第1話:おやつ制度改革会議、開廷。議長は小学1年生です。
※ゆるギャグです。
世界観が少しおかしいだけで、みんな真面目です。
子供の「やだ」で制度が動く国で、大人たちは今日も頑張って働いています。
読みながら「いやそれおかしいだろ」って思っても、
この国では正しいのでご了承ください。
「静粛にーっ! おやつ会議を始めまーす!」
そう叫んだのは、この国の最高議会──
わがまま制度委員会の議長、年齢6歳。
ランドセルを椅子にひっかけて、なぜか両足で机をドンと踏んだ。
その姿に、40代の元官僚やムキムキの元傭兵たちが直立して深々と頭を下げる。
もちろん、俺もだ。
38歳、おやつ庶務長。
今日も俺の仕事は──
**“子供のわがままを、制度にすること”**である。
「今日のわがままは、これ!」
議長がドンと机に置いたのは、クレヨンで殴り書きされた一枚の画用紙。
【おやつ、たべたいときにたべたい。】
委員たち(年齢6〜8歳)は一斉に「わかる〜!」と叫び、
拍手してチョコを取り出して食べ始めた。
会議中である。
でも、ここではそれが法の起点になる。
「異議あり!」
俺は手を挙げて、資料をめくる。
「現在の“おやつ時間法”は、
一日1回、午後3時を基準とした統一配給ルールです。
それを“食べたいときに自由に”に切り替えた場合、
一人当たりの摂取回数が平均3.4回に増加。
それにより、国家予算はおやつだけで年間3,200億円超となり──」
「でも、たべたいもん!」
「……ですよねぇ!」
それがこの国の原理だ。
“わがまま”こそ、最も尊い価値。
理由なんかいらない。
そこに“やだ”があるなら、それは通すしかない。
「じゃあ決定〜! 今日から“自由おやつ制度”開始で〜す!」
全員が拍手して、会議は2分で終了した。
議長は机の下で寝始めた。
横の委員がバナナを半分くれた。
俺はそっと議事録にこう記した。
「本日、わがまま第315号、可決」
──今日も制度が、わがままでできていく。