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俺のステータスが留まることを知らない  作者: 軌黒鍵々


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第3話 幼馴染

 ブラックウルフの毛皮を抱えて、俺は街の中央にある交換所へ足を運んだ。

 ここで魔物素材を売れば、多少なりとも金になる。装備の修理代や次の探索資金を考えると、稼げる時に稼いでおくしかない。


「……っと、結構混んでるな」


 窓口には冒険者や行商人が列を作っており、喧噪が絶えなかった。

 その中で――俺の目は、ひとりの少女の背中に釘付けになった。


 黒髪を揺らしながら、鑑定員に話しかけている。

 腰には銀糸で編まれたローブ。背中には、回復士特有の魔法杖。

 その姿に見覚えがないはずがなかった。


「……ユナ?」


 思わず声が漏れる。


 彼女が振り返る。


「……レン?」


 一瞬、彼女の顔に驚きが浮かび、次いで柔らかな笑みが広がる。


「やっぱり、レンだ! 久しぶり!」


 ユナ。俺の幼馴染で同じ冒険者だ。

 俺とは違って才能があった彼女は、今や《黒影の朧》――ギルドランキング4位に君臨する強豪ギルドの一員。

 そして、回復士として名を馳せる存在だ。


「……ユナ。こんなところで会うなんてな」

「うん。今日はギルドの仲間に頼まれて、素材を納品に来たんだ」


 彼女の手元に置かれた素材は、俺のブラックウルフの毛皮なんかよりもずっと希少で高価そうなものばかりだった。

 差は、歴然だった。


「アレンはまだ冒険者、続けてるんだね!」

「あぁ、なんとか……な」


 幼馴染でもその台詞には傷つくぞ...。


「その剣でよくここまで戦ってこれたね。」


 ユナの視線が俺の腰のロングソードに向いた。


「こんなんじゃすぐに壊れるよ」

「……は?」


 思わず聞き返す。俺のロングソードは、中古屋で必死にかき集めた金で買ったものだ。


 確かに錆は浮いてきているが、まだ戦えると思っていた。


「見たら分かるよ。刃こぼれだらけだし、鍔も歪んでる。下手したら次の一撃で折れるかもね」


「……マジかよ」


 頭を抱えたくなった。

 これが壊れたら、俺にはもう戦う手段すらなくなる。


「ねえ、試しに鑑定してみなよ」


「……武器に? そんなことできるのか?」


 驚いて声が裏返った。今まで鑑定って、てっきりステータスとか人にしか使えないもんだと思っていた。


 ユナは軽く笑みを浮かべる。


「当たり前でしょ。素材も装備も、みんな鑑定して価値を調べるんだよ。冒険者なら常識よ?」


「……マジか」


 完全に初耳だった。

 慌てて意識を集中し、腰のロングソードに《鑑定眼》を発動させる。


《ロングソード(中古) 耐久値:9/100

 品質:低級

 特殊効果:なし

 備考:金属疲労が進行。次の強打で破損の可能性あり》


「……お、おいおい……マジかよ」


 頭を抱えた。まさにユナの言った通りだった。

 今まで気付かずに戦ってたのが奇跡だ。


 頭を抱える俺を見て、ユナはクスクスと笑った。


 いや、笑いごとじゃねえって……。


「これ、次で折れるんだろ? どうすんだよ……」


「じゃあ、新しいのを手に入れましょうよ」


「……でもどうやってだよ。言っておくが、俺には金なんてないからな」


「違うわ。ダンジョンに行って素材を手に入れるのよ」


「ダンジョン……?」


「そう。素材を集めて鍛冶師に加工してもらえば、むしろ市販品より強い装備になることだってあるんだから」


「……はぁ。で、挑むダンジョンって……初心者用のD級ダンジョンとかだよな?」


 俺が期待を込めて尋ねると、ユナはにっこり笑った。


「B級ダンジョンよ?」


「………………は?」


 俺は思わず耳を疑った。


「ちょ、ちょっと待て。B級って……あれだよな? ベテラン冒険者がパーティ組んで挑むような、洒落にならん場所だよな? 俺の剣、さっき鑑定した通り耐久値9なんだぞ!? もう卵の殻レベルなんだぞ!?」


