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17話:両親

『うん! 野球って楽しいね・・・お父さん!!』

 この、嬉しそうな声が俺の頭の中で何度も再生される。

この記憶は・・・俺と・・・父さんの・・・想い出? きっとそうなんだろう。

今まで俺の中で父さんは写真だけの存在だった。 でも俺の頭の中にもちゃんと父さんがいて・・・その父さんは今まで見た父さんの中で一番かっこよくて、一番輝いていて・・・

死ぬ前に父さんの事、思い出せてよかった。




『・・・翼』

 ん・・・?

『翼、聞こえますか?』

 何か、とても懐かしい声がする。 この声は・・・

『母さん・・・?』

 俺は暗闇の中で声を上げる。

『は、そうです。 あなたはまだこっちに来てはいけない』

 それは悲しそうな声だった。

『でも俺が逝かないと綾が死んじゃう。 それなら俺が死んだ方が・・・』

 俺が死んだ方がいいんだ。

『それでも・・・』

『俺は・・・もう決めたんだ』

 俺は今にも出てこようとする涙を必死にこらえる。

『翼、君が死ぬ必要なんか全然無いんだ』

 またどこからか、次は聞き覚えのない男の声がする。

『大丈夫だよ。 翼は生きていいんだ』

 俺の目の前に、昔のままの父さんが現れる。

『でも・・・』

『いいんだ。 第一、綾ちゃんは死んでなんかいない』

 

・  ・  ・え?


『綾は・・・死んでない・・・?』

『あぁ、確かに綾ちゃんは車に引かれた。 でも運良く軽傷で済んだんだ』

 あまりに話の流れが急で事の整理がつかない。

『じゃあ、あのリリスは?』

『リリス?!あいつ、またやったのか・・・ リリスっていうのは人を死に追い込んで寿命を奪う死神だ。 でも不当に寿命を奪ったから死界裁判で有罪となって今は執行猶予期間中だったんだ。 あと300年もすれば執行猶予が解けたというのに… まったく愚かな奴だ』

 死神? 死界裁判? 何だか余計に分からなくなってきた。

『綾は・・・綾は助かったのか?』

『あぁ』

『えぇ』

 母さんと父さんは口をそろえて言った。 二人は顔を見合わせて笑った。

よくは分からないけでどうやら俺はまだ生きられるらしい。 そして綾は・・・まだ生きていた。


ヤバい・・・


綾は無事だった。

その事実を知った瞬間今まで我慢してきた涙が一気にあふれかえしてきた。



俺は数分後、落ち着くと母さんが口を開く。

『でも何でお父さんが綾ちゃんの事を知ってるの?』

 確かにそれは俺も気になっていた、何でだろう。

『いや、それはな・・・俺は高校時代好きな人がいてな、その人は野球部のマネージャーだったんだ。 その人も俺の事が好きだという噂もあったんたが、俺は告白する勇気がなく高校卒業。 二人は離れ離れになり、次に会った時は二人とも既婚者で子持ち。 そこで綾ちゃんの事も知ったんだ。 いづれ二人が付き合う事になったらいいなって話していたんだが、まさか本当に付き合う事になるとはなぁ・・・』

 へぇ~ 父さんにそんな過去があったなんてなんか意外・・・

俺の中で父さんの人物像は天才肌でいつもクールなイメージだったけど、実は意外と茶目っけがあって誰よりも努力家で・・・ そんな父さんを俺は誇りに思う。

それから俺達親子は昔話に花が咲いた。



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