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第2話 ヤンキーをやめた理由は一途ですか?

 朝流されていたうわさも、放課後を迎える頃にはパンピー共のおかげもあって、うわさはほぼ消滅していた。

 流石はパンピーだな。ミーハー共め。

 ま、ミーハーは葉月もだけどな。

 付き合うやつの趣味が悪いらしいし。

 だがあいつはエロい雰囲気が苦手らしい。

 昔も恋愛ドラマのそういうシーンは普通に飛ばしてたしな。

 ま、そんなことはいいか。


「蒼葉、帰ろーぜ」

「え? ……えっ!?」

「おれとおまえはマブダチっつったろ」

「あ、ありがとう」

「おう。落ち葉女と葉月もいいか?」

「は、はい」

「いいけど……あんた、すごいメンタル強いのね」

「そうか? カチコミ入れられたときよりかはキツくねーぞ?」

「「「カチコミ?」」」


 え? これパンピーには通じねーの?

 そうか。じゃあそうだな……


「要するに、大したことじゃねーっつーこったな」

「かっこいい……」

「いやどんだけ達観してるのよ!? 馬鹿なの!?」

「なんだと? 口喧嘩なら買うぞ?」

「もみじくん、イチョウはそういう意味で言ったんじゃないかと……」

「そうか?」

「あ、申し遅れました。わたしは清和せいわ若葉わかば。あだ名は……」

「落ち葉だろ? 茶髪短髪メガネ女って呼ばれるよりかはマシだよな」

はじめくん、言い方ひどいよ……?」

「おれは口わりーからな! 先に謝っとくわ! わりぃな」

「気持ちいいくらいに前向きですね……」

「長途は放っておいて、ガールズトークしましょう?」

「なんだそりゃ」

「だってあんた、男じゃん」

「男の中の漢ってことか?」

「違うと思うよ、一くん……」

「なっはっは! まあいいや! 葉月! おめーが脱ヤンさせてくれたのは、感謝してる」

「勝手に辞めただけじゃん?」

「わたしは知らないんですが、なんで不良やめたんですか?」

「私も全部は知らないかも。教えて、一くん」

「いいぜ。あれは中学3年の頃――」



   ◆◆◆



 おれはあの頃、喧嘩に明け暮れてた。

 そんなときだった。

 葉月と再会したのは。


「あ! 葉月!」

「なんだ、一か」

「なんだって何だよ!?」

「いや、あんたも金髪なんだなって」

「お揃いは嫌か?」

「うん。特にあんたとは嫌」

「ははっ、それなら高校はおめーと同じとこ行ってやんよ」

「はぁ?」

「そんで脱ヤンする。髪色は何がいいと思う?」

「緑をベースに、赤も入れちゃえば?」

「おー、派手でいいじゃねぇか」


 馬鹿だったおれは、中学は男子校を選んだ。

 だけど、それはもうやめだ。

 勉強から逃げてちゃ、おれは成長できねぇ。

 だから、


「あ、そうだ。勉強教えてくれ! 葉月!!」


 真正面からぶっ壊さねーとなあ!!

 

「いいけど、あたしも勉強得意じゃないから」

「そうか。そういやおめー、まだ恋愛ドラマばっか観てんのか?」

「うん。あ、そうだ。高校では、長途って呼ぶから」

「ならおれは、おめーにあだ名つけてやんよ。金髪で葉月だろ? 『イチョウ』とかどうだ?」

「あんたのセンスにしてはマシな方ね」

「ほっとけ!」


 こうして、葉月のあだ名が生まれたんだっけ。

 

