第12章 テレビ独占延長法案、可決。〜議長、リモコンは命より重い〜
12話目です。
「いまの、ぜったい見たい」って言われたので、制度にしました。
今日も世界は、ひとつのリモコンに支配されていきます。
「そのリモコン、さわるなーーーっ!!」
怒号と共に議長が椅子の上からダイブした。
その手には、しっかりと握られたテレビのリモコン。
画面には、なぜか4周目のプリキュア再放送。
「今日のわがままは、これだぁぁぁぁ!!」
画用紙が空を舞い、テレビの前に着地する。
【みたいとこ、おわるまで、リモコンさわるな。】
委員たちはざわつく。
「つづき、まだなのにパパがニュースにかえた!」
「わたしのアニメなのに、弟が戦隊モノにした!」
「じいちゃん、ずっと時代劇……!」
この国最大のメディア戦争、それが“リモコン争奪戦”だ。
「異議あり!」
俺はリモコンではなく、書類を握りしめて主張する。
「テレビ視聴の独占が常態化すると、家庭内における公平性が失われ、
チャンネル権を持つ者の支配構造が固定化され──」
「だって、みたいのいまなんだもんっ!!」
「……ですよねぇ!!」
ここでは、今すぐ見たい気持ちが“民主的正義”とされる。
全員がチャンネルを譲らないのではない。
“私が譲りたくない”のだ。
「じゃあ決定〜〜! リモコン独占、最優先で〜〜す!!」
議長はリモコンをポーチに収納し、チャックを二重に閉めた。
俺はそっと議事録に記した。
わがまま第326号:「テレビ視聴の独占延長」可決。
書類の上に、番組表の切れ端と使用済みの電池が並べられていた。
──今日も制度が、わがままでできていく。




