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8話:夏、終わる

はぁ、はぁ それにしても暑い。 今日は記録的猛暑だ、って天気予報で言っていた。 いつもは当たらないくせにこんな時に限って当てんなよな、まったく。

俺は乱れた呼吸を整えてあたりを見渡した。 すべての塁上にランナーがいる。

状況は至ってシンプル。 九回の裏、あかつき大橘の攻撃でツーアウト満塁なのだ。

俺達がいる帝都高校が1-0でリードしているだけだから一打逆転っていったところか

こんな状態でも状況判断が出来ているのだから案外自分で思っているよりも冷静なのかもしれない。

打席には俺がライバル視している友沢。 友沢の打者としての能力は知らないが、打たせる訳にはいかない。 さっきのかりはここで返してやる。

俺は大きく振りかぶり、足を上げ少し“間”を開け一球目を投げた。

―――パス

俺が投げた球は不規則に揺れならがらワンバウンドして新藤のミットに入った。

コースは完全にボールだったが、友沢がバットを出したのでストライクとなった。

二球目はスライダー。 これにも友沢は手を出したがまたも空振り。

なんだ、あのスイング。 まるで素人じゃないか 友沢は打撃は苦手らしい。

新藤は一球外すように要求したが、俺は首を振った。 すると新藤は首をかしげてマウンドに向かってきた。

「めずらしいな、翼が俺のサインに首をふるなんて」

 新藤は不満そうだった。

「友沢のスイング見ただろ?ありゃ打撃は苦手だぜ」

 俺はそう言うと友沢の方を見た。 友沢は何度もなにかを意識するようにスイングをしていた。

「でもよぉ、友沢はこの大会4割も打ってんだぜ? 今日だってお前のストレートを軽々と打ち返してたし」

 俺は新藤の言い方が気に食わなかった。

「なんだよ、お前は俺の球が信じられないっていうのか?」

 むきになってた。

「いや、そうじゃないけど・・・」

 新藤は困った顔をしていたが、主審に促されてよし、分かったと言った。

「球種はストレート、高めぎりぎり。 いいな」

 俺はうなずくとシッシと新藤に速く行くようにとジェスチャーした。


かっとばせー ともざわ とーもざわ とーもざわ


アルプスの声援は一段と大きくなる。 でもあかつき大橘は男子校だから応援の声は低く、なんだか奇妙だった。

友沢を見る。 すると友沢が一瞬笑ったような気がした。

俺は大きく振りかぶり足を上げ、少し“間”を開け踏み込み、今出来るだけの力を込めて全神経を左手に集中させ白球を投げた。

俺の腕から放たれたボールはまるで生きているかのような軌道で新藤の構えるミットに収まる、はずだった。

――――カキーーン

友沢は俺の懇親のストレートを打ち返し、打球は一二塁間を抜けてヒットとなった。


噓、だろ?


それを確認した三塁手は悠々を生還する。

終わった・・・

俺はそこにただただ、立ち尽くすだけだった。

友沢はこっちを見ながら、目が合うとにやりとした。

やられた。 友沢は俺の事なんてなんとも思ってなかったんだ。 ただの対戦相手・・・

俺は友沢の事をライバルだと思っていて、友沢も俺の事をライバル視していると思っていて。

でもそれは俺の勘違いで、自意識過剰で・・・






終わったんだ、二年の夏が。



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