10話:みやび
10月、だんだん夏の面影もなくなってもうすっかり秋色に染まっている。
帝都高校を退学になって3週間。 俺は何かをする訳でもなく街中を歩きまわり、訳もない喧嘩を繰り返していた。 何度も警察にはお世話になったし、今だって例外ではない。
「白鳥、お前昔はすごいピッチャーだったんだろ? 新聞に載ってたぜ。 一年ながら155㌔のストレートを投げる本格派だって」
一時期俺は追っかけが出るくらいマスコミに注目されていた。 でもそれはもう昔の事で、今では違う意味でマスコミに騒がれている。
「なんでお前が道を踏み外したのかは知らないが、このままこんな事を続けても何もいい事はないぞ?」
そんなこと言われなくても分かってる、このままじゃいけない事なんて。
俺がこんな事になってしまった原因、それは綾の存在が大きかった。
綾のいないこの世界がとてもつまらなくて、そんな世界を嫌になって・・・
もちろん綾のせいにしているんじゃない。 それでも綾は俺にとってそんなかけがえのない存在だった。
俺の原動力と言っても過言ではかった。 でももう綾はいない。 このまま一生会えない訳じゃないけど東京に、それも芸能界でも上の方に行ってしまった綾は雲の上の存在だ。
「もうするんじゃないぞ。 お前は強いから喧嘩した相手の手当てが大変だ」
俺はかれこれ二十回くらい喧嘩をしているが一度も負けていなかった。 これはすごいらしい。
帰り道、俺は反省するでもなく街に繰り出す。
「ねぇ、今からどっか行かない?」
知らない女が話しかけてくる。 正直鬱陶しいけどその女はどこか綾に似ていた。
「いいけど」
俺はそっけなく答える。
「本当?嬉しい 僕みやびっていうの。 よろしく♪」
みやびと名乗る女はニコっとした。 笑った顔はますます綾に似ている。
「俺は翼」
「知ってる。 新聞で読んだ。 あんたすごいんだろ? でも最近は聞かないなぁ・・・ なんで?」
なんでって・・・ 学校辞めたんだから新聞に載らなくて当たり前だ。
「あ、でもなんか3流雑誌に事件起こして学校を退学になったって書いてあったけど、あれ本当なの?」
「あ、あぁ」
みやびは好奇心が前に出てどんどん俺に質問してくる。
「何で? 何で辞めさせられたの??」
う、うぅ
この女、人の傷口ばかり触ってくる。
「なんだっていいだろ?」
俺はつい大声を出してしまう。
「別にいいよ」
みやびはプイっとそっぽを向いて言う。
「ただ・・・お前の為になれば、って思っただけだから」
お前の為って、俺の為?
「何で出会ったばっかの俺なんかにかまってんだよ。 彼氏の相手しなくていいのかよ」
「彼氏なんかいないよ。 ってか彼氏いたらナンパなんてしないだろ」
あ、俺悪い事言ったかな。
「わりぃ、みやび可愛いから彼氏いるかと思った。 でもほんと何で俺なんかにかまってんだ?」
「だって・・・ タイプなんだもん。 翼の事・・・」
みやびは顔を赤くして、そわそわしながら言った。
タ、タ、タ、タイプ?????????????
「え、だって、え?」
やばい 俺まで赤くなってきた。
「だめ、かな?」
みやびが上目づかいで聞いてくる。
winner みやび
俺はみやびの上目づかいについ目をそらしてしまった。 あんな純粋な顔、直視できない。
「いいよ」
するとみやびはニコッとして、目から雫を落とした。
「お、お前泣くか笑うかはっきりしろよ」
みやびの目からはどんどん涙が出てくる。 泣いたせいで化粧が取れたけど、すっぴんのみやびも可愛かった。
「らって、うれひぃんらも~ん」
みやびは泣きすぎてろれつが回っていない。
その後話を聞くと、新聞に載ってた俺に告白するのはものすごく勇気が必要だったらしい。
で、結果を聞いた瞬間にその緊張から一気に解放されて感情をコントロールできなくなったらしい。
それから俺とみやびはいつの間にか日の暮れた街へと繰り出した。




