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コーヒー砂糖ミルクあり  作者: 長谷川真美
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【濡れた瞳は君のサイン】

 駅からアパートに向かう途中に雨がいきなり降ってきた。バケツを引っくり返したような雨だった。傘を持っていなかったのでふたりともずぶ濡れになった。知世(ともよ)さんは寒いらしく唇が青く変色し、体も小刻みに震えている。春も終わりに差し掛かっていたので自動販売機には温かい飲み物は売っていない。これ以上、知世さんを濡れることをしたくないので知世さんを待たして、コンビニまで走った。温かいコーヒーを知世さんに渡す。知世さんはどこか申し訳なさそうに受取り温かいコーヒーを美味しそうに少しずつ飲む。「悠人(ゆうと)、ありがとう。風邪を引いちゃうよ。悠人も飲んでよ。」知世さんが柔らかい表情で促す。コーヒーの湯気で知世さんの表情はいつもよりも輪郭がぼやけている。その表情をもっと見ていたかったので少し間をおいて頷きコーヒーカップを受け取る。コーヒーの香りと雨の香りがあたりを支配する。コーヒーをゆっくり飲む。体が徐々に温まるのを感じる。


 コーヒーを二人で交互に飲むとコンビニで買った傘に二人で入りアパートに向かう。今日は兄貴は海外での学会なので邪魔は入らない。「お邪魔します。」知世さんが礼儀正しく挨拶をして靴をそろえる。緊張して返答の声が裏返り知世さんはおかしそうに笑う。「料理頑張るね!」知世さんの持ってきた重たい荷物の正体がわかる。食材だった。食材なら近くのスーパーでも買えると思ったが手料理が楽しみだったので何も言わなかった。しかし、ふと嫌なことを思い出した。知世さんは研究室でのバレンタインデーの時にチョコを男子学生全員に配っていたが全部市販のチョコだった。その理由は記憶違いでなかったら料理が苦手だったからだ。我が家にはピーラーはないため知世さんが包丁でじゃがいもを恐ろしく危なっかしい手つきで剥いている。すかさず応援に入る。結局、知世さんの出番はなかった。知世さんが恥ずかしげにうつむく。「次こそはきちんと作れるように特訓します。」消え入りそうな声に少し笑って応じる。


 その笑いのおかげだろうかいくらか浮上した知世さんはリクエストしていたDVDをおどけた様子で鞄から取り出した。魔法少女モノでオタと思われたくない男では手に取りづらい絵柄だったので見る機会を失っていた名作と言われる作品だ。知世さんは漫画やアニメなどの軽いオタなので工業系の学校では話の種には困らなかったらしい。知世さんはDVDデッキのリモコンを探す。それをキスで食い止める。キスを終えて、知世さんは膨れた顔でこちらを見る。「せっかくのDVDだよ。いま見ないの?」意見の不一致が見られる。DVDを見るためにわざわざ県外から知世さんを誘ったのではない。言葉を濁しているとようやく感づいたらしく顔を赤らめる。「えっ。えっ。えっ。ちょっと待って。待って。待って。」その様子があまりにも可愛らしくいくらでも待てる気がした。「知世さん。にぶすぎ。男のアパートに夜に呼ばれてなにもないと思ったの?」思わずからかう口調になる。動揺して固まっている知世さんにはいつもの冷静さは見られない。愛らしい知世さんを独り占めできただけで今夜は許そう。一晩中アニメのDVDを見て、感想を語り合い夜はあっという間に過ぎていった。知世さんはアニメを見ながら薄っすらと瞳を濡らす。瞳を濡らす理由がアニメだというのがじれったい。知世さん。次は覚悟を決めてくださいね。狼はいつ現れるか分かりませんよ。FIN.


知世さんと悠人が観たアニメDVDは有名な作品なので分かった人はにやけてしまうと思います。

この話の知世さんと悠人のやり取りは私の大学時代の実体験を脚色したものだったりします。

(アニメDVDは某ラノベの作品でした・・・。)


ではでは。


2017年6月4日 長谷川真美


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