第2話:ゲームしたいので、学校はやめます法案 〜議長、Switch片手に登庁〜
2話目です。
今回のわがままは「ゲームしたい・勉強したくない・もっと遊びたい」。
それ、制度にするな。
「えーっと……今日の議題は……あれ?」
議長席が、空っぽだった。
いや、正確には“空っぽに見えるだけ”だった。
「下だよバーカ! 机の下! 今レベル上げ中だから!」
ランドセルを背負った6歳の議長が、
Switchの画面に顔をくっつけながら怒鳴る。
見れば、彼は机の下に寝転び、
“学校やだもんロールプレイング”という謎のゲームに没頭していた。
どうやら、これも登庁扱いらしい。
会議は、始まっていた。
「今日のわがまま、出しまーす!」
議長がポケットから出したのは、クシャクシャの折り紙だった。
そこに、クレヨンで大きく殴り書きされていたのは──
【がっこういきたくない。べんきょうしたくない。ゲームしたい。】
周囲には、なぜか“がんばったねシール”とキラキラの星が貼ってある。
議長:「これ、制度にしてください!」
議員たち(全員6〜8歳):「賛成〜〜!!」
主人公(俺・38歳):「ちょっと待て!!」
「義務教育制度は、国の基盤です!
すべての国民に平等な学びの機会を──」
「でも、楽しくないじゃん?」
「……それは、まあ、そうですけど」
「だったら、やめれば?」
「えっ」
「やなこと、なくなるよ?」
「それは……いや、でもそれだと……!」
「ねーねー、“楽しくないもの”ってさ、
全部“学校”って名前にすればいいんじゃない?」
沈黙。
議員たち:「天才か!!」
議員たち:「決まり!!」
議員たち:「俺、今日から“食器洗い”は学校って呼ぶ〜!」
「じゃあ今日は解散でーす!
ゲームしたい人は、このあと“自主的に”集まってください!」
「宿題は?」
「ないよ。だって、それ学校だもん。」
全員が拍手して退場。
議長はSwitchを布団に見立てたクッションに突っ込んで寝始める。
俺は、黙って議事録のファイルを開いた。
わがまま第316号:「たのしくないもの」の廃止。可決。
その下に、今日も折り紙の切れ端が貼られていた。
──今日も制度が、わがままでできていく。