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何でも屋  作者: 汐琉
3/5

何でも屋と私

蛇足な感じですが、あの方視点を追加。さらに短いです。

 私が彼らと出会えたのは、まさに天の采配だろう。


 彼らと出会えなければ、被害は増え続け、国民の怒りは、この国を壊していたかもしれない。


 感謝してもしきれない。ありがとう、何でも屋。


 何でもありなこの世界、アーシアリ。

 その中でも、この国は群を抜いて、わちゃわちゃとしている。何の冗談か、名前もワーチャだ。

 名前のせいで、わちゃわちゃしているのか、わちゃわちゃとしていたから、名前が付いたのか、知る者はいない。

 まあ、笑いの種を提供出来ているようで、何よりだ。

 私は、そんな、わちゃわちゃとした国で、兵士をしている。率いている者もいる。

 肩書きでいうなら、団長だ。

 見た目は、そこそこ。迫力が足りないのが、最近の悩みだ。

 そんな小さな悩みより問題なのが、最近、この街を騒がせている誘拐事件だ。

 見目麗しい人間が、老若男女問わず――いや、さすがに老はいないが、男女問わずに誘拐されている。

 同一犯とおぼしき、珍しい動物が連れ拐われる事件も頻発していた。

 全く見当もつかない犯人に、私達は頭を悩ませて――いなかった。

「団長! 犯人はあいつしかいませんって!」

「目撃者もいました!……何故か、一家揃って街を出て行きましたが」

「物証もありました。犯人が落とした家紋入りのハンカチです!……同じく何故か物理的抹消されて消し炭になってますが」

 部下達が声を揃えて告発しているのは、変態と名高い、某お偉いさんの、馬鹿――失礼、大馬鹿息子の事だ。

 親の権威を使い、大馬鹿息子は、私達が見つけた証拠を潰し、捜査を止めろと圧力をかけてきていた。

 打つ手がなく、私達が頭を抱えていると、大通りで暴れているものがいると、通報が入る。

 重い腰を上げて向かった先で、私は希望となり得る存在と出会う。

 暴れている相手の迫力に、部下達が恐れおののく中、歩き出そうとした私は、足元に落ちていた一枚の紙に気付く。

 手書きのチラシらしい紙には、色鮮やかな似顔絵らしい絵と一緒に、何でも屋という文字が踊っていた。

 そして、目の前にいる相手は、似顔絵の片方と酷似していた。

 目の前で暴れる相手、何でも屋、誘拐。私の中で、一つの考えが閃く。

 聞けば、暴れていた理由は、相棒が消えた、という私達にとっても見過ごせないものだった。

 そのまま、詰所まで連れ帰り、特に信頼している部下と共に、何でも屋へ依頼をする。



 黒き嵐で、状況を打破してもらう為に。


 結果は、大成功だった。暴れている黒い獣を捕縛するという名目で屋敷に突っ込み、すでに気絶させられていた大馬鹿息子を一蹴りしてから、私達は地下牢に捕われていた人間――以外もいたが、全てを助け出した。


 何でも屋の相棒は、本人がしっかり確保していた。

 そこで初めて、私は、その相棒だという、もう一人の何でも屋である、小柄な相手と向き合う。


 何も映していない筈の銀の眼は、全てを見透かしているようで、思わず軽口を叩くと、大きくて黒い相棒の方が睨み付けてくる。

 それを宥める、美しく小さな相棒の姿に、二人で一人か、と柄になく思う。



 それぞれが、それぞれ、欠けた部分を補いあっている、そんな姿に、私は憧憬の念を抱いていた。


「また何かあれば、依頼しても良いか?」


 遠くなる背に声をかけると、片方は手を振り、もう片方は尾を振っている。



 多分、了承であろう答えに、私は迫力が足りないと言われる顔を緩ませながら、大馬鹿息子の処理をする為に歩き出した。



 何でもありなこの世界だが、悪党をのさばらせておく程、甘い世界ではないのだ。



 何処か遠くで、狼の遠吠えが聞こえた。


 分からない筈の私にも、分かった。


 あれは、


『アタリマエダ』


 そう言ったのだ。



 本当に、何でもありなこの世界。

 何でも屋な、君達に出会えた事に感謝しよう。



 再び出会えたなら、とりあえず自己紹介から始めてみよう。


 私の名は――。

何でもありな世界ですから、また何でも屋が現れるかも知れません。

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