心喰の□□□
その人造生命体は人の心を糧にして生きるらしい。
だから僕は毎日自分の感情をあげることにした。
それを嫌がる人間も居そうな行為だが、わざわざそうしたのは丁度良いという理由もあった。今の自分には心なんてない方が良かったから。
「可哀想な■■■さん、まだお子さんも生まれたばかりだったのに奥さま共々あんなことに……」
「だからわざわざ、あの実験の被験者に立候補したのか。感情を糧にすると言っても、その他にどんな害があるか分かったものではないのにな」
周りにどんなことを言われようと、何も感じなかった。これも感情を食べさせているお陰だろう。嬉しいこともなければ悲しいこともない。だけどそれこそが今の自分が何よりも求めたモノだった。
自分の感情を与え始めてから半年程が経過したある日。
『ねぇ』
黒い大きな毛玉でしかなかった、ソレが初めてコチラに話し掛けてきた。
『アナタの感情はずっと悲しくて辛いものばかりだね。私に感情を与えてアナタは長く何も感じて居ないはずなのに、コレはほとんど変わらず薄らがない』
「そんなことが分かるのか……?」
『うん』
きっと会話なんてするべきではない。なのにその時の僕は、会話を止めて変化を報告するよりも、そいつと話続けることを選んでしまった。
『アナタは感情をくれたお陰でね、話せるようになったし色々分かるようになったよ……アナタの本当の望みもね?』
「……本当の望み」
『私なら叶えてあげられるよ。さぁ私に触れてご覧、アナタが大切なモノを何も失わなかった幸せな夢を見せてあげるから』
ここまで来てその声に抗うことなど出来なかった。いや、むしろ考えもしなかった。一番欲しいものをくれるというのに、なんで拒む必要があるのだろうか?
そうして黒い毛玉に触れると僕は深い深い眠りに落ちていった。
『ふふ、おやすみ……いい夢をね』
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「おい、■■■さんがあの黒い毛玉に取り込まれたって!!」
「オマケにアレが話せるようになったらしいけど!?」
「知ってる、それで事情を聞こうとしたらなんて答えたと思う?」
「なんて……?」
「それが『自分は彼に感情をくれたお礼をしただけ』だってさ」
「こっわ……」
「そういえば、あの噂は知ってる?」
「噂?」
「あの人造生命体って、どこかの廃神社から出てきた正体不明のミイラを使ってるらしいって」
「……流石にガセだろ」
「でも感情とかいう曖昧なものが必要だったり、今の様子を見てるとさ」
「……まさか、な」