「じゃあ、おれんちでやっか?」

「あたしの家でいい。家はわかるでしょ?」

「近所だぜ? 知ってるに決まってんだろ。おれの家からでも、歩いて数分で着く」

「そう。ところで、蒼葉ちゃん覚えてる?」

「……あー、誰だっけ?」

「ひっど! あの子も幼馴染でしょ!」

「つっても、会ってねーしなぁ」

「あんたに会いたがってたから、どうせならみんなで同じ高校いきましょう?」

「おう」


 こうして、最初は葉月と二人で勉強してた。

 けどよぉ、葉月はいつも途中から、ドラマ見始めやがるんだ。


「おい! ドラマ観んのやめろ!」

「だって暇じゃん」

「勉強しろっつーんだよ!!」

「飽きちゃった」

「しゃーねぇな。蒼葉呼べ」

「……わかった」


 このときの葉月は多分、本気でおれが高校行けるとは思ってなかったんだろうな。

 だけど、蒼葉を呼んだ途端に本気なのがわかったのか、BGMとしてドラマを流しながら勉強するようになった。

 ちなみに、蒼葉と久しぶりに会ったときは……


「一くん?」

「おう」

「ワイルドになったねぇ。私も染めようかな?」

「おめーは綺麗な黒い髪だ。その髪型も似合ってる。道を踏み外してねーやつが、わざわざ道を踏み外す必要はねーよ」

「う、うん。やっぱり変わらないね!」

「そうかぁ?」

「よかった。蒼葉が不良になっちゃうとこだった!」

「おめー、それ自分が道踏み外してるってことだぞ?」

「事実そうじゃん?」

「まあいいけどな。蒼葉!」

「はい!?」

「なに緊張してんだ? 勉強教えてくれ!」

「うん、いいよ!」


 ……っつー感じだった。



   ◆◆◆



「つーことだ。脱ヤンは葉月と人として付き合うっつーか、葉月と関わりを持つためにやった。女のケツ追っかけるんなら、女の評判は落としたくねーかんな」

「ね? 勝手に辞めただけだったでしょ?」

「一くん、一途なんだね」

「昨日言ったろーが」

「うん。でも、私も諦めないよ」

「諦めろ。葉月に罪を被せようとしたこと、まだ許してねーから」

「うん……」

「だがな、本性を明かしたやつってのは、表裏もなくなる。ここから挽回してみろ」

「うん!」

「あのー、わたしは?」

「わりぃけど、よく知らねー。だから、これから関わっていくか?」

「は、はい! お願いします」

「それじゃあ、趣味は?」

「少女漫画を読むことですかね。恋愛漫画と言いますか……」


 この落ち葉女……

 いい趣味してんじゃねーか。


「一つ訊いてもいいか?」

「は、はい!?」

「あのよぉ、なんで少女漫画って、ラブコメと違って付き合ったあとも描くんだ?」

「それは、ターゲット層の違いですね」

「……っつーと?」

「所謂ラブコメは、男性向けの傾向があります。個人的な見解だと、男性は付き合うまでのドキドキ感を重視するんです。それはもちろん女性も同じでしょうけど、少女漫画だとすぐ付き合う漫画が増えているのです。これは、両思いになった先などを――――」

「なるほどな。要するに、男は恋に飢えていて、女は愛に飢えてるっつー感じだな」

「言い得て妙ですね」

「な、なんだって?」

「一くん、言い得て妙ってのは、『うまい言い方ですね』っていう意味だよ」

「な、なるほど……。じゃあ、おれたち3人はこっちだから、じゃあな落ち葉」

「はい! また語り合いましょう!」

「おう!」


 こうして、落ち葉女と仲良くなった。

 

「それにしても、3人で帰るのは久しぶりだな!」

「それより、自転車置いてきたけどいいの?」

「チャリなら大丈夫だ! 明日は久々に、歩いて登校すっかな」

「なら連絡先登録しようよ!」

「おっ、いいなそれ。蒼葉はえらいな。腹黒いけど」

「そういういじり方は……」

「ありがとう、一くん」

「……ま、本人がいいならいいけど」


 こうして、蒼葉と連絡先を交換する。


「ありがとう!」

「おう。じゃ、葉月もすっか?」

「一応しといてあげる」

「おう、すまねぇな」


 葉月とも連絡先を交換した。

 これでおれも、やっとパンピーらしくなってきたか?


「あ、そうだ。ゴールデンウィーク、どっかに行かねぇ?」

「いいよ!」

「あたしパス」

「おめーは相変わらず協調性がねぇな」

「いや、撮り溜めしてたドラマ観たいから……」

「なら、葉月んち集合な!」

「いいね、それ!」

「よくないから!」

「じゃ、ゴールデンウィークは葉月んちで過ごそうぜ。流石に泊まり込みはマズいから、おれは毎日通うわ」

「相変わらず自分勝手なんだから……」

「でも、結局イチョウちゃんも、最終的にはいつも納得しちゃうんだよね」

「じゃあな! 休み初日の10時に行くわ!」

「来んなし」

「うん! 楽しみにしてるね!」

「はぁ、この二人は……」


 こうしてゴールデンウィークの予定が決まった。

 恋愛ドラマを葉月と観るのは久しぶりだ。

 そんなふうに、おれはゴールデンウィークを密かに楽しみにしてるのであった。

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