到着
なにかおかしいところがあれば指摘お願いします。
魔鳥に乗って空を移動すること数十分。
何やら街のような場所が見えてきた。
「見えまし。あそこがならずの街、イザレスです」
「ならずの街って…… 」
「あそこは世間から外された… もしくは外れた者達が来る場所ですから」
「なるほど。脱獄犯が潜むには絶好の場所ってわけだ」
などと話している内に街の近くの崖まで来る。
魔鳥はそこで止まり、地に足をついた。
「ここからは徒歩です。…さすがに魔鳥を連れていくわけにも行きませんから」
「お、了解」
魔鳥から降り、街へと続く森の中を歩き始めた。
♢
「えらく静かだな。もうちょい悪魔やらが彷徨いてると思ってたんだが」
森を歩いてる途中、ロアがルーナに尋ねた。
「この辺りは『仮初めの聖域』の結界が張られているので悪魔は近づけないんです」
「……それ、俺大丈夫なのか?」
仮初めの聖域といえば、一定領域内に侵入した悪魔が消滅する、聖王アクシリオスが生み出した聖魔法の一つだ。
術者の魔力によってその範囲も消滅させられることができる悪魔の強さも違う。
「半分とはいえ悪魔ですからね。でもここまで来れてるということは大丈夫だと思いますよ?」
ロアは半人半魔。確かにここまで来ても何も問題はなかった。
だが半分は悪魔であるため、結界が反応してもおかしくないのだが。
(まぁ…いいか)
考えたところで答えが出るわけではないため、諦めた。
♢
「着きました。ここです」
「……意外と普通の街なんだな」
訳ありの人間達が集まるっていうからもっと殺伐とした街を想像していたロアだったが、街の様子を見るとみんな楽しそうに笑っている。
もっとも、それが本心なのか表面上取り繕ったものかまではわからないが。
「とりあえず、着替えたらどうですか? その格好だといくらここでも目立ちますよ」
髪は数年放置していたので白く長い髪は数年放置していたのでボサボサで汚れ、格好はボロボロの布を巻いているだけのものだった。
「確かに…。でも俺、着替えも金もないぞ?」
「お金は私が持っているのでどこかで買いましょうか」
2人が歩こうとしたその時、不意に声をかけられた。
「お、無事に帰ってこれたのか」
振り向くと、白く長い髪をくくった、筋肉質の老人がいた。
「ドレイクさん。はい、彼がそうです」
「するとそいつが例の…」
「ロア・レグナード。…最後の希望です」
ロアは2人の話についていけず、怪訝な顔をしていた。
すると、ドレイクと呼ばれた男がロアの顔を見定めるようにジッと見た。
「……なるほど。さすがは息子。確かにあの人の面影がある」
「親父を知ってるのか?」
「ああ…。と言っても、何十年も前、ガキの頃に一回だけだ。……だがしっかりと覚えているさ」
老人は言葉を続ける。
「俺はドレイク。…お前も魔剣士だろ?」
「そんな大層なもんじゃねぇよ。親父には全く届かない」
「それはそうだ。お前はお前なんだからな」
「……」
ドレイクの言葉にロアはどう反応していいかわからず、黙ってしまう。
「…ついて来な。いいモンを見せてやる」
そう言ってドレイクは歩き出す。
ロアはどうしたものかとルーナの方を見た。……が
「?」
可愛らしく小首を傾げていただけだった。
結局、悪いヤツじゃなさそうだと感じたロアはドレイクに着いて行くことにした。
♢
「ここだ。入れ」
ついて行った先にあったのは一軒の家。
たくさんの剣や槍やらが家に立てかけられていた。
中にも同じように様々な武器があり、鍛冶に使うであろう道具もあった。
「アンタ… 鍛冶屋なのか?」
「まあな。……と、これだ」
ドレイクは部屋の端にあった箱をロアの前まで持ってきた。
「これは?」
「開けてみな」
ロアは少し警戒しつつ、箱を開けた。
そこにあったのは一本の大剣。柄に髑髏があり、いかにも魔剣といった感じだ。
「魔剣ヴェンジェンス。グシオン・レグナードの魔剣の一つだ」
ロアはヴェンジェンスを手にとったその時、何かの力を感じた。
「……?」
「その魔剣にはグシオン本人の魔力が込められてる。同じ血を持つお前なら扱えるだろう」
「これが… 親父の力……」
「使い方や感覚は体で覚えろ。俺に言えるのはそれだけだ」
そう言うとドレイクは鍛冶道具の前に座り、鉄を打ち始める。
「ありがとうございます、ドレイクさん」
「なに、約束を果たしたまでだ」
ドレイクは懐かしむような顔をし、満足そうに鍛冶作業を再開した。
「行きましょう、ロア」
「ああ。そうだな」
2人はドレイクの家を後にした。
「そうだ」
家から出て歩くこと数歩。
ルーナが何か思いついたようで、その場に止まった。
「どうした?」
「この街の山の麓に温泉があるんです。私はロアの着替えを買ってくるのでその間に入っちゃっててください」
「いや… さすがになんか悪い」
「いいですよ。これから嫌という程働いてもらうんですから」
そういうルーナの顔はニッコリしており、ロアは思わずビクッとした。
「そういうわけですから、行って来てください」
「…わかったよ」
ロアは少しげんなりとしながら山の方へ向かった。
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