櫻井優羽という人物
「さて準備も済んだ…学校へ行くとするか…」
独り言を呟きながら部屋を出て教室へ向かう。
教室に入った途端少し面食らった。
普段は騒がしいクラスがまるで通夜のような雰囲気だったからだ。
まぁうるさいよりはマシだと思う。
ふと横の女子がおそるおそる話しかけてきた。
「あの…この部分ってこれで…」
「あっている…が…」
そう答えながらも私はこの女子が誰なのかを考えていた。このような女子はうちのクラスにいたのだろうか。
それが伝わったのだろうか彼女は突然自らの名を名乗り出した。
「あ…えっと櫻井…優羽です…見たことないかもしれないけど…あのほとんど…学校来てないので…」
なるほど…なぜ知らないのかと思ったが…
黙っているのも失礼なのだろうな…と自己紹介をしようと口を開いた時、それは聞こえた。
「…うーわ…あいつ学校来てるじゃん…それも龍宮寺さんに話しかけてる…」
「それな…身の程知れよって感じ…」
普通に考えてこれはいじめという奴なのだろう。まぁ私には関係ない。
自己紹介を…と開いた口は自己紹介とは無縁の言葉を放っていた。
「お前達に何が言える?身の程知らずはそちらではないのか?」
まさかこんなことを言うつもりはなかった。まさか…自分から他人のことに突っ込むとは…
自分自身が一番驚きながらも彼女達の反応を見る。
「え…あ…その…」
「いやでも…」
予想していた反応とそっくりだ。いざ自分が言われると全く反応できない。
これ以上関わるのも面倒だと思い、先ほどの彼女の方へ目を向け言うはずだった言葉を続けた。
「私の名前は龍宮寺蒼葉だ。」
すると彼女は驚いたようにこちらを見た後、へにょ…っと効果音がつきそうな笑顔でこう言った。
「よろしくね!」
これが私にとって初めての友達ができた瞬間になった。