第2話 魔浪ダンジョン
魔狼ダンジョン。全15階層からなるD級ダンジョンだ。14階層までは余裕で突破できるが、問題は最後の15階層だ。
ブラックウルフ。速さと鋭い爪が特徴的な魔物。
体躯は通常の魔狼の二回りは大きく、全身を覆う黒い毛皮は剣をも弾く硬度を誇る。
そして何より厄介なのは――群れを統率する知能を持っていることだった。
《感覚共有》チームを統制するギルドリーダーなら誰もが欲しがるスキルだ。
本当はもっと簡単なダンジョンに挑みたかったが、スキルポイントを得られなかったら時間と体力の浪費に終わる。逆にあまりにも攻略が難しいダンジョンだと俺が攻略することができなくなる。つまり強すぎず弱すぎないこのダンジョンが俺にピッタリというわけだ。
「できるだけ早く討伐したいところだが...」
すでに14階層までは突破している。残るは15階層。ここまでで1スキルポイントは獲得済みだ。できれば、ここでもう1ポイント稼ぎたい。
「……近いな」
魔物の気配がする。近づいていくと3匹のブラック・ウルフが姿を現した。俺はロングソードを構え、敵の攻撃に備えた。
ロングソードの強みは長さを活かした間合いの制圧と重みを乗せた破壊力。
逆に弱みは重量による取り回しの鈍さと、狭い場所での扱いづらさ。
つまりは素早く小さい敵とは相性が最悪ということになる。――だが、それは…ロングソードに何も施さない場合だ。
もし、この剣に魔力を込めたら?
重さはそのままに、刃の振り抜きは軽くなる。圧縮された魔力が刀身を纏い、鋼鉄をも断ち切る刃に変わるのだ。
ロングソードの欠点を補い、利点だけを強化した一撃――それこそが俺の戦い方だ。
ブラック・ウルフたちは牙を剥き、低く唸り声を上げながら同時に飛びかかってきた。
一匹は正面から、もう一匹は側面から、そして最後の一匹は背後を狙って回り込む。
「群れで狩るのは狼の本能か……だが――」
俺は魔力を纏わせたロングソードを振り抜いた。刃が迫る一匹を斬り裂く。硬度を誇る黒毛も、魔力を込めた刃の前では紙同然だった。
問題はここからだ。
ブラック・ウルフは《感覚共有》によって仲間の経験をそのまま共有する。つまり、いま俺が放った斬撃は全員が体感したということになる。二度目は通用しない。
残る二匹は間合いを測り、迂闊に飛びかかってこようとはしなかった。――あきらかに、最初の一撃を学習した動きだ。
二匹のブラック・ウルフが同時に弾けた。
俺はロングソードを横薙ぎに振り抜いた。魔力を纏った刃が一匹の爪を弾き飛ばす。
――しかし。
もう一匹の爪が、俺の防御の死角を抉るように迫ってきていた。
気付いた瞬間には遅く、鋭い痛みが肩口を走る。
「ぐっ……!」
さすがにノーダメで攻略は難しいか...。体力強化Ⅰのおかげでなんとか致命傷は避けれた。
――痛みをこらえ、俺は踏み込み直す。
二匹のブラック・ウルフは、再び牙を剥き、爪を振り上げて襲いかかってきた。
だが、俺はもう一度同じ方法では斬れないことを知っている。
ロングソードに込めた魔力を最大限に圧縮する。刃先から閃光のような斬撃が放たれ、空気を裂く音が響いた。
魔力の斬撃――物理では届かない距離の敵にも届く。正面の一匹の胸を打ち抜き、衝撃で吹き飛ばす。
なんてかっこよく言っているがこれは剣術において基礎中の基礎。何もできない俺にとっては奥義みたいなものだけど。
《スキルポイント獲得 合計ポイントが2になりました》
お、やっと来たか。
――スキルポイントが2になったところで、俺は呼吸を整えながら意識を集中させる。
光の幹を辿り、《鑑定眼》の枝に意識を伸ばす。
《スキルポイントを2消費して、スキル『鑑定眼』を習得しました――》
ん? なにか変わったか?? 別に何も変わってないような...。スキルってこういうものなのか...? 自分でも鑑定してみるか。
心のなかでそっと呟く。
《名 前》 レン
職業・・・戦士
レベル・・・12
体 力・・・50+10(60)
魔 力・・・20
攻撃力・・・15
耐久力・・・10
素早さ・・・15
知 力・・・20
固有スキル・・スキルツリー
「これが俺のステータス...」
なるほど。全くわからん。
ステータスの基準を知らないからこれが高いのか低いのかわからない。どうせ、自分のことだし低いんだろうけど。
「とりあえず、無事に鑑定眼をゲットしたことだし、ブラックウルフの毛皮でも売りに行くか」
俺はブラックウルフの毛皮を回収して地上に戻った。
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《名 前》 レン
職業・・・戦士
レベル・・・12
体 力・・・50+10(60)
魔 力・・・20
攻撃力・・・15
耐久力・・・10
素早さ・・・15
知 力・・・20
固有スキル・・スキルツリー




