出会い
今回、書き方が変わっております。
見辛えーよヴォケという方は指摘してくださると助かります。
差し支えなければこのままやらせてもらいます
ドレイクの鍛冶屋から歩くこと15分。
街外れにある山の麓。そこの森には小さな湖のようなものがあり、そこが温泉になっているっぽい。
ロア
「このまま入っても大丈夫なのか…?」
確かに温泉はある。……が、この汚い体のまま入ってもいいのだろうか。
どうしたものかと悩んでいると、不意に後ろから声をかけられた。
「そこは特殊な魔力の温泉。そのまま入っても問題ないよ」
振り向くとそこには黒く長い髪の少女がいた。
………生まれたままの姿の。いや、一応タオルは巻いているが…。
ロア
「お、おま…」
「? どうかしたかい?」
少女はまるでわかっていないように目をパチパチとさせている。
半分とはいえロアだって人間。人間の女性の体には反応してしまうようだ。
ロア
「い、いや… なんでもない」
「変わったヤツだなキミは」
少女が先に温泉に入るとロアもつられるように入っていく。
距離を少しとり、少女が視界に入らぬよう、体ごと少女の反対を向いた。
「キミ、人間じゃないよね?」
ロア
「は?」
突然の指摘に素っ頓狂な声が出てしまう。
「わかるんだよ。そういうの」
ロア
「お前は何なんだよ」
「あ…。そういえばまだ言ってなかったね。ボクはシエル。これでもデビルハンターなんだよ?」
胸を張って言うシエルに呆れた顔を見せる。
シエル
「信じてないね?」
ロア
「信じろって方が無理あると思うが…」
シエル
「それもそうだね。……どうしたものか」
どうやらシエルは真剣なようで、なんとか説明しようとうんうん唸っている。
見ていてなかなか可愛らしい姿だったが、落ち着かないしそろそろ出ようと思っていたので強引にでも切り上げることに。
ロア
「俺、もう出るぞ」
シエル
「え? あ、あぁ…うん」
入って数分しか経ってないがこの状況ではゆっくりなんてできない。
名残惜しいがロアは湖の温泉から出ようとした。その時、とんでもないことに気づいた。
(服が無い…)
アレを服と言えるかはわからないが、アレが無ければルーナのいる街まで戻ることもできない。
どうしようかと悩んでいると、様子がおかしいと感じたシエルが声をかけてきた。
シエル
「どうかした?」
ロア
「ここにあった俺の服が…」
シエル
「え…? アレ服だったの? 汚かったから燃やしたんだけど」
ロア
「………」
なんというか…
なんとも言えないやるせない気持ちがロアの中にあった。
♢
シエル
「……そういうわけでここの湖は『穢れ』が入ってきても自分で浄化できるんだよ」
ロア
「へぇ…」
結局、裸で街に行く訳にはいかないので、ルーナが異変に気づきここまで来てくれることに賭けたロアはこの湖についてのシエルの話を聞いていた。
シエル
「ここも元は禊の湖だったんだけどね。いつの間にか湧いてくる水がお湯になって最終的に温泉になったんだって」
ロア
「へぇ…」
シエル
「…聞いてる?」
ロア
「ああ」
シエル
「ならいいけど…」
言葉とは裏腹にシエルが納得いかなさそうに頬を膨らましている。
ルーナと別れてもう1時間は経っているはず。それでも未だ姿は見えない。
シエル
「…まだ待つの?」
ロア
「誰のせいだと思ってる」
シエル
「す、すまない…」
語気が荒々しかったせいか、シエルが縮こまってしまった。
ロア
「あー…いや、確かに綺麗にした後にもっかいアレ着るのも嫌だったし…」
と、フォローを入れてはみたが、シエルは俯いたままだった。
会話もなくなり、真剣に出たくなってきたロアはある考えを行動に移すことに。
ロア
「……シエル。先出て服着てろ」
シエル
「キミが出られないのはボクの責任だ。待ち人が来るまでボクも待つよ」
律儀に待とうとするシエルだが、ロアがそれを良しとしなかった。
ロア
「我慢の限界だ。一発派手な花火を上げる。それなら街に居るアイツにもわかるだろ。……他の野次馬も来るだろうが。お前が他人に見られて喜ぶ趣味なら何も言わないけどな」
シエル
「そういうことか…。わかった、すまないがボクは先に出させてもらうよ」
シエルは湖の温泉から出て、少し離れた木の陰に隠れた。
少しして、黒のパーカーを着てロアのところへ駆け寄った。
シエル
「うん。いいよ」
ロア
「おっけ。……久しぶりに魔法を使うな…。上手くいきゃいいが」
そう言ってロアは右手を空に突き上げた。
♢
ドオォォォォォォォン!
