4話:変わった転校生
――次の日
俺は学校へと向う途中で綾と出会った。
「おはよ・・・」
「・・・はよう」
・ ・ ・
なんでこんな気まずい空気になるんだよぉ
「行こうぜ」
俺は綾の手を握った。
「付き合ってんだから手ぐらい握ろうぜ」
「翼~」
綾は泣きそうになりながら抱きついてきた。
「なんでお前が泣くんだよ」
「だって嬉しいんだも~ん」
綾は笑いながら言った。 そんな綾の髪をなでた。 そして綾のほっぺにキスをした。
学校について新藤に付き合った事を言った。
「まじ?おめでとう。 まぁこうなる事は分かっていたけどな。」
新藤が笑いながら言った。
この話を聞いていた女子が数人悲しんでいて中には泣きだす子もいた。 俺ってこんなにもててたんだぁ なんて思ったりして
「翼、大丈夫?」
綾が心配しながら聞いてきた。
「大丈夫だよ。ぼーっとするのは癖みたいなもんだから」
「そーお?」
「で、お前部活はどうすんだよ?」
俺は話をそらした。
「私は野球部のマネージャーやるつもりだよ」
と綾が言った。 むっちゃくちゃ嬉しい
「マジかよ!じゃあこれから部活でミスできないじゃねぇかよ!!」
「嬉しくないの?」
綾が少し膨れて言った。
「いや、嬉しいよ!」
と言うと綾が照れくさそうに
「ありがと♪」
とつぶやいた。
「あのね、うちのお父さん野球選手なんだけど知らない? 田崎 敬浩っていうんだけど」
俺はびっくりした。 田崎 敬浩っていったら日本球界を代表する大エースで俺の憧れだった。 そんなすごい選手の娘がこんな所にいるなんてびっくりした。
「もしも~し、翼く~ん?」
綾の声で我に返った。
「大丈夫?ってぼ~っとするのは翼の癖か。」
「すげ~よお前の父さん 敬浩選手は俺の憧れで小さい頃はよく敬浩選手のフォームをまねしてたなぁ」
「へぇ~、じゃあ今度家来ればいいじゃん今お父さんいるから」
綾は、少しふてくされたように言った。
はは~ん、父さんにやきもちやいてんだ~
「綾、お前父さんにやいてんのか?」
俺が聞くと
「ち、ちがうよ!」
と、怒って言った。
「はーい、授業始めるぞ~」
タイミング良く先生が言った。 ありがとう先生。 授業が終わると部活に向かった。 もちろん綾と一緒に 部室に入ると監督に綾を紹介した。 うちには今、マネージャーがいないからすぐにOKを出してくれた。
『良かったな、綾』 俺は心の中でそう言った。 俺はマウンドの方を見るとそこには知らない人がいた。 多分それはシンドウという人で、新藤曰くすごい変わり者、だそうだ。 そのピッチングを見ると鳥肌が立ってきた。
手元で若干曲がるストレート、同じ速度で落ちるフォークなどプロ級、いやそれ以上のピッチングをしていた。 むこうがこっちに気付いた様で近づいてきた。
「やぁ、君は・・・」
そいつは先輩ずらさえしてた。
「白鳥 翼」
俺がそっけなくいうとそいつはは閃いたような顔をした。
俺の事を知ってるのか?
