第3話:夜ふかし自由化法案、可決。大人の就寝時間、撤廃へ。 〜議長、22時を知らない〜
3話目です。
「ねたくない」って言われたので、制度にしました。
今日も世界は、ちょっとずつ眠れなくなっていきます。
「あれ、なんか議長の様子が……」
朝の会議室に入ると、議長席には小さなランドセルだけが置かれていた。
中身は──寝てた。
議長、床に寝袋持参で爆睡中。
「……まだ起きないのか?」
「夜ふかししたらしいよ。3時まで“おばけのテレビ”観てたって」
それ、昨夜の再放送ニュースじゃん……。
会議開始、10分遅延。
議長は寝たまま、制度を提出した。
「今日のわがまま、これでーす……」
議長が寝ぼけながらポケットから出したのは、逆さまに折れた折り紙だった。
【ねない。ねたくない。おきてたい。】
文字はクレヨン、周囲に謎のコーンスープのシミつき。
議会、大爆笑。
主人公(俺・38歳)、絶望。
「賛成の方、挙手〜〜!」
全員、即挙手。
「待ってください!
睡眠は、脳の健全な成長と情緒の安定に不可欠です!
制度として夜ふかしを容認するのは──」
「じゃあ、昼寝すればいいじゃん」
議長、寝言。
「それな!」
議員たちが一斉に頷き始めた。
「しかも朝ってね、眠いじゃん?
だったら“学校を午後にする制度”も作っちゃおうよ〜」
「それ、“あそびのあとに勉強”ってやつじゃん!天才!」
世界が音もなく壊れていく中、俺は議事録を開いた。
わがまま第317号:「夜ふかし自由化法案」、可決。
「あと〜、今日から“おふとん拒否の権利”も発動しまーす」
「ねたくない人は、ねなくていい国にします!」
その言葉を最後に、議長は再び寝袋に潜り込んだ。
──今日も制度が、わがままでできていく。