閑話:悪霊
「悪霊について知りたい?」
「ああ。知らないのか?」
「ううん。そんなことはないけどさ……」
私の質問に、秋雨さんは複雑な心境を隠さず、表情に陰を射した。
「あ、それわたしも気になります。悪霊って、結局見たことないんですよね」
みはるも同意し、秋雨さんに迫った。普段私が住んでいる山の中では、俗世から離れてひっそりと穏やかに暮らす怪異ばかりだ。私の相談で秋雨さんが何度か口にした悪霊という存在を、私は直に見たことがない。そして、それは付近を放浪したみはるも同じらしい。
「悪霊って、まぁ君たちみたいな存在だよ。人に害をなす怪異。全部悪霊さ」
「そうじゃない。言ったじゃないか。浮遊霊が悪霊に変化するって。私たちみたいな妖怪・都市伝説の悪霊じゃなくて、霊体の悪霊のことだよ」
浮遊霊は現世に長居し過ぎると悪霊へと変わってしまう。だけど、いつ変化してしまうかは、霊体ごとに様々だ。この世への恨みや憎しみ。そう言った負の感情が強い者こそ悪霊に転じやすいというが、イマイチ要領を得ない。
「うーん……。前話したことでだいたいだよ。恨みや憎しみ。そう言った負の想いが強い者こそ、この世の存在に害を与えたくなる。死んでいるのにこの世に留まってること自体も、負の感情を溜め込む行為なんだ。そうやって負の感情に飲まれると、害を与えることしか考えられなくなるんだ。それが、浮遊霊から転じる悪霊。基本的には、見つけ次第祓われるね」
「祓われるって……」
「無理やり成仏させるんだ。この世に縛る鎖を断ち切って、強引に繋がりを断つ。無理やりだから、その人の魂を傷つけてしまう。輪廻の輪に戻ったところで、来世に悪影響を与えかねない。祓うことは、あるかもしれないその人の来世をもめちゃくちゃにしてしまう。だから、あんまりやりたくないんだけどね」
輪廻の輪とか、魂とか、少し現実感の薄い言葉だけど、淡々と説明する秋雨さんが嘘を吐いているようには思えない。ありのままに、起こったことをそのままに話してるんだろう。嘘も含まれるかもだけど、誇張はしない。
「あのー、でも現世に留まる悪霊ってのもいますよね。わたしたちとか」
「二人は悪霊だけど悪霊とも言い難い。妙な怪異だからね。そもそも、霊体の悪霊でもない……あーいや、言い切れないか」
私はひきこさんだが、元は生きていた人間霊。形を変えて、都市伝説の怪異になった存在だ。確かに、霊体じゃないとも言い切れ無いな。
「でも、元になった『メリーさん』と『ひきこさん』は間違いなく悪霊。時々現れては、己の存在理由のためだけに害を撒き散らすんだ」
「うー。わたしはそんな極悪非道ではないですよ!」
「だからみはるは少し違うって言ってるじゃないか。でも、あんまりにも力が強いと、祓うこともできないんだ。そういうのは、神様として崇め、怒りを鎮めてもらおうっていう形になってるね」
神様、荒御霊とか呼ばれてる人たちの事だろうか。他には、現人神?
