~第三十一話~ある男の出来事~
魔王城跡
ここに、ある二人の男がいた。
「しっかしまあ……本当にあるんかなあ」
「さあ、何にせよ、俺は必ず見つけ出すぜ」
彼らは、盗賊と呼ばれる者達で、人々から金品等を強奪して生活している。何故、彼らがこの地にやって来たのかと言うと、魔王城と呼ばれていたのだから、何かしら隠されたお宝が眠っているのかも知れない……と思ったからである。魔王がいなくなり、魔王城はある者によって破壊されて、その残骸だけがその地に残されていたのであった。それから数年後、この男達はお宝が無いのかも知れないのに、この魔王城跡地にやって来たと言うわけである。
「おい、何か見つかったか?」
「いや、ほとんど壊れてて金目の物なんか一切無いな……やっぱりハズレじゃないのか?」
「そうかもな……じゃあ、引き返すか?」
「けど、何かしら見つけねーと、俺は嫌だぜ?」
「そうは言うが……ん?」
「おい、どうした?」
「あそこに何か埋まっているな、ちょっと掘り起こして見るぜ」
男の一人がそう言って、装備していた杖を構えて
「大地に振動よ、アースブレイク」
男の術が発動、地面に亀裂が入り、杖の方向から10メートルぐらいの穴があいて、その上にあった物が穴の中に吸い込まれる。
「おいおい、使う術間違ってんじゃねーよ? これじゃあ掘り起こせなくなるじゃねーか」
「いや、間違ってはないな、だいぶ彫りやすくなったとは思うんだが」
「そうか? ならいいが……お、確かに掘り易くなったな」
そう言って男が地面を掘っていき、ある物を見つけた。
「何だこれ……本?」
「む、確かに本みたいだな……でも、何でこんなとこに本が埋まってんだよ、魔王が読んでたのか?」
「しらねーよ、けどこの本……高く売れるんか?」
「知らん、他に金目の物は無いのかよ?」
そう話していると、本を持っていた男が様子が可笑しくなっていた。
「何だ……頭の中に声が……」
「お、おいどうしたよ……」
「……力が欲しいか……? 何? 俺の願いを叶えてやる? 本当か? なら願うぜ、 俺の願いは!!」
男がそう叫んだ瞬間、本から強烈な光が発生して、本を持っていた急に倒れた。
「お、おいどうしたよ!」
急に倒れたので、近くにいた男が倒れた男を見ようとすると、倒れていた男が立ち上がる。そして
「ふむ……保険をかけていたが……どうやら成功したようだな、しかし……この男、体が貧弱だ。ならば作り変えるか。魔術練成、肉体変化」
本を持っていた男がそんな言葉を発した後、男の体つきに変化が発生。数分後、さっきまでの男とは全く違った体に変化していた。
「術式完了、やはり……別人の体だと魔力も少ない。これは魔力を蓄える必要があるな」
男がそう言っていた。
「おい、お前……魔法なんて使えたのかよ? 俺、知らなかったぞ? というか……見た目が凄い変わったな」
変化した男に話しかけた男がいたが、変化した男は、話しかけた男を見て
「魔力があるか、ならば頂く。悪く思うな」
そう言って、男の顔を掴んで
「魔力吸収」
「ぐあああああ!!」
変化した男に魔力を吸われていき、そして……魔力を吸われたからなのか、男に生気が無くなっていき、地面に倒れて動かなくなった。
「まあ……マシになったか、これである程度は動けるが……」
変化した男は、辺りを見渡す。
「俺がここにいると言う事は、魔王城って事か、一体誰だよ! 俺の城を粉々に破壊した奴は! まずは……せっかく魔王になってたんだ、魔王らしく振舞ってやる」
そう……変化した男は、再び魔王と言う存在になったのであった。魔王は、まずこの状況を考える。
自分がいなくなって、どれだけの時間が経過したのか? あの銀髪の女の子(元勇者だったけど、女にした)がどうなったのか? 生きているんだったら、彼女に会いたいと言う事。
自分を殺したあのくそったれをぶっ殺すと言う事。あと、魔王城を破壊した者への制裁。
セレンディア王国が勇者を送りつけてきやがったので、セレンディア王国に攻撃を仕掛けると言う事。
「ずっと魔王として振舞っていたからな……また勇者とかきやがったら、今の状態で俺、勝てるんか? いや勝てねーな。せっかく復活したのにすぐやられるとか馬鹿らしい。あと魔王としての言葉遣いも忘れがちになってるなぁ……えっと……おのれ……我の城を破壊か……やってくれるわ! だが……我は復活した。勇者よ、恐怖に怯えるがいい!…………誰もいねーのに何やってんだ、俺……馬鹿かよ……とりあえず……まずは情報を集める事だよな」
そう決めた魔王は、行動に移す事にした。この世界に再び魔王が復活したのだった。
魔王が去った後
「……どうやら行ったみたいだな? しかし……危なかった。あともうちょっと吸われてたら、死んでたな……それにしてもあいつ……魔王になっただって? 冗談だろ? けど……もしそれが本当なら、魔王が復活したって事だよな? これはセレンディア王国に報告しにいかなければな……けど俺は盗賊だ。知らせるだけであとは何もしない事にするか……」
そう決めた男は、セレンディア王国にと向かうのであった。