「な…なに⁉︎」
突然大きな爆発音が街中に響きわたった。
森の方で起きたようで、周辺の空はまだ赤かった。
(森の方って…… まさか…ロア‼︎)
ルーナはすでに買い終えていたロアの着替えを持って森へとかけだした。
♢
シエル
「花火っていうか…ただの爆発じゃないか…」
シエルが赤みがかった空を見上げながら苦笑いで呟いた。
ロア
「……………久しぶりすぎて加減がわからなかった」
そして犯人も苦笑いである。
シエル
「あれだけ派手だと野次馬どころか辺りのハンターまで寄ってくると思うよ」
ロア
「だよなぁ… いや、騎士団とかじゃないだけマシか」
どちらも良いことではないのだが…。
誰かが来る前にルーナ来ることを切に願っていた。
すると、誰か来たようでこちらへ駆け寄って来る足音がした。
ルーナ
「ロア!無事ですか⁉︎………ってあれ?」
ロア
「ルーナ…! よし!助かった!」
ルーナの姿を確認するや否や、立ち上がるロア。
大事な部分はもちろん手で隠している。
ルーナ
「きゃっ……、よくわかりませんが早く着てください!」
顔を赤くしたルーナが着替えとタオルをロアに投げ渡した。
ロアはそれをキャッチし、急いで体を拭く。
ロア
「よし…!」
体を拭き終え、藍色のズボンに手をかけ、それを履いた。
下着はないがそんなことを言っている場合ではない。
次に灰色のタンクトップを着、その上から赤黒いパーカーを着た。
ルーナ
「サイズは大丈夫ですか?」
ロア
「驚くくらいピッタリだ。ありがとな」
ルーナ
「いえ… 。急いでここを離れましょう。もうすぐ人が来ます」
そしてロア達は湖の温泉からダッシュで逃げた。
♢
湖の温泉から逃げるて街まで戻ってきたロア達は、ドレイクの鍛冶屋で話していた。
ルーナとシエルは軽く自己紹介をし、今は先程の爆発の説明をしている。
ルーナ
「じゃああれはロアの仕業だったんですね…」
ルーナが呆れ顔のジト目でロアを睨む。
シエル
「彼をあまり責めないでくれ…。元々の原因をつくったのはボクだ」
ルーナ
「……シエルさん…でしたね。あなたはどうしてあそこに」
シエル
「聖域が張られているにも関わらず、魔将クラスの魔力を感じたものでね」
そういえばシエルはデビルハンターだと言っていた。確かにそれなりのデビルハンターなら、悪魔の魔力を探知することができる。
ルーナ
「魔将… 確かに今のロアの魔力はその程度でしょうね…」
魔将とは魔界の軍団を率いる悪魔で、決して弱い訳ではない。
かのグシオン・レグナードの息子が魔将クラスのはずがない。
シエル
「聞かせてもらっていいかな? 彼のことを」
ルーナ
「それは私が決めることではありません。…彼に聞いてください」
シエル
「それもそうだね。……いいかな?ロア」
シエルはロアの方を向き、問いかけた。
ロア
「ああ… つっても、おもしろいことなんか何もないぞ?」
部屋の端で座り込んだまま答えた。
シエル
「構わないよ」
ロア
「そうか…」
ロアは自分の立場や、今まで囚院にいたことなどをシエルに話した。
シエルは黙ってロアの話を聞いていた。
次更新は4/26(土)です