「たとえば?」
「一番有名なのは、将門公。荒御霊の平将門だね」
「ああ、あの」
平将門のことなら、私も知っている。平安時代に活躍した豪族の一人。歴史上でもかなり有名な、平家の中でもかなり有名で、武士の始まりとも云われる人。
「御首神社、築土神社、神田明神、国王神社って、いろんな神社で信仰されてるね。お怒りをお鎮め下さいって。実際、今でも将門公を馬鹿にしたらとんでもない目に合うから。手を出さないことが一番さ」
そう言って秋雨さんは肩を竦める。悪霊については、あまり詳しく語りたがらないみたいだ。
これ以上は訊けないかな。もうこの話題はひっこめるしかなさそうだ。だけど、
「なんだ、ずいぶんと間の良いことを話しているな」
そう言って縁側に上がってきたのは僧の服を纏った額の大きな老人、ここの大家さんだ。
「梅雨乃さんに訊かれたんですよ。まぁ、興味を持つこともおかしなことではないですし。ところで、大家さん、間の良いって……まさか」
秋雨さんが顔をひきつらせながら尋ねると、大家さんはにやりと笑った。有名な妖怪アニメでは主人公の宿敵として知られる妖怪、ぬらりひょん。そんな妄想を受けて力を増した現実の大家さんは、付近の怪異の中でも特段力が強い。それを見せつけるような、強面の笑みで、告げた。
「付近で悪霊が発生した。付近の怪異どもに頼み、ここに誘導している。明日の夜だ。日下部、お前が祓え」
苦虫を百匹噛み潰したような嫌悪を見せる秋雨さんに、大家さんは続けて言う。
「これも相談役の務めだ。しっかりやれよ」
その日は、私も泊まることになった。悪霊は近づく怪異に悪影響を与えやすい。悪事を働く人の近くにいると感化されてしまう、それと同じなのだとか。私もみはるも本物の悪霊をまだ見たことがない。だから、余計に感化されやすい。そこで、外出を禁じられてしまったのだ。
でも、友達の家にお泊りするという、生前は出来なかった経験が出来たのだから、私は満足だ。
そして、やってきた日曜日の二十二時。怪異の本領が発揮される丑三つ時――二時過ぎには早いけど、暗闇に閉ざされればそこはもう怪異の時間だ。
「いい。決して家から出ないこと。対峙するのはそこの庭だから、縁側から下りたらだめだよ」
強い口調で言う秋雨さんは、しかしやる気を感じない。寝間着に使っている甚平姿で、手には絶対にお手製だろう御払い棒。これについては「道具は無いよりマシ。効くと思えば効く」と、らしくない根拠ゼロ発言だった。
今回やってくる悪霊は、元は親子だったらしい。子の反抗が行き過ぎて、ついには親の方が子を殺めてしまった。親はすっかりふさぎ込んでしまったが、子の方はそれで収まらなかった。悪霊となって、親を憑き殺してしまい、そして親の方も後悔から悪霊となってしまった。
親子間のいざこざが、ついには家族を崩壊させてしまったのだ。
子の方はすでに祓われており、悪霊となった親を縛ってた子への想いはいくらか薄れている。だけど、完全に悪霊となってしまえば、もう祓ってしまうしか救う手だてはない。苦い顔で、秋雨さんは言っていた。
私はと言えば、みはるといっしょにおせんべいを齧りながら居間から外を眺めている。不謹慎だけど、少し興味もあるんだ。悪霊がどんな存在か。
私は、危うく両親を悪霊に変えてしまうところだった。私が犯してしまいかねなかった事態を、直に見ておく必要があると思った。
秋雨さんは「勧めないよ。趣味が悪いし、後味が最悪だからね」とそう言っていた。だけど、見ておかないといけないんだ。
みはるも私に付き合ってくれている。悪いとは思うけど、少しホッとしている。秋雨さんがあんまり強く言うもんだから、少し尻込みしちゃってるのかな。
「……ふぅ、気が重い」
昨日も雨が降ったせいか、湿気が強く、空気もよくない。秋雨さんも、空気の重さに耐えられず苦言を吐いた。