「あ、そうだ。白鳥だ! 俺、神童《しんどう》 守。 神様の神に童話の童。 この前、帝都高校に転校してきた“期待のルーキー”って奴かな?」
『神童』かぁ、珍しい名前だなぁ(まぁ白鳥っていうのもなかなかないんだけどね・・・)
それにしても自分の事を“期待のルーキー”だなんてほんと変わってんなぁ
「神童・・・」
すると神童は顔をしかめて
「守でいいよ」
と言った。
「じゃあ守」
「まぁいっか。 で、何か用?」
守が聞いてきた。
「いや、別に」
「ふ~んそういえば翼くんはピッチャーだったよな?投げてみるか?」
そいつはまだ先輩ずらしていた。
「ねぇ年、同じなんだけど」
俺がそういうと守は笑顔で
「知ってる。 だって龍也に聞いたもん」
と言った。 龍也というのは新藤の下の名前だ。
新藤の事を下の名前で呼ぶ人を見たのは新藤の親以外、初めてだった。
でも、同級生と分かってああいう口のきき方をするってことは、もともとそういう喋り方なのか、それとも俺の事を下に見ているのか・・・
「ねぇ、どうするの?」
守がせかす。
「分かった。 投げるよ」
同じ投手なんだし、ここで一発ガツンと行かなきゃ多分これからも舐められっぱなしになるだろう。 そんなの嫌だ。
俺はマウンドに行き、肩を慣らして集中力を高めていった。 俺は大きく振りかぶって白球を力いっぱい投げた。 そのボールはミットとは大きくはずれ、ネットに当たった。
「す、すまん、力んだ。」
と言って守の方を見ると目が点になっていた。
「スゲーよお前、もう一回投げてみろ」
守が興奮ぎみに言った。 俺は集中し直して、白球を力いっぱい投げた。
スパーン
ボールがミットに入る心地良い音がした。
「やっぱりスゲーよお前」
何がすごいのかなぁ、普通に投げているだけのに
「お前のストレート、『ジャイロボール』だよ」
ジャイロボール?何だそれ
「あの~、ジャイロボールって何?」
俺は聞いてみた。
「ジャイロボールっていうはボールの回転軸が打者に向かって進み、打者の手元で伸びる幻のストレートだよ」
え?俺ってそんなすごい球投げてたんだ・・・
「お前マジスゲーよ。俺の存在、危ないかもしれない! 俺もムービングファストの完成度を高めないと」
守はそう言ってどこかに走っていった。
うしろを見ると監督が走ってきた。
「白鳥~、お前の母さんが癌だって」
「えっ、母さんが、癌?朝まで元気・・・」
そういえば確かに最近の母さんはきつそうだった。
「しかも末期だそうだ。」
末期・・・ってことはかなり前から癌になってたのか
「母さんは今○○病院にいる。 行ってやれ」
俺は監督にお礼を言って病院へ急いだ。
母さんのいる病室に入った。 そこにはまだ元気そうな母さんの姿があった。 でもなぜか涙が込み上げてきた。
「母さんごめんな~俺が親不孝だったから。 でも最後にちゃんと話した内容が下ネタなんてやだよ~」
すると母さんは弱々しく笑った。
「先生?母さんは治りますよね ってか絶対治して下さいよ!」
先生は困った様な顔をした。
「お母さんの病気が治る確率は低いよ。 正直奇跡が起こる事を願うだけだよ」
先生の言葉を聞くと生きている気がしなかった。 次の日、俺は学校を休んだ。 すると綾から電話がかかってきた。
綾「大丈夫?」
俺「ああ、大丈夫だ」
ため息が出るような声だった。
綾「どうしたの?翼、変だよ」
俺「そうか?」
綾「明日は学校、来るよね?」
俺「分かんない」
綾「本当に大丈夫? 何かあったなら相談にのるよ」
俺「実は、俺の母さん癌なんだ。しかも末期で治る確率が少ないらしい」
・ ・ ・
二人の間に変な空気が流れた。
綾「大丈夫だよ、絶対治るって」
俺「ありがとう、また明日な」
綾「うん、じゃあね」
綾から電話がかかってきて何だか勇気が出た様な気がした。
次の日、俺は学校に行った。 そこで綾と会ったので昨日のことでお礼を言った。
「良かった~ いつもの翼に戻った~」
綾が泣きながら抱きついてきた。
「そういえば練習試合、明日じゃない?」
綾が言った。 俺は母さんの事で頭がいっぱいで試合の事、忘れてた!
「そうだ!明日だ」
「忘れてたのか?」
新藤が聞いてきた。
「まぁいいんじゃない」
理由を知っている綾がフォローしてくれた。
――そして土曜日
「よし、行くか」
俺は高鳴る鼓動を抑えグラウンドへ向かった。
その途中で綾と会った。
「今日は頑張ってね、はいこれ」
綾が渡したのは『必勝祈願』と書いてあるお守りだった。
「ありがとう」
俺はそう言って綾にキスをした。
「絶対勝つからな!」
「うん、頑張ってね」
そして試合会場に着いた。 そこでスタメンが発表された。 俺は6番、ピッチャーで新藤は5番だった。
「よし、行くか」
俺はマウンドへと走った。
マウンドをならしてロジンバックを手に取り集中力を高めていった。 何度か深呼吸をし、大きく振りかぶって白球をできるかぎりの力で投げた。




