第4話:ピカチューブ独占禁止法案、可決。リモコンの主導権は6歳が持つ。 〜議長、再生ボタンしか押さない〜
4話目です。
子供がリモコンを持つと、国の情報はスライムになります。
「昨日さ〜、パパがずーっとピカチューブ観てたんだって!」
議長(6歳)がランドセルからぬっと立ち上がると、
いきなり机をバンバン叩き始めた。
「大人のくせに独り占めとか、マジで無理じゃない?」
議員たち(6〜8歳):「それな!!」
ランドセルの中から投げられたのは、今日のわがまま。
折り紙の裏に、クレヨンで描かれていたのは──
【パパばっかみてる。ピカチューブわたしの。リモコンかして。ぜったい。】
色は黄色とピンクのみ。
端っこに「ゆびさきスライム実験みせろ」ってメモもついてた。
「よって、“ピカチューブ独占禁止法案”を提出しまーす!」
「さらに“リモコンは子供が正義制度”を制定希望!」
会議場、拍手。
主人公(俺・38歳)、発狂寸前。
「待ってください!!」
「ピカチューブは子供向けとはいえ、使用頻度・再生傾向・時間配分によっては──」
「パパはずっとおばけの部屋のやつ見てた」
「私も見たい」
「“やらせかもしれない”って言ってた。関係ない!」
「ニュースが! 知る権利が! リモコンの公平性が……!」
「ねえ、ニュースって楽しい?」
「……まあ、どちらかというと深刻ですね……」
「だったらいらないじゃん」
「わたしたちはピカチューブで生きてるんだよ?」
「まって、なんで名言っぽくなってんの……?」
可決。
画面が切り替わる。
会議室の大型モニターが、自動でスライム動画に変わった。
プチッ、プチュッという音が響く。
俺は静かに議事録を開いた。
わがまま第318号:「ピカチューブ独占禁止法案」、可決。
「なお、“リモコンを先に持った者が勝ち制度”も追加で施行しま〜す」
「テレビって、国のものじゃなくて、わたしのものだもんね〜!」
──今日も制度が、わがままでできていく。