三十分経っても、問題の悪霊は来なかった。みはるはウトウトと船を漕ぎ始め、私も気分がぼんやりとしていた。その時だった。
「来るよ」
鋭い一声は、押入れの方からだった。押入れの襖がゆっくりと開かれ、中から秋雨さんの弟の秋人が顔を出す。そして、縁側に胡坐をかいた。
鋭い視線が秋雨さんの背中に注がれ、秋雨さんもいつになく緊張した面持ちで御払い棒を握りしめる。
そして、暗闇の中からゆっくりと、件の悪霊がやってきた。
「……うっ――!」
つい、うめき声が漏れてしまう。
現れたのは、ボロボロのスーツを着た男性だった――というのが、かろうじて分かった。顔の皮は、髪は伸び放題。ボロボロのスーツはあちこちが焦げて穴だらけ。件の悪霊は、子の悪霊に取り憑かれた所為で精神に異常をきたし、自宅ごと焼き尽くして死んだという。その死に様と、そして何よりどす黒いオーラのようなものが、台風がもたらす暴風のように撒き散らされている。
『う、あああ……うぁあああ――!!!!』
言葉にもならない何事かを吐き出す悪霊。この場に来て、敷地に入ってさらに苦しみが増したという様に、聞き苦しい呻きを吐き出し続けた。
「う、ぐっ……!」
途端、私の中に死んで以来こなかった感情が押し寄せた、身体が、痛い。心――いや、魂が軋む。私の中に、どす黒いナニカが直接叩きつけられたようで、すごく気持ち悪い、吐き気がする。
「お前さんには、ちと早い。だが、見るからには最後まで見届けろ」
私の隣に、大家さんが座った。ごつごつとした手が、優しく背を撫でてくれる。それで、少し楽になった。
そうだ、私がこれだから、みはるは?
そう思ってちゃぶ台の反対側にいたみはるを見ると、彼女は微動だにしなかった。目を見開いて、金縛りにあったように悪霊に視線を注ぎ続けている。周りの音が聞こえていないようだ。
「みはる……?」
「当てられたな。元が人形霊だからお前ほど酷くはないが、魅せられたか」
魅せられた? それって……?
「心配いらん。初めて悪霊を目にした怪異は、だいたい奴らの濃密な負のオーラにやられる。だがな、ここに居れば、自然と癒される」
大家さんはそう言って、身体の横に置いていた杖で庭の花を指した。
「花には、負のエネルギーを持つ怪異に取って真逆の、プラスのエネルギーが込められているのだ。普通の怪異であれば不調をきたすほどではないが、悪霊ならば話が別だ。逆の力に当てられ、身を割かれるような苦しみが襲い来る。悪意の強い怪異にとって、花は猛毒だ」
庭には、梅雨の時期だから紫陽花が咲き誇っている。それが風に揺れるたびに、悪霊は呻きを増した。
「見慣れた者ならば、然程問題はない。墓に供えられる花が、霊にとって気持ちの良いことと同義だ。だがな――秋人。戻ってこい。お前も当てられるぞ」
大家さんが注意を促し、秋人は渋々と言った様子で私たちの傍まで戻ってきた。
「慣れてるよ。あの程度」
「慣れていたとしても、悪霊の負のオーラは毒だ。怪異はもとより、生きている人間にとってもな」
生きている人間。秋雨さんは、悪霊を前にして平然としている。いや、平然に見せかけているんだ。御払い棒を握りしめ、じっと悪霊を睨んでいる。
「……あなたを縛っていた魂は、すでに祓われました」
『ぁああ……』
「この世にあなたを留め置くと、誰にとっても不幸になる。だから、これからあなたも祓います」
『ぁ、あああ!!!!』
秋雨さんが「祓う」と言った瞬間、悪霊の勢いが増した。苦しみに悶えていたそれから、攻撃的な意志に変わる。
「ええ、そうですね。合意なく祓われるのは、あなたがたにとって不満でしかない。でも、受け入れてください」
