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俺のステータスが留まることを知らない  作者: 軌黒鍵々


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第12話 仲間の盾、漆黒の拳

 ユナの絶対回復が全身に広がり、魔力がみるみる満ちていく感覚――これだ。今なら黒掌が、制御できる。


 「よし……黒掌、連打だ!」


 俺は手のひらに魔力を集中させ、掌から黒い光を迸らせる。黒掌――通常なら体力と魔力を限界まで消費する技だが、ユナの回復のおかげで、連続使用も可能になっていた。


 ひとつ、またひとつと黒掌がオークエンペラーの巨躯に炸裂する。掌撃の衝撃で、巨体がわずかに揺れ、土煙が巻き上がる。腕や脚を振り回すオークエンペラーだが、攻撃を黒掌で押し返すことで、リズムが崩れ始める。


 「ここだ、ユナ!」


 俺の声に応じ、ユナが回復魔力をさらに極限まで注ぎ込む。体力と魔力の回復が瞬時に行われ、俺の黒掌は更に威力を増す。黒掌が炸裂するたび、オークエンペラーの身体に亀裂が入り、砂利が飛び散る。


 連打する黒掌の勢いで、巨体は徐々に後退を余儀なくされる。通常なら避けられない一撃も、瞬間移動と黒掌の連打で押し切ることが可能になった。


 しかし、反撃の勢いが頂点に達したその瞬間――オークエンペラーの体が不自然に震え、口から低く唸るような咆哮が漏れた。


 「――ッ!?」


 黒掌の連打を止める暇もなく、強烈な衝撃波が周囲に放たれる。俺とユナは、魔力のバリアを張ったものの、その圧力に耐えきれず、吹き飛ばされる。


 「うっ……!」


 岩や柱を蹴り飛ばされながら、俺は地面に叩きつけられ、砂埃と小石に顔を叩かれる。ユナも同様に後方へ飛ばされ、痛みと衝撃に喘ぎながら地面に転がった。


 魔力が一瞬で乱れ、黒掌の連打は途切れる。オークエンペラーは、その巨躯を揺らしながらゆっくりとこちらを見下ろす。咆哮によって周囲の空気が振動し、衝撃波はまだ収まらない。


 俺は口を開き、咄嗟にユナの方を確認する。彼女もまた、地面に倒れたまま必死に息を整えている。魔力の回復があっても、この衝撃には完全には耐えられなかった。


 オークエンペラーの巨躯が、地面を揺るがす一歩ごとにこちらへ近づいてくる。まだユナは息を整えきれず、俺も痛みで体が動かない。瞬間移動の魔力すら、さっきの咆哮で乱れていた。


「くっ……!」


 思わず歯を食いしばる。黒掌の連打で一度は押し返したものの、あの咆哮ひとつで全てがリセットされてしまった。巨体の影が徐々に俺たちを覆い、振り上げられる腕が頭上に迫る。


「ユナ、まだ……動けるか?」


 かすれた声で問いかけるも、ユナは微かに頷くだけ。息を整える余裕もなく、顔に汗と埃が混ざり、全身が震えている。


 次の瞬間、オークエンペラーの腕が振り下ろされる――その振動が大地にまで伝わる。俺たちは逃げることも攻撃することもできず、ただその圧倒的な力に身を晒すしかなかった。


「くそ……! ここで倒れるわけには……!」


 そんな絶体絶命の時だった。オークエンペラーの巨体が、突如として小刻みに震え始める。振り下ろそうとした腕が不自然に止まり、頭を傾けるようにして何かに抵抗しているようだった。


「え……な、なんだ……?」


 俺とユナは互いに目を見合わせる。ユナもまだ息を整えきれていないが、その目にわずかな警戒と好奇が混ざる。


 すると、オークエンペラーの腹部が内側から突き上げられるように膨らみ、裂け目が走った。そこから何かが次々と飛び出して


 黒光りした生物や血の混ざった残骸が、まるで地面を蹴散らすかのように飛び出す中、俺は目を疑った。


 ――その中に、見覚えのある大剣を握った影がある。グレンだ。


「グレン……生きてたのか……!」


 俺の声が震える。あの絶望的な状況で、まさかあいつが――。


 グレンは顔を血と泥にまみれながらも、鋭い目でオークエンペラーを見据えていた。腹部から這い出しつつ、無理やり姿勢を整える。


「てめえ……俺の、大事な仲間になに手出してんだ!」


 その声は怒りに満ち、震える大地のような迫力を持っていた。まるでこれまでの絶望を一掃するかのように響く。


 グレンは大剣を握り直し、オークエンペラーの内側から一気に突き上げる。内側からの攻撃は外からの圧力と相まって、巨体を大きく揺らす。亀裂がさらに広がり、砂と血の飛沫が舞う。


「レン、ユナ……俺に任せろ!」


 グレンの体から黒い光が滲み出し、彼の周囲に重厚な魔力の波紋が広がる。その瞬間、俺たちの体が微かに浮き上がる感覚に襲われた。


 ――グレンの固有スキル、「鋼の誓約」だ。


 この能力は、仲間に向けられる攻撃の一部を自分が肩代わりし、さらに仲間の防御力を強化する魔法的盾となるもの。巨大なオークエンペラーの振り下ろす腕の衝撃も、グレンの魔力によって一部は彼自身に吸収され、残りの衝撃は軽減される。


 「くっ……! 俺の大事な仲間を、ここで傷つけさせはしない!」


 グレンの声に応じ、俺とユナは体に安定感を取り戻す。肩や腕にかかる力が軽くなり、魔力の流れも整い始める。


 さらに、グレンは腹部から突き上げるように剣を振るい、オークエンペラーの内側から弱点を抉る。攻撃の勢いと「鋼の誓約」の防御効果がシンクロし、俺たちは安全を確保しながら再び反撃の態勢を整えられる。


 グレンが仲間を守る盾となり、オークエンペラーの内側から弱点を突き続けるその隙に、俺は全身に黒掌の魔力を集中させた。ユナの絶対回復が後押ししてくれている今、全力で放つ時だ。


 俺は手のひらに魔力を集中させ、黒光が指先から掌へと渦巻く。振動と衝撃で乱れていた魔力も、ユナの回復とグレンの防御支援で完全に安定している。瞬間、黒掌が炸裂する力が全身に走り、俺の目はオークエンペラーの破壊された腹に固定された。


 「これで……終わりだ!」


 黒掌を腹部の亀裂に向けて叩き込む。掌から放たれた漆黒の衝撃が、オークエンペラーの腹を直撃する。内側から広がる亀裂に沿って魔力が炸裂し、体内の構造が無惨に崩れていく。


 巨体が揺れ、土煙と砂、血が飛び散る。振動が止まらず、地面が割れる音が戦場に響き渡る。オークエンペラーは最後の咆哮を上げながら、体を崩し、ゆっくりと崩れ落ちた。

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