第5話 新たな情報
「いつもありがとうございます!! 銀貨8枚です」
そう言われて、銀貨8枚を受け取る。本当ならこの金で新しい武器を買いたいところだが、ユナと約束してしまったからな。仕方ない。この金は別に使うか。
防具を買おうと思ったが、銀貨8枚ならフルセットを買うことができない。
「銀貨8枚じゃ、防具一式なんて夢のまた夢だな」
革鎧の端切れでも買えれば御の字だが、肝心な胴当てすら足りない。半端な装備を揃えても、次のダンジョンで役に立たないだろう。
「中途半端に防具を揃えるよりは、別の使い道を考えた方がいいかもな」
そう思いながら市場を歩いていると、露店の一角に古びた本屋が目に入った。埃をかぶった革表紙の本が並び、どれも人目を引かないような地味な雰囲気だ。
「……本か」
正直、俺は本なんて滅多に読まない。だが、棚に立てかけられた一冊の背表紙が目に留まった。
《魔法図録 第三版》
《冒険者ギルド・初級心得》
……なるほど。魔物やギルドの仕組みを解説した本らしい。銀貨8枚じゃ装備は買えないが、本なら何冊かはいける。
立ち読みしてみると、依頼の受け方から素材の換金率、さらには討伐証明部位の取り扱い方まで細かく書かれている。俺が知らなかった情報も多い。
「悪くないな」
銀貨8枚を数え、二冊まとめて店主に差し出した。
店主に本を包んでもらってから家へ戻った。
椅子に腰を下ろし、早速《冒険者ギルド・初級心得》の方から開いてみる。
「へぇ。討伐証明部位って、提出するとき血を拭いて乾燥させておかないと減額されるのか。知らなかった……」
今まで泥付きや血まみれのまま提出して、換金額が妙に低かった理由がようやく分かった。ページをめくるごとに、小さな知識の欠片が積み重なっていく。
次の章を開いてみる。
「なになに。この世界には――《七聖》と呼ばれる最も強い七人の冒険者が存在する、だと?」
彼らは全てのランクを超越した存在で、国家すら凌駕する力を持つらしい。魔王の軍勢を一人で退けた者、千の魔物を討ち滅ぼした者、ただ一振りの剣で山を裂いた者……伝説のような逸話ばかりだ。
「……七聖、ね」
その名前の下には、小さな注意書きがあった。
《七聖はギルドによって正式に認定された者のみを指す。その称号を持つ者は、冒険者の頂点である》
どうやら、冒険者としての究極の到達点が「七聖」らしい。俺なんかが夢見るのもおこがましい存在だ。
ページを進めると、さらに様々な情報が載っていた。
「ふむ。ダンジョンってのは、魔物の住む世界と繋がってるのか」
どうやら、俺たちが潜っているダンジョンは単なる地下迷宮なんかじゃなく、魔物の世界と地続きになっている“裂け目”らしい。ただし、こちらから魔物の世界へ侵入することはできないという。
さらにページをめくる。
《冒険者ギルドのランク制度》
冒険者のランクは、Dから始まり、C、B、A、そしてSまで存在する。依頼の受注や報酬の上限も、このランクで大きく制限される。
《七聖はSランクの頂点に位置する者であり、実質的にはSランクをも凌駕した存在である》
「……俺はまだDランクだもんな」
次に《魔法図録 第三版》を手に取る。中を覗けば、火球や治癒魔法といった基本から、珍しい補助魔法まで網羅されている。
ページを繰ると、序章に大きくこう記されていた。
《この世界に存在する魔法は、七つの属性に分類される。人間の多くは一属性か、せいぜい二属性に適性を持つ。》
「七つ?」
火、水、風、土、闇、光、そして雷。これが七属性と呼ばれる基本体系らしい。
指でページをなぞりながら、ふと思い出す。
「あ、そういえば――」
「《黒掌》を獲得してなかったな」
意識を集中させると、脳裏に淡い光のパネルが浮かぶ。光の幹を辿り、《黒掌》の枝に意識を伸ばす。
《スキルポイントを2消費して、スキル『黒掌』を習得しました――》
「よし、試しに打ってみるか」
俺は椅子に深く腰を沈め、掌を前に差し出す。意識を集中させ、筋肉の奥から黒い力を引き出すように心を込める。
すると、掌の先から闇のように濃い影が渦巻き、宙に淡く揺らめいた。
「……お、出た」
影がふわふわと宙に漂うのを見て、俺は思わず首を傾げた。
「……なんか、しょぼくね?」
「よし、ここは思い切って、俺の魔力を全部入れてみるか」
呼吸を整え、体中の魔力を掌に集中させる。胸の奥から力が湧き上がり、全身を熱く駆け巡る。掌の中で闇が渦を巻き、先ほどのふわふわした影がみるみる形を変えていく。
本のページがパラパラとめくれていき、偶然にも《闇属性》の説明ページで止まった。
《闇属性――その力は、他属性に比べて魔力を込めれば込めるほど強力に作用する。ただし、制御を誤れば暴走しやすく、周囲に予期せぬ影響を与えることもある。魔力の調整は慎重に行うこと。》
「……え?」
思わず声が漏れた。つまり、俺が今やろうとしているのは――
「……やば、ちょっと力入れすぎたか?」
慌てて魔力を抑えようとしたが、もう遅い。掌から放たれた黒い渦は天井を突き抜け、軋む木材をかすめて大きな穴を開けた。
「……やっちまったな」
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《名 前》 レン
職業・・・戦士
レベル・・・15
体 力・・・50+10(60)
魔 力・・・250
攻撃力・・・15
耐久力・・・10
素早さ・・・15
知 力・・・20
固有スキル・・・スキルツリー
所有魔法・・・鑑定眼、黒掌




