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銀の姫騎士リテイク!  作者: 奏白いずも
カノエルート
30/51

七、イベント後に爆弾

前回のパン屋イベントのその後になります。

 カノエさんは門の前まで送ってくれた。

 すでに感謝と別れの挨拶は済ませてあるので、あとは私が建物の中へ入るだけという状況だ。

「君といたら、また今日みたいな気持ちになれるのかな」

 それが独り言だったのかはわからないけれど、あまりにも切なげで。背を向けようとした私を縫いとめる。

「カノエさん?」

「ねえ、やっぱり生誕祭は僕と過ごさない?」

 そうでした。

 手伝いの件ですっかり失念していたけれどフラグはへし折っておかないと!

「ではまず言いたいことをお願いします。その上で当日カノエさんが約束を忘れていなければご一緒させてください」

 ああぁぁぁ…………!

 どんな上から目線なの私、厚かましいにもほどがある!

 でもこれくらい言っておかければ不安で仕方がないのだ。

「約束だったね。いいよ」

 カノエさんが穏やかな表情を浮かべるほど、私の心臓はうるさく音を立てる。

「生誕祭が終わったら、この国を出て行く」


 出て行く……


 いなくなる?

 カノエさんが、エデリウスからいなくなる?

 待って、どういうことですか!?


「すべてに決着をつけて、この国から去ろうと思う」

「……すべてって」

 すべて!? すべてってなに? どれ!?

「なん、ですか、それ……。それは、どうしてもあなたがしなければならないことですか!?」

 わからないので正直に聞きました。

「僕が決着をつけないと。君が生きる世界を守りたいから」

「あ――」

 カノエさんは王妃様の目的を知っているんだ。知っていて黙って、一人で決着をつけるつもりだったのか。

 危うくフラグ回収するところでしたね!?

「僕がこの国に留まる資格はない」

「決着というのは、それはいつ、具体的にいつのことでしょう」

 生誕祭が終わったら話すつもりだった――ということは生誕祭が終わったら国を出ていくというわけで、行動を起こすのはその前だ。その日時が知りたいのですが!

「知ってどうするの?」

「へっ!? え、っと、それは、その……そ、う……そう!」

「は?」

「送別会!」

 よしこれで誤魔化そう。

「送別会を開きたいなと! カノエさんにはいつもお世話になっていますから」

「荷物を届けているだけなのに?」

「理由には十分すぎると思います」

 私は大真面目だ。

「あの、信じていただけるかわかりませんけど私……料理できるんです!」

「そうなの? そこまで真剣に言わなくても、普通に信じるけど」

「ありがとうございます!」

 カノエさんは疑問に感じているでしょうが、その普通に信じるが同僚からは難しかったんです。

「ですからカノエさんにも食べていただけたらと」

 あまりに真剣に詰め寄ったからでしょうか、カノエさんがため息を吐く。それはどこか諦めのようにも見えた。

「生誕祭の前日に決着をつける。その前なら、有り難く誘いを受けさせてもらうよ」

 私の粘り勝ち? かっこ悪くたって、なんだって構わない。

「約束、絶対に忘れないでくださいね」

「君こそ約束、忘れないでね」

 念には念を押せば、カノエさんも負けじと言い返す。あくまで生誕祭は私と一緒に過ごす予定なのか。私も少し意地になっているところがあるけれど、カノエさんも退けないのかも? 

「私と過ごしても、良いことなんてありませんよ」

「それを決めるのは僕だよ」

 結局エデリウス最後の思い出に、ということで納得させられた。


 今度こそカノエさんと別れた私は部屋で頭を悩ませている。女神様はお休み中のようですが、私が寝るわけにはいきません。女神様は最終イベント時に起きて下されば問題ないのです。

 強引に送別会イベント(仮)の約束を取り付けたはいいけれど、具体的な解決策はこれからだ。

 まずは紙を広げ行程表を作る。肝心なことは記載していないし、そもそも日本語で記入しているので他人に見られても情報漏えいの心配はない。



 十二日目:現在進行中(夜)

 ??日目:カノエさん送別会

 十九日目:カノエさん決着予定

 二十日目:生誕祭当日



 という具合だ。

 送別会は十八日目にしよう、決定。十八日目に約束を入れてしまえば決着が早まる心配をしなくて済む。

 カノエさんは決着をつけるというけれど、心意気に申し訳ないけれど……それは破滅へのフラグ。ゲームではそう告げて主人公の前から去り、帰らぬ人となることも。

「そんな未来、私が破壊してみせる」

 問題はどうやってカノエさんを止めるか。


 夜は更けていく――


「ああっ! 難しい、難問!」

 いくら考えても名案が浮かばない。

「私の正体を明かしてしまう? でも、だから? それで考えを改めてくれる保証はないし……。むしろ私のためとか言って引いてくれなさそう……」


 さらに夜は更けていく――


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