フロントライン
Sクラスの教室は少し離れた棟にあるらしい。
「またずいぶんと…」
小さく文句を言いながら教室への廊下を歩く。
「あぁ…」
そう目を向けた先にあったのは…
1ーS
と書かれた札だった。
「ここか」
ドアを前にして立ち止まってしまう自分に苦笑しながらドアを開けた。
「おはよう」
その4文字だけを言い、中に入ると櫻井が手を振ってきた。
どのように反応すればいいかわからなかったが気持ちは伝わったらしい。
櫻井はにこにこしながら手を下ろした。
教室を見渡すと当たり前だが知らない顔が並んでいた。
人数は8人。そのうち2人は双子なのだろうか。髪色や顔がそっくりだが…
双子というのはあんなにも怖い目をするものなのか…?
そう思うほど片方は憎しみのこもった目をしていた。
観察をやめ自分の席に座ると、櫻井がすぐに話しかけてきた。
「ねぇねぇ!一緒のクラスだったね!」
前も思ったが、どうもこの娘は犬のようにはしゃぐ。
それも悪くないと思っている自分に少し驚いた。
「あぁ…」
それだけの返事をしていると教師が入ってきた。
「…全員集まっているな…担任の水越晶だ」
どうやら担任は試験の時のロボットのような男らしい。
相変わらず全く動かない顔で教室を見廻し彼は言った。
「まずは自己紹介だな。机を円にしろ。」
それを合図に8人は各々机を動かし始めた。
さほど時間もかからず並べられた時、もう一度彼が口を開いた。
「自己紹介が終わったら声をかけろ。次の指示を出す。」
それだけを言うと彼は自らのデスクへと向かっていった。