「大丈夫よ。私がいるから」


 さらりと即答するユナ。


「いやいやいやいや! B級だぞ!? A級のその次に危ないランクだぞ!?」


「レン、落ち着いて。考えてみてよ。私、《黒影の朧》所属の回復士ユナ。ギルドランキング4位の実力者。ね?」


「……だから余計に怖いんだよ! お前の基準に俺を巻き込むな!」


「大丈夫大丈夫。レンは私が守るから。幼馴染割引でね?」


「割引ってなんだよ!? 割に合ってねぇだろ!」


 周りの冒険者たちがこちらをチラチラ見ているのが分かる。

 完全に俺が駄々をこねてるみたいじゃねえか……。


……こうなったら、こっそり鑑定だ。ユナがどのくらい本気なのか、確かめてやる。



 《名 前》 ユナ

 職業・・・ヒーラー

 レベル・・・52

 体 力・・・150

 魔 力・・・800

 攻撃力・・・10

 耐久力・・・30

 素早さ・・・150

 知 力・・・80

 固有スキル・・・本人以外は確認不可

 所有魔法・・・本人以外は確認不可


「………………」


 思わず鑑定結果を二度見した。

 魔力800とか、どうなってんだよ……。


「レン?」


 俺の魔力値、たしか……えっと……二桁だったよな?


「レン?」


 ユナが首をかしげて、俺を覗き込んでくる。


「あ、あぁ。お、おぉ……! ちょっとこっちも準備があるからな! じゃ、じゃあ……3日後だ! 三日後、東門前で合流ってことで!」


「じゃあ、3日後ね」


 笑顔で手を振って立ち去っていくユナを見送りながら、俺はその場にへたり込みそうになった。


「三日……三日か……。武器、金、心の準備……どれも足りねぇ……!」


 床に額をぶつけそうな勢いで頭を抱えつつ、俺はふと思い出した。


(そうだ……スキルツリー! 伸ばせば多少はマシになるはず……!)


 俺は慌てて意識を集中し、自分のスキルツリーを出現させる。


 今俺が取れて、使えそうなスキルは...


「あれ?」


 目の前に浮かぶ光の枝を見て、思わず声が漏れた。


(……この前見た時、確かにあったはずだ。《鑑定眼》の枝が……なくなってる?)


 慌てて光の幹をたどってみるが、どこを探してもそのアイコンは見当たらなかった。

 代わりに、枝の先に別のスキルが新たに芽吹いている。


「なるほど……そういうことか」


 俺は思わず唸った。

 一つスキルを選択すると、残りの選択肢は霧のように消えて――代わりに、次の分岐へと進む。

 つまり、すべてのスキルを取ることはできない。

 一本道を、己の意思で選び進まなければならない仕組み……。


「まるでルート選択ってやつだな……」


 光の幹を見上げる。

 《体力強化Ⅰ》から伸びた三本の枝のうち、俺が取らなかった《攻撃力強化Ⅰ》と《防御力強化Ⅰ》はもう見えない。

 代わりに、新しい枝が芽吹いている。


《魔力上昇Ⅰ 必要スキルポイント:2》

《スピード上昇Ⅰ 必要スキルポイント:1》

《シャドウハンド 必要スキルポイント:3》


「……シャドウハンド?」


「魔法系……いや、影の……手?」


 アイコンに意識を向けると、光の枝が淡く震え、《説明》の文字が浮かんだ。


《スキル:黒掌シャドウハンド

 分類:影属性/補助

 効果:自分の影を具現化し、もう一本の「手」として操る。

 制限:影の強度は魔力に依存。

 備考:応用次第で攻撃・拘束・探索に使用可能》


「……まぁ、B級ダンジョンに挑むんだったら、一つくらい魔法は必要だよな」


 俺は額に手を当て、深く息を吐いた。

 剣が折れる寸前。防御力は雀の涙。ユナの回復に頼り切るのは危険すぎる。


「よし……決めた」


 俺は意識を集中し、枝の奥に揺らめく黒掌シャドウハンドのアイコンへ手を伸ばした。

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