~第九話~勇者、潜入する~
今回は、勇者君の話にしてみました。しかし……いや、この勇者君。
本当に名前どうしよう?(笑)
もう無くてもいいんじゃね?って感じもするし……うむむって感じです。
俺は、ある場所へと辿り着く。そこは、奴隷売買を斡旋している建物だった。
奴隷……奴隷は、普通に認められているので、なってしまった者は、可愛そうだとは思う。
けど俺一人じゃ、奴隷解放などという事が全く出来ない。奴隷制度が無くなると、困る国々だってあるからだ。じゃあ何で俺が、その奴隷売買をしている建物にいるのか?と言うと。
こんな噂を聞いたからだ。
今回の奴隷オークションに「銀髪の女性が、出品される」と言う事を。
銀髪の女性……俺は、その銀髪の女性が俺の好きな彼女かも知れないと思ったから。
奴隷になっているのだとしたら、救い出してあげたい……。そう思って、この奴隷オークションに立ち寄ったのだ。
時間になり、司会の男が「奴隷オークションの始まりです、今回は目玉商品もありますので、皆様、大いに楽しめると思いますぞ」と、言っていた。良く見ると、俺の他に裕福そうな男や、目をギラギラさせた男などが、集まっている。最初に紹介されたのは、獣人の男だった。
司会者が言うには、この男は、力仕事とか雑用に最適だと紹介している。
買う奴はいるのか?と思っていると、売買成立したらしく、その獣人の男はある女に引き取られて行った。一体何に使うのだ?いや、俺がこんな事を考えても意味が無いよな? 目的は違うのだから。
続いて司会者が紹介したのは、栗色の髪をした少女だった。
少女の顔は良く見えなかったが、絶望感を漂わせている。
俺はこの子を助けやりたいと思ったが、俺の目的は、銀髪の彼女なのだが……
懐に余裕があったので、この子を助けたら開放しようと思って、この少女を落札しようと思ったが、先に契約成立してしまった。少女を買い取った男は、「よし、私の物になったのだから、たっぷりと可愛がってやるぞ、さあ、来るのだ」と、言って、少女を連れ去っていた。
こうなれば俺に手出しできる筈も無く、俺は少女に、強く生きろ……と、願うしかなかった。
少女が買い取られた後、司会者の男が「さあ、続いては目玉商品ですぞ、銀髪の女性です」
来た! 俺はそう思って、その銀髪の女性を見てみる。
後姿しか見えず、顔が全くわからなかったけど、確かに銀色の綺麗な髪をしていた。座らせているので、身長がどのぐらいあるのか? それさえも解らなかった。
司会者の男が「さあ、珍しい銀髪の女性ですぞ、高く値を張った者にお譲りいたしましょうぞ」
そう言うと、何人の男が金額を吊り上げる。
中には金貨を提示する者まで現れた。俺も一応、金貨は持って来てはいる。
手持ちの金で、落札出来るかどうか不安だったが、何とか金貨百枚程度で、俺の物にする事が出来た。
しかし……金貨100枚以上か……凄い値段だな。
金貨一枚でも稼ぐのは大変なのに、100枚あったら、小さい家ぐらいは買える値段だぞ。
まあ俺は、結構稼いだから、問題はないけどな……
俺が銀髪の女性を買い取った後、顔をよく見る事が出来た。
顔をよく見ると、全く違っていた。というか幼すぎる。俺の求めている彼女とは全然違っていた。
俺は困った。この子は耳が尖っているから、エルフと呼ばれる種族なのだと思う。
俺は、この少女に
「そうか、君はエルフだな? なら……君の住んでる場所に送り届けるか」
そう言うと、彼女は無言で頷くだけだった。この少女……話す事は出来ないのか? ふむ……エルフの里に届けたいのだが、俺はまだこの国で探したいしな? なら……
俺は、とりあえずこの少女を運んでくれる人を探す事にした。色々な人に聞いて、何とか引き取ってくれる人を見つける事に成功。その男に事情を話すと、男が「成る程、ちょっと気になったのだが、何故そんなに大金を持っていたんだ? 私には普通の男にしか見えんがな?」
そう言われたので、俺はこの男にある物を見せる。それは、セレンディア王国から渡された物で、これを持つ者は
「ま、まさか……勇者殿でしたか!?」
どうやら、この男はこれの事を知っているみたいでほっとした。
「ああ、まあそう呼ばれている。で、引き受けてくれないか? もし受けなかったら……どうなるか解るよな?」
ちょっと怒気を込めて脅してみると、あっさりと陥落した。
ちょっとやりすぎたか……?とは思うが、まあいいだろう。とりあえず俺は、この男にエルフの少女を引き渡す。引き渡した後、男が
「勇者殿、これからどうするのです?」
そう聞いて来たので、俺は
「まだ、この国に少しだけ滞在してみる。探している人がいるのでな」
「探している人ですか……ちなみにどのような人物で?」
「そうだな……ちょっと聞くが、この国で銀髪の女性を見た事があるか?」
俺がそう聞くと、男が
「ああ、ありますよ」
「それは本当か! で、何所にいる!」
「く、苦しい……首を絞めないで下さい! 話しますから」
この男に聞くと、その銀髪の女性は、ナナと言うらしく。
この男の仕事仲間なのだと言う。じゃあ、彼女かも知れないじゃないか!と思っていると、男が
「あ、でもそのナナさん、子持ちですよ? 可愛い娘さんがいます、それじゃあ私はこれで」
な、何だと……娘持ちだと……? じゃあ……相手の旦那がいるのではないか? じゃあ、俺の探している彼女ではないのか?……いや、子供と言うのももしかしたら、養子としてむかえたかもしれない。これは……一度会ってみないと解らないかもな……そう思っていると、少女と男が消えていた。
俺が考えている間に、いなくなってしまったみたいだった。
っく、どの方角に行ったか、解らないな……とりあえず……銀髪の女性がナナと言う名前だと言う事はわかった。なら、その女性に会ってみよう。あの男の仕事仲間だと言っていたから、この国にいる筈。俺は、そう決意するのであった。