第1章 3日目の夜は公園で @1つだけわかった、お前は俺のことが嫌いだな? と、俺は泣きながら問いたい
前回のあらすじ
1俺が夜の公園で女の子にからかわれた
2心が泣いていた
3俺は愚からしい
彼女、と称しているものの、ベンチで、俺の隣でクスクス笑い続けているこの女性は俺の付き合っている女性ではない。ましてや愛情など欠片も無い。それどころか、俺のことをからかって笑うようなやつなのだから、ちょっとお付き合いは遠慮したいくらいだ。
・・・・・・でも、正直に言うと遠慮はしません。
まあ、付き合うとか付き合わないとか付き合わせるとか全く俺たちには関係の無い事なのだろうけれど。
ちなみに、「付き合わせる」はゴロが良かったから言ってみた。
俺と彼女の出会いを簡単に、とても分りやすくすぐ読めるよう説明にすると多分こんな感じになるのだろう。
3日前、3日前――昔、昔みたいな感じで――住宅街の隅にあるこの公園である少年がかっこつけてベンチに寝転んでいました。まあ、それが俺なんだけど。
少年は、―嗚呼、最近の世の中は面倒くさいよな、学力が必要なのはわかるけど勉強とかハードなんだよ~。ベリーハード・・・・・・。でも、前までは小説やアニメのようにファンタジックな世界や超能力が使える異世界って楽しそうだと思っていたけど、命を懸けて生き残ったりするのって結局のところ、強くないと無理じゃね? 全員が主人公になれるわけでも、全員が主人公みたく悪に勝てるわけでもないじゃん。あーあ。ホントなにもかも面倒くさい・・・・・。かといって、自殺できるような勇気もないし、死ぬぐらいなら生きていたいしなぁ・・・・・・。などと考えていました。
すると其処へ、一人の少女が悲しげな表情でやってきました。息を切らせて、とても虚ろな目をしていました。まるで、この世界で生きるのがもう耐え切れない。そんな表情をしていました。
少年は不覚にも、その少女に見蕩れてしまいました。まるで、自分とは違う考えを持ち、自分とは違うなにかが彼女にはあるのだろう、と。
そして彼女は少年がいることに気づき、
「・・・・・・え~と、なに?」
「あ、ああ。別になんでも」
「女の子に聞かれたのに、別にって言うのは失礼だよ」
「・・・・・・そうか。なら、俺は月を見ていたんだよ。今日あたり満月らしいから」
「・・・・・・そう、君って曇ってても空が見えるんだ」
まあ、そんな出会いだった。
簡単でも、分りやすくもねえ・・・・・・。
それから俺があいつの事を“彼女”と称しているのは、あくまでShe的な意味だ。俺は彼女の名前を知らないし、彼女も俺の名前を知らない。まあ、知り合って3日目なのだから当たり前なのだろうか? ましてや、出会った場所が夜の公園で、お互い喋ってしかいないのだから当たり前なのだろう。
俺が呼ぶ、“お前”とか“おい”とかは――“おい”はあまり言わないけど――名前を知らないから、名前の代わりに呼んでいるのだけれど、彼女はそれをどう思っているのだろうか? と、考えないでもない。
いや。
むしろ考える。
俺は出会ったばかりの美少女と夜の公園で話す事ができて、嬉しくないわけでもでも嬉しくないわけでも、まして嬉しくないわけでもない。
3回は多かった。
俺は“君”と、あの綺麗な声帯の奏でる呼び名が僕は気に入っているのだけれど――一歩間違えれば変態だった――あくまでそれは俺の意見であって、彼女が俺のことをどう思っているのかは分らない。
本当、表情が笑っているとき意外は読めにくい女だ。
まあ、あいつが何も言ってこないなら、それでいいのかもしれなかった。
「そういえば」
唐突に話題を振られた。
面倒くさいけど、コノ俺が聞いてやろう。本当に面倒だ。どのくらい面倒かといえば、喉が猛烈に乾いているときに冷蔵庫に飲み物がなく、仕方なく近所のコンビニに出かけないといけない時ぐらい面倒だ。
つまり、とてもコメントに困るぐらい微妙な面倒くささだった。
「なんだよ?」
「なにニヤついているの? 気持ち悪いから話しかけないでくれるかな」
この女は、鬼だ。
俺は泣きながらベンチから立ち上がり、公園の出口へと歩いていった。