第14話 ギルド結成
「とりあえず、ギルドを作るにはメンバーとお金ね」
メンバー? ギルドにそんな決まりがあるのか。知らなかった...。
「ギルドを作るには規定があるのか?」
「当たり前でしょ。最低でも三人以上のメンバーと、登録資金五十万ゴルド。それに、ギルド本拠地も必要なの」
「ご、五十万……!? 高っ!」
ユナはさらりと言うが、俺の財布事情はそんなに軽くない。
グレンの残した金はまだ多少あるとはいえ、全部突っ込めば残りはほぼゼロだ。
「……三人以上、か」
俺は腕を組み、考え込んだ。
「私が一人でしょ。レンが二人目。あと一人――」
その時だった。
背後の路地から、荒々しい声が響いた。
「――ユナァッ! 何勝手に抜けてんだッ!!」
振り向くと、黒ずくめの男たちが三人、こちらへと歩いてくる。胸には〈黒影の朧〉の紋章。筋肉質な体に短髪、額の傷がやけに目立つ。
「お前……黒影の朧を勝手に抜けるとか、どういうつもりだ?」
ユナは小さく舌打ちした。
「……どうだっていいでしょ? 抜けるかどうか判断するのは私に権利があるんだし」
...。誰だコイツ?
「コイツは?」
「黒影の朧の分隊長、ゼノ。短気で喧嘩っ早いけど、腕は確かよ」
腕は確か、か。それなら是非とも俺のギルドに入ってもらいたいところだな...。
「よし、こうしよう――今からお前と勝負だ。お前を倒せたら、ユナは俺の物だ。ついでに、お前も俺のギルドに入って来い。ちょうどメンバーが一人足りねえんだ」
「はあ……レン、本気で言ってるの?」
ユナは眉をひそめる。
「ふん。お前みたいな雑魚が、俺に勝てると思ってんのか? 面白ぇ。いいだろう。条件はそれで──ただし一つ付け加える、勝ったらお前のギルドに入ってやるが、負けたらお前は二度と俺の前に出て来るんじゃねぇぞ」
「わかった。それでいい」
ゼノが鼻を鳴らし、ゆっくりと首を振った。
「ここじゃ場所が悪い――裏に行くぞ」
裏通りは昼間見るより薄暗く人通りも少ない。ここなら被害の抑えられるだろう。
俺は短剣の柄を軽く叩き、握り直す。
「よし、行こうぜ」
ゼノが構えを取る。分隊長というだけあって、かなり強そうだ。試しに鑑定してみるか。
《名 前》 ゼノ
職業・・・重戦士
レベル・・・32
体 力・・・200
魔 力・・・15
攻撃力・・・70
耐久力・・・40
素早さ・・・20
知 力・・・15
固有スキル・・・本人以外は確認不可
所有魔法・・・本人以外は確認不可
まさに“重戦士”って感じだな。
筋肉の塊みたいな体格、振るう武器は両手でも持てそうにない巨大なバスターアックス。
攻撃力70――一撃でも食らえば即戦闘不能、間違いなく死ぬ。
でも、素早さ20なら……攻撃さえ当たらなければ、勝てる。
「へぇ、俺を前にして随分余裕そうじゃねぇか」
ゼノがにやりと笑い、アックスを肩に担ぐ。
「その顔、すぐ後悔させてやるよ」
俺は短剣を突き出し、膨大な魔力を込める。
「お前——戦士のくせに、こんな魔力を扱えるのか!? 何だその――!」
ゼノの言葉は途中でふさがれた。冷ややかな驚愕が、彼の顔を覆う。ゼノはすぐさま、両腕で巨大なバスターアックスを前に構え、防御の姿勢を取った。
「来いよ、小僧。真正面から叩き潰して――」
ゼノの言葉が終わるより早く、俺の右手が闇に沈んだ。
「《黒掌》」
空気が一瞬、音を失った。
次の瞬間、ゼノの足元から闇の腕が無数に伸び、彼の体を絡め取る。
「なっ――!? 動けっ……ぐ、ぐおぉっ!」
ゼノが唸り声を上げ、バスターアックスを振り上げようとするが遅い。
俺の掌が光り、凝縮した魔力が一点に集束していく。
「狙い通りだよ、ゼノ」
短剣を囮にして、奴の視線を封じた。その一瞬の隙が、命取りだ。
闇の腕が収束し、爆ぜるように放たれる。
――ドンッ!!
衝撃波が地面を割り、砂煙が爆発的に舞い上がった。
ゼノの巨体が後方へ吹き飛び、石畳に叩きつけられる。
「がっ……は、ぁ……」
アックスが転がり、地面に深々と突き刺さった。ゼノの防具は黒焦げになり、そこから煙が上がっている。俺は短剣を腰に戻し、手を差し出した。
「どうする? 約束だ。俺のギルドに来い」
ゼノは一瞬、躊躇したように俺の手を見つめ――そして、不敵に笑った。
「……フッ、悪くねぇ。面白そうだな」
「あ、あとついでに50万も払ってくれねえか?」
俺がさらりと言った瞬間――
「はああッ!? 誰がそんな大金持ってるかッ!!」
ゼノが勢いよく起き上がり、まだ焦げた鎧のまま怒鳴り散らした。
怒声が裏通りに反響し、スズメが二、三羽ほど飛び立つ。
ギルド結成にはまだまだ時間がかかりそうだ。




