エピソード 3ー2
回帰した悪逆皇女は黒歴史を塗り替える
コミカライズ2巻かなり好調で発売中
悪役令嬢のお気に入り
コミカライズ6巻だいぶ好調で発売中
乙女な悪役令嬢には溺愛ルートしかない
小説1巻は本日発売、たぶん大好評発売中
レイシャさんとの話し合いを終えた後、私は最奥にある屋敷へ戻った。そうして昼食をとりながら、ルミナリア様の朝のアーカイブを見る。
ルミナリア様は相変わらず魔獣を狩るゲームをしながら雑談をしていた。
『そうそう。それで、このゲームライクな箱庭を創ったんだ。それを迷惑を掛けた相手にあげたんだが、なかなかいい感じに仕上がっているぞ。……見てみたい? それも面白そうだな。いつか、みんなを招待するのも楽しそうだ』
ルミナリア様がそんな話をしている。
ちなみに、コメントを見る限り、そういうゲームを作ったのだと思われているようで、視聴者参加型ゲーム? なんてコメントがある。
でも、この箱庭って……私が管理してるダンジョンのことだよね。
……え? 異世界の人間を招待するの? 私のダンジョンに?
「……よし、聞かなかったことにしよう」
「なにを聞かなかったことにするって?」
背後から声を掛けられて飛び上がる。とっさに配信を消して振り返ると、そこにルミナリア様が立っていた。
「ル、ルミナリア様、絶対ノック、してないですよね?」
「いや、したぞ? おまえが、集中していると気付かないのではないか?」
「そうかなぁ……そうかも」
まぁいいや。それより、ちょうどよかったと、ルミナリア様に向き直る。
「ルミナリア様、実はイージーワール領の領主が関所を設けて、高い通行税を取り始めたんです。どうしたらいいと思います?」
「……ふむ。その領地を更地にするのはどうだ?」
「却下で! 被害が大きすぎます」
「馬車も通りやすくなるぞ?」
「そういう問題じゃないんです!」
出来るんですか? とは聞かない。だって、この世界を作った神様だし。
「もっと穏便な方法はありませんか?」
「なら、領主だけを暗殺するのはどうだ?」
「それは…………ダ、ダメですよ! 穏便にって言ってるじゃないですかっ!」
「いま、迷わなかったか?」
「気のせいです!」
いや、領地を更地にするのと比べればだいぶ穏便だなとは思ったけど。領主を暗殺するのは決して穏便な方法ではない。あと、このタイミングで暗殺したら、絶対私が容疑者だよ。相手にしなければいいだけなのに、そんなリスクは負いたくない。というか、嫌がらせされた程度で殺したいとは思わない。
だが、そんな反応を示す私を前に、ルミナリア様は不思議そうな顔をする。
「……話を聞く限り、そいつはアルステリア領に相当な嫌がらせをしているのだろう? なのに、おまえは相手を気遣うのか?」
「……ルミナリア様、世の中には限度って言葉があるんです」
私だって、イージーワールの領主に思い知らせてやりたい気持ちはある。でも、死んで欲しいと願うほどじゃない。
ましてや、私が願えば、確実に彼が死ぬのでなおさらだ。私は目頭を指で揉みほぐしつつ、「もう少し穏便な方法はないですか?」と尋ねた。
「……ふむ。穏便か。おまえがなんとかしたいのは、王都と交易するうえで、イージーワール領に通行税を取られる状況、ということであっているか?」
「端的に言ってしまえばそんな感じです」
「ならば、山をぶち抜けばいいんじゃないか?」
「……山を、ぶち抜く??」
なにを言っているんだろうと、私は首をかくんと倒した。
「トンネルを掘る、という意味だ」
「出来るん……ですよね」
「山脈を更地にするよりは楽だな。というか、ダンジョンマスターの機能を使えば、おまえもダンジョンの中に抜け道を造るくらいできるぞ?」
「……………………そっか」
ルミナリア様どころか、私にも出来るらしい。
……私、いつの間にか人外になってる予感。
非常識すぎて思いつかなかった。けど、ルミナリア様の言うとおりだ。山を潜ることが出来れば、王都まで安全かつ、最短でいくことが出来る。なにより、イージーワール領を通る必要がない。
でも……急にトンネルが出来たら大騒ぎになるわね。
じゃあ……ダンジョンの一部にしよう。最初からそういうダンジョンだった、という体裁。
そうすれば、ダンジョンの気まぐれ、幸運と言い張れるはずだ。
これで、イージーワール領の領主に煩わされることはない。迷惑なお隣さんと縁を切れる。
領主はもちろん、そこに所属するバルサズやグラセッド商会も大打撃だろう。
……やっぱり、心配する必要はなかったわね。
あえて言うなら、騒ぎが大きくなりすぎることの方が心配だ。もう完全勝利は確定なのだから、出来るだけ騒ぎが起きないように立ち回ろう。
たしか――と、私は預かっていたペンダントを引き出しから取り出す。
「なにか思いついたようだな?」
「はい。以前手に入れた伝手を当たってみます」




