オトウト、というモノ
この仕事がいかに楽しいか、お前の骨の髄まで分からせてやるよ。
そう思っていた。毒気を抜かれたのは俺の方らしい。
親っさんの話を聞くだけで、世間をなあんにも知らねぇ、可愛い仔猫が来たもんだと思った。まるで出来立ての機械のように、データも経験も真っ白で。
-可愛いやつじゃねえか。
閉じていた口角が徐々に上がっていく。のっぽの男型アンドロイドは、無邪気な笑顔で手を差し出した。
ここがどんなところか、そして自分が何をされたのか分かっていないらしい。
どうなってもいいんだな。
そう確認の意を込めてにやあっと笑う。そいつは一歩身を引いたが、差し出す手は変わらなかった。
本当に馬鹿な奴だ。
そういう俺の方こそ、ここまで落ちぶれるとは思わなかった。同じ釜の飯を食った、とでも言おうか。どんな言葉を囁いても、アイツには届かねえ。
あのな、「愛してる」って言葉は、色恋沙汰だけに使うもんじゃねえって、何度言ったらわかんだよ。家族にだって使うだろうがよ。
愛してるぜ、弟よ、って、言ってるじゃねえか。ああ!?何寒がってんだよ、ジュノー。