秋雨さんは両手を前に押し出す。掌を広げ、ぐっと力を込めた。悪霊は、怯えたように身を翻し、その場から離れようとする。しかし、振り返ったところで門の先に居た魑魅魍魎を目の当たりにし、後ずさる。
「年代物の怪異たちにやられると、魂まで食い尽くされますよ。僕に祓われた方が、全然マシです」
秋雨さんが一歩踏み出す。悪霊は下がろうとして、しかしできなかった。
「……ごめんなさい。もう、この方法しかないんです。後悔を溜め込む前に、相談役の所に行っていれば、良かった。……今更ですけどね」
秋雨さんがより力を籠め、両手を広げる。そして、
パンッ
祈りを込めて柏手を打つ。瞬間、悪霊は周囲に四散するように、消えてしまった。跡形もなく。
秋雨さんはふらふらと庭を横切り、縁側に腰を下ろした。すぐに大家さんが立ち上がり、懐から何かを取り出すと秋雨さんに降りかける。僅かに香る匂いから、それは塩だ。そして、大家さんがもう一度柏手を打ち鳴らした。
「秋雨さんっ、大丈夫です!?」
弾かれたようにみはるが駆け寄る。私は、なんというか少し動けそうになかった。
はっきり言って、こんなフィクションみたいなことが本当にあるとは、思ってもいなかった。私自身が怪異だから、合っても良いかもしれないとは思った。だけど、直に見るのは初めてだ。そして、それを実際に行う人も。
なんていうか、次元が違う人を見たような感じだ。
「……あーダメ! もう限界!」
だけど、そんな私の感想を崩すように、秋雨さんは大声を上げて縁側に寝転がる。
「お疲れです?」
「とーぜん! もう二度とやりたくないよ! 精神的に疲れるし、一歩間違えたら怒り狂った悪霊に憑き殺されかねないし! あーもう明日は学校サボろ。疲れて勉強どころじゃないよ」
「でも、いつもと違う感じでかっこよかったですよ?」
「あー、ありがとね。でもさ、さっきの全部演技だよ」
「演技、ですか?」
「あーやれば効くかなーって。霊媒師とか、そういう人だったら自分の中のエネルギー? を悪霊にぶつけて弱らせていくらしいんだ。でもさ、そうやって集中するのって、疲れるんだよね。だからさ、力を籠めるってとこを明確にして、手を合わせたりするんだけど、ホントにそれで出来てるか知らないし……全部適当だよ適当」
「でもでも、すごかったですよ。今度近くの怪異のみなさんに話してあげます」
「やめてよ恥ずかしい」
緊張の糸がぷっつり途切れた様に、秋雨さんは愚痴を吐き出す。なんというか、さっきまでの厳かな雰囲気とかはどこへやら。どこにでもいる、年相応の人だ。
「ふむ、変わったな」
「変わった?」
大家さんの呟きに問い返す。
「以前にも何度か悪霊祓いをやらせたことはある。その時は、有無を言わさず祓っていた。それが、悪霊に謝るなどと。まぁ、変わらねば面白みがない」
大家さんはまた不気味に笑った。だけど、それは満足した時に見せる顔なんだと、ようやく気づけた。
今日、悪霊を目の当たりにして、よかったのか悪かったのかは分からない。でも、私が逃げ続けた所為で、お父さんとお母さんを危うく悪霊にしてしまうところだった。その結果が、どれほど悍ましいのか、それだけは知ることが出来て良かった。私は、もう都市伝説という怪異になったから、悪霊になることはない。でも、お父さんとお母さんをあんな姿に変えてしまったら、私は自分が許せなくなるだろう。噂されてる通りの『ひきこさん』になってしまうかもしれない。自分を許せず、周りに害を与えるだけの、無残な悪霊に。
私がしてしまうところだった取り返しのつかない罪を、犯さずに済んでよかった。みはると、秋雨さんに改めてお礼しなくちゃ。
お礼、お礼かぁ。あるとしたら、うん。同じ都市伝説っていう悪霊で、友達のみはるが、メリーさんの復讐心から完全な悪霊にならないようフォローするくらい、かな。ああ、それより早く成仏できるようにならなくちゃ。私は、半分浮遊霊みたいなものだし。
