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16話:《おじさん》
『いくよ・・・えい!』
その手から放たれたボールは3m程離れている《おじさん》のグローブへと入る。
『上手だね』
《おじさん》に褒められた僕は少し照れながらも誇らしく胸を張った。
『僕ね、大きくなったら野球選手になるの。 それで投げる人になるんだ』
《おじさん》はボールを投げ返す。
『わぁ』
《おじさん》が投げたボールは僕のグローブをはじき、後ろへとそれる。
『そうか、でもそんなんじゃあプロにはなれないよ』
『え?じゃあどうしたらなれるのかな・・・』
僕はボールを拾って力いっぱい投げる。
ボールは《おじさん》とはまったく違う方向へと飛んでいく。
『そうだなぁ、好き嫌いせずにいっぱい食べて、いっぱい寝て、いっぱい練習して、そして野球が大好きだっていう気持ちがあれば君ならきっとなれるよ・・・』
まだ言葉の意味は分からなかったがその言葉には妙に説得力があり、僕は頷く。
《おじさん》はボールを拾いに草むらの中へと入っていく。
『お、あったあった。 いくぞ、それ』
ボールはちゃんと僕のグローブの中に収まった。
ボールを取った右手は痛かったが、それ以上にボールが取れたということがとてもうれしかった。
『よく取ったな、えらいぞ』
《《おじさん》》は僕の頭を撫でる。
『うん! 野球って楽しいね・・・お父さん!!』
お父さん・・・?




