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さようなら
毎日が苦痛だった。
学校に行けば陰湿な苛めを受け、寮に戻れば同室になった転入生の取り巻きに陰口を言われ、それだけじゃ飽き足らず暴力を振るわれる。
生徒を正しい道へと導くはずの教師たちはその生徒の親の権力に戦き見て見ぬ振り。
自主退学することも出来た。
多分、学園のみんなもそれを望んでいたと思う。
でもそれって逃げるのと一緒じゃないかという小さなプライドと、僕をここまで育ててくれた祖父のためにもそれだけはしてはいけないと甘い自分の考えを拭い去った。
「それも今日で終わりだけど…」
学園の屋上。
そこは不良の溜まり場として有名だから近寄ってはいけないという暗黙の了解があった。
普段の僕なら誘われても絶対に近づかない場所のベスト3に入る場所に居るのだけれど、澄み渡るような青い空の中にこうやって立っているだけで開放感があって気持ち良い。
夏の匂いと青い空、そして時折僕の髪の毛で遊ぶように風が靡く。
「気持ち良いなぁ」
ポツリと自然に言葉が零れ落ちた。
それと同時に流れる一粒の涙…
それは地面に落ちることなく、宙に吸い込まれていく。
「今行くね、おじいちゃん」