- 1月9日。異変。
執筆日:1月9日。
泣きながら書き物をやるのはいつ以来だろう。
でも書かざるおえない時が来てしまっただ。
いまさらになって書くことがどれだけバカらしいかは自分でも分かるし、
それがどれだけ悲しいことかも分かっている。
我が家の愛犬であり家族でありマスコットでもある、
ムサシの様子がおかしくなったのは昨日のことだった。
十五歳の雑種犬である。
生憎(今思えば悔やまれる)、
昨日は友人と遊びにでかけておりムサシに気をかけることができなかった私だが、
母の話によると、昨日からどうも食欲が無く、散歩も手ごたえがない感じだったという。
その話を聞いたのが遅すぎる深夜十二時半を回っていたときのこと。
日付は1月9日になっていた。
暗い外を見てみると、まず異変に気づく。
たどたどしい足つきで、庭をグルグルと回っているのである。
頭は地面の匂いを嗅ぐかのように低く保ち、前傾姿勢のような形で歩く。
あきらかに体勢がおかしい。
確かに散歩のときは、好きな匂いがあればそこから十分以上も離れないこともあったが、
それとは明らかに様子が違う。
何かに取り付かれたかのようにゆったりと徘徊しているのである。
そもそも、深夜なら老犬であるムサシならとっくに寝ている時間でもあったし、
ともかく何かが起こったことを私は肌で感じ取っていた。
ホームページを検索すると、痴呆犬や脳腫瘍などのキーワードが出てきた。
少しだけポジティブになれたのは、右回りの旋回は痴呆犬に多く、
左回りは脳腫瘍の疑いがあるということで、
ムサシは幸いにも右回りだったからだ。
それでも、あの元気な姿とはほど遠い。
年齢で言えばおじいさんとは言え、
この前まで元気に走り回ってたやつが
急におじいさんの動きになるなんて耐えがたいことだった。
うるさくて、元気が良くて、やたら物を食いたがる姿に戻って欲しいという
人間のわがままが支配した。
私は、
「老犬だから、いつ死んでもおかしくない」ということを最近になって軽口で言っていたものの、
流石に受け止めきれなくなっていた。覚悟できてるつもりでも、
やっぱり覚悟なんてできてなかったのだろうか。
余談になるが、近所にある竹馬の友の家の犬は、
脳梗塞の状態から復活し、走れるぐらいに回復しているという話を思い出した。
2時半まで様子を見た後、
「朝になれば変わるかもしれない」という思いを胸に抱いて寝た。
人間とは単純なのか、それともよくできているのか知らないが、
その日に私が見た夢はムサシが庭でハッキリと元気な顔を見せた夢だった。
人間って身勝手でズルい。