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2話:入学、そして再び


俺はスポーツ推薦で形だけの試験を受けて難なく合格した。 新藤は一般入試からだったが、無事受かった。 新藤に聞いて初めて知ったのだが、帝都高校は県下でも有名な進学校で、入学倍率はすごく高かったらしい。 それでも首席で合格したんだからあいつは大したもんだ。




――入学式の日



「翼~早く起きなさーい、遅刻するわよ~」

 時計を見ると8時5分だった。

「やっばい、まじで遅刻する。」

 俺はあわてて制服を着た。 鏡に映る自分を見ると自分に見とれてしまう。 改めて思うが俺はかっこいい方だと思う。 身長は175cmをこえているし、目はキリっとしていて・・・

「翼!あんた・・・、何自分に見とれてるのよ」

気付くと母さんがいた。 なんだか羞恥心がこみ上げてきて自分でも顔が赤くなるのが分かった。

「じゃあ行ってくる!」

 俺は少し強く言った。

「いってらっしゃーい、学校でも自分に見とれないのよ~♪」

 母さんが笑いながら言った。 俺はまた顔を赤くしながら

「うるさーい!!」

 と言って帝都高校へと向かった。 家から帝都高は歩いて15分くらいで、ジョギングにはもってこいの距離だった。 学校に着くと急いで教室に向かった。 廊下を走っていると誰かが飛び出してきた。(俺が飛び出したって言う方が当たってるかな)

どんっ!

そこには倒れているあの時の女の子がいた。

俺は急いで謝った。 するとその女の子が

「あ、あの時の人!」

 と言った。 正直嬉しかった。 俺の事覚えててくれたんだ。

「あの~名前なんていうんですか?」

「へっ?」

 思わぬ言葉に声が裏返ってしまった。

「俺の名前? 翼だよ、白鳥しらとり 翼」

「翼さん・・・」

「翼でいいよ」

 その女の子は改めて見てもかわいかった。

「翼さ、あ、翼?大丈夫ですか?私もうっかりしていて・・・」

「大丈夫だよ、あとため口でいいから」

 すると女の子は困った様な顔をした。

「そうですか」

 また敬語使った

「だからため口でいいってば!!」

「ご、ごめん」

 女の子は今にも泣きそうだった。

「ごめん、言い過ぎた。」

 二人の間に気まずい空気がただよった。

やっばい!この空気、どうにかしなきゃ

「ねぇ」

「あの~」

 二つ言葉が重なった。

「先にどうぞ」

 と言われたが俺も譲る。

「いやぁ君から」

 すると女の子が

「翼さ、翼は何やってるの?」

 と言った。

「俺は野球やってたけど、知らない?中学時代は結構有名だったんだけどなぁ」

 やべぇ、いらない事言っちゃった。

「へぇ~~、で、翼は何?」

「あっ名前なんていうの?」

 俺が聞くと女の子は慌てて

「ごめん名前、言ってなかったっけ?田崎 綾って言うの。 よろしく♪ 翼は何組?」

 と聞いてきた。

「俺は7組だけど」

 と言うと田崎は驚いたような顔をする。

「えっ本当?私も7組だよ」

 俺もびっくりした。

「まじで?スゲーじゃん」

 時計を見ると8時23分だった。 帝都のホームルームは25分からだからあと2分しかない。

「やばい早く行かないと遅刻するぞ!!」

 俺は田崎の手を取り、教室に走った。

その手はとっても小さくて、でもとってもとっても暖かくて・・・


ガラガラ・・・

教室に入ると新藤がいた。

「お~翼 彼女か?」

「ちっちげーよ」

 俺は顔を赤くしながらも反論した。 田崎の方を見ると俺と同じく顔を赤くしていた。

「ってか新藤と同じクラスかよ~マジ嬉しいよ♪」

「俺もだよ、翼」

 俺は席についた。 横を見るとそこには田崎がいた。

「何でここに田崎がいるんだよ」

 すると田崎がこっちをにらんで

「私に聞いても分からないよ~」

 と言った。 田崎はまだ顔が赤かった。

「お前ら本当に付き合ってねぇのかよ」

 新藤が割り込んできた。

「付き合ってない!!」

 俺と田崎が口をそろえて言った。


次の日、新藤と部活を見に行った。 帝都は変わっていて入学したらすぐに部活を決めなければいけなかった。

そこにはすでに入学希望者がいて、その視線の先にはノックをしている部活生の姿があった。

黒土のグラウンドは綺麗に整備してあり、選手たちの動きにも無駄がなかった。 さすが強豪ってところか・・・

そこにジャージ姿の若手の先生がきた。

「お!一年は集まってるな? 私は顧問の藤元だ。 新入生諸君には早速だが、実力を見せてもらう。 各自アップをしておくように、以上」


俺は新藤とアップを済ませ、他の一年がポジションごとに並んでいた列に並んだ。 ピッチャー候補は俺を含めて3人だった。 

最初に投げる事になったのは山中という男だった。 山中とは同じクラスで、中学生時代の自慢話を大きな声で話していたのを覚えている。 山中は変に格好付けながらマウンドを踏みならすと、ようやく第一球目を投げた。 豪快なオーバーハンドだった。 山中が投げた球はキャッチャーミットにはおさまらず、ワンバウンドしてフェンスにぶつかった。 それから何球か投げたが、同じような感じだったため藤元がもういい、と言った。 それから「明日からは野手の練習に加わるように」と続けた。 山中は納得いかないような顔をしたが、素直に従った。

次に投げたのは田嶋という男で、無駄のないフォームから正確にミットにボールをおさめた。 その後も確実にコースを狙って投げていた。 いつか、こいつとエース争いになりそうだな。


そして俺の番。 マウンドに上がると一度深呼吸をし、気持ちを落ち着かせた。

俺は大きく振りかぶり軸足にたっぷりと重心を乗せ、少し“間”を開け腕を振り下ろした。

スパーンッ

俺が投げた球は一瞬でミットに入った。

周囲がどよめいた。 

よし、以外と緊張していない。 二球目は少しスピードを付けてみた。

うん。 さっきより納得のいく球がミットに決まった。

「変化球はあるか?」

 顧問の藤元は満足したような顔で言った。

俺はうなずいて、スライダー、スローカーブ、そして覚えたてのフォークを交互に投げた。

最後のカーブは落差が大きすぎて3年のキャッチャーでも取り損ねる程だった。 そして最後は思いっきり今の俺の最高の球を放った。

――――スパーン

ボールがミットに入る心地良い音と共に、ドスンというキャッチャーが尻もちをつく音もした。 そのキャッチャーは信じられない、といった顔で足元に転がっている球をまじまじと見ている。 

どうだ、これが俺の球だ

少しの間注目のまなざしを浴び、俺はそれに便乗して藤元にひどくお叱りを受けた。

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