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あおむけの死体

作者: 出島優

学者の一人が、こんなことを言いました。

「なぜ死体はあおむけなんだ?」


たとえば虫は、死ぬと足をおってあおむけに倒れます。人は、死ぬとあおむけの状態で棺の中に入れられます。動物は、強い相手に降参、つまり命を差し出すとき、やっぱりおなかを出してあおむけになります。考えてみると、どんな生き物もうつ伏せよりは顔を見せて死んでいるほうが多いのです。

学者たちは、「これは決まった犯人がいるんじゃないか?だって犯行が猟奇的殺人と一緒じゃないか。」と考えました。自然的にしろ意図的にしろ、みんながみんな同じ格好で死ぬのは不自然だと思ったからです。


学者たちはまず、あおむけの死体が、意図的なものなのかを確かめようとしました。

学者は虫に、「なぜ君たちは死ぬときにあおむけなんだい?」と聞きました。

虫は、何が言われたかわからないようで、学者たちの前をてこてこと歩いていきました。


学者はライオンに、「なぜ君たちは死ぬときにあおむけなんだい?」と聞きました。

ライオンは、学者たちを警戒したのか、唸り声をあげて遠ざかって行きました。


学者は人間に、「なぜ君たちは死ぬときにあおむけなんだい?」と聞きました。

人間は声をそろえてこういいました。「「「なんとなく!」」」


学者たちは憤りました。「なぜあいつらは自分の死ぬときのことを考えてないんだ?普通、一番研究するところじゃないのか?」

「まぁまぁ、彼らは向き合いたくないんだよ。自分の死というやつに。生きてるうちは生きてることに必死みたいだしね。」

「ずいぶんと余裕がないみたいだな。あくせくして、大変ご苦労だよまったく。」


そのとき、学者の一人が、「あ、私たぶん今死ぬよ。」といった。

学者たちは喜びました。これは犯人を目撃するチャンスです。「どうだ?もう死ぬか?」「いやいや、ちょっと待って...」

その死ぬといった学者は、だんだんと冷たくなっていきましたが、突然「そうか!お前だったのか!」と叫び、近くにあったものに走り書きをしました。

そして、その学者は動かなくなりました。


学者たちは、その死んだ学者の残した走り書きを拾い上げましたが、そこに書いてあった言葉が何かは分かりませんでした。

ただ、「お前だったのか!」といっていたことから、これがおそらく犯人の名前なのだろうと推測しました。学者たちはとりあえず犯人の名前を裁判所に持っていきました。「とりあえず、これが犯人の名前と思われます。」

裁判所は、その犯人を有罪とし、懲役を科しました。




被告 ジュミョウ

汝を大量殺人の罪で、「この世のすべての生き物が死ぬまで、彼らを生かし続けるために働く」刑に処す。

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