「さぁて、今宵の仕事は終わりだ。さっさと寝ろ。悪霊を目の当たりすると、疲れが溜まっていかんぞ」
大家さんが手を打ち鳴らしながら告げる。確かに、秋雨さんも疲労困憊みたいだけど、私もけっこう疲れた。このまま寝てしまいそうだ。意識が、急速に閉じていく。
頭がぐらりと揺れた。居間の畳に打ち付けられ、だけどそれですら私の意識を覚醒には持って行ってくれなかった。
視界の中に、同じように寝転がった秋雨さんが見えた。秋雨さんは少し驚いたような顔をしていた。たぶん、私がバッタリ倒れたからだろうな。でも、少し違う。その目線は、私にもだけど、その背後にも注がれていた。後ろには秋人が……でも、この気配はさっきも感じた気が……。
結局、それ以上私の頭は働いてくれなかった。
目が覚めると、みはるの顔が目の前にあった。
「うわっ!!!?」
「むっ、なんですか梅雨乃さん、その驚き方」
「いやだって、急に目の前にいるから。って、もう朝か」
「昼ですよ」
「昼?」
飛び起きて縁側から空を見上げると、太陽はすでにてっぺんを過ぎて傾き始めていた。ほぼ半日寝続けたのか。
「あーごめん。寝すぎちゃったね」
「構いません。秋雨さんも、また寝てますから」
秋雨さんの寝室を見ると、布団はこんもりと膨らんでいる。あれは、押しても引いても、蹴っ飛ばしたって起きやしないだろう。昨日の宣言通り、学校は休んだようだ。いや、病欠って言った方が正しいかもしれない。居間のちゃぶ台を見ると、お昼ごはんが準備してあった。
「秋雨さんが作ってくれたんですよ。作って直ぐに寝てしまいましたけど」
そっか。迷惑かけちゃったかな。でも、せっかく作ってもらったんだ。みはると一緒に、少し過ぎたお昼ごはんにしようか。
美春と一緒にちゃぶ台を介して座ると、みはるの手元に一本のナイフが置いてあるのが目についた。
「みはる、それは?」
「あ、これですか? 昨日、あの後に秋雨さんから貰ったんですよ。もしわたしがメリーさんの役目をやりたくなったら、これを使えって。応援してくれてるのでしょうか?」
「さぁ、どうだろう」
そのナイフは、黒い持ち手に銀の刃が美しい。でも、どこか、優しい、子供じみた雰囲気が漂うナイフだった。秋雨さん、意図は分かるけど、露骨すぎないかなぁ。まぁ、みはるは気づいてないみたいだけど。
お昼ご飯は塩のおにぎり三つと漬物。おいしいけど、私たちは仕事終わりの百姓かよと突っ込みたい。簡単なのはわかるけどさ。。
庭は、昨日のことが嘘のように穏やかだ。
大家さんはもうどこかへ出かけてしまったみたいだ。秋人は、たぶんまた押入れの中だろう。彼も、いい加減学校に行けばいいのに。って、嫌なことばっかりだよね。きっかけさえあればなぁ……。
そこで、ふと思い出すことがあった。昨日、意識が完全に潜ってしまう直前。感じたはず。ほんの小さな、でも確かに私の記憶に焼き付いている。悪霊の、どす黒いオーラ。
それが、どこから感じたんだっけ。確か……、
「梅雨乃さん」
「ん?」
「大丈夫です? ボーっとしてましたけど」
「ああ、ちょっと考え事」
曖昧に答えると、みはるは不思議そうに私を見つめた。しかし、すぐにころりと表情を変え、話し始める。
「秋雨さんお疲れだったじゃないですか。なにか元気になれるものを探しに行きません?」
「みはるは元気だなぁ。私はまだ昨日のが残ってるんだけど」
「そうですか。なら、明日。明日行きましょうよ!」
「うーん、そうだね。また山菜を探してこようか。今の時期なら……行者にんにくなんかがあるかも。探してみようか」
「ですです! 行きましょう!」
まぁ、色々考え込んでも仕方ないよね。とりあえず、昨日決めた通り、怪異になってからできた友達と、楽しく日々を過ごそう。
それが、今の私の、怪異の生き方さ。