


「いけいけ! くそ、早く変われよ!」

一人の盗賊が叫びを上げ身を動かす。

その時、空いた隙間から盗賊達が何に集中し、歓声を上げていたのか理解する。



ブランの馬車に商品として乗っていた少女達。

人間としての尊厳を奪われた彼女達はブランが死した後も盗賊達にその尊厳を踏みにじられていた。


いや、違う。盗賊にじゃない。



「はははは、楽しーな! この世界は本当に楽しいぜ!」

少女の首を締めてその体に覆い被さっている男は俺と同じワイシャツを着ている。


「坂井ぃぃ――――――――!」

叫ばずにはいられなかった。

体の奥底から怒りが沸いてくる。或いは裏切られたと分かった時よりも感情が揺れ動いているかもしれなかった。



「あっ、誰だ――遠野?」

顔だけを此方に向けた坂井が変なものを見つけたかのようにキョトンとなる。


「何だ何だお前生きていたのかよ~~」

驚いた表情も束の間、坂井は満面の笑みを浮かべる。嬉しいからじゃない。ただ単に面白がってだ。


「それも、そんな大勢を引き連れて何しにきたんだ?」

ゆっくりと立ち上がり俺達を見渡す坂井だが表情は笑みのままで此方には僅かな警戒心すら抱いていない。


「おいおいおいおい、まさかだが、俺を捕まえに来たなんて事はないよな」

「……そうだとしたら」

「あひゃひゃひゃ、冗談はやめてくれよ、無能とその仲間が俺様を捕まえる何て無理に決まってるだろ」

心底可笑しそうに坂井は嗤っている。

その様子からは自分がいましがた罪のない者達を殺した事に対する罪悪感等は露程にも抱いているようには見えない。


駄目だ。こいつはもうこの世界に順応してしまっている。


「安心しろ、お前を捕まえやしない」

こいつはもう、俺と同じ時を過ごしたクラスメイトではない。


「俺はお前を殺しに来たんだ!」

こいつはもうただの力に溺れた殺人者にすぎない。


「あ? 遠野、その冗談は笑えねぇぞ」

坂井が殺気を放つと、つられるように歓声を上げていた盗賊達も俺達に向き直る。


まさに一触即発、いつ戦闘の火蓋が切られてもおかしくはない。


そして、それは俺の役目だ。


瞬間的に魔力を練り上げる。

ずっと練習していた魔力の操作であっという間に魔法が構築されていく。


「おいおい、んだよ。何でお前が魔法を――」

坂井が魔力を感知して驚くがそれは折り込み済みだ。


俺は無力だった。過去も現在も無力でまた何も出来ずに一緒に戦った者達の命を散らしてしまった。


「だから、だからもうお前には何も奪わせやしない」

「はぁ? 何いって――!!」

突然眼前に迫った俺に坂井は理解不能とばかりに驚愕するが構わず拳を振るう。

普通なら避けられるであろう拳打は吸い込まれるように坂井に近づいていく。


やっとだ――――


「グハッ!」

鈍い感触と共に坂井が地に倒れ伏す。


――――やっと俺の拳が届いた。


そして、戦闘が始まる。

























  

 

 



 

 




ストックがぁぁーーーー


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