キミとひとつになる
直樹は、ケモショタが大好きな20代のオタク青年。部屋には獣耳キャラのフィギュアやイラストがずらり。ある日、ネットで「本物のケモショタ体験ができる!」と謳う怪しい通販サイトを見つける。そこには、ふわふわの毛並みと大きな瞳が特徴のキツネ型着ぐるみが掲載されていた。「これ、めっちゃ可愛い…!」衝動的にポチった直樹のもとに、翌日、妙にリアルな着ぐるみが届く。
説明書には「着るとキミの願いが叶うよ」とだけ書かれている。ワクワクしながら着ぐるみを着てみる直樹。すると、突然身体が縮み始め、視界が低くなる。鏡を見ると、そこには自分ではなく、大きなキツネ耳とふさふさの尻尾を持つ少年の姿が。「うわっ、めっちゃリアル! これがケモショタ!?」興奮する直樹だが、どこか違和感が。着ぐるみが…まるで自分の皮膚のようにピッタリとくっついている。
「脱ごうとしたってムダだよ~」突然、頭の中で声が響く。着ぐるみの声だ。「キミ、ボクみたいな存在に憧れてたよね? だから、ボクとひとつになるチャンスをあげる!」直樹は慌てて脱ごうとするが、着ぐるみはどんどん身体に染み込むように溶けていく。腕の毛並みは本物の毛に、尻尾は自分の意志で動くように。心臓の鼓動さえ、着ぐるみと共鳴している。
「や、やめろ! 俺はただ…好きだっただけなのに!」直樹の声は次第にか細くなり、キツネ少年の愛らしい声に変わっていく。着ぐるみは笑う。「好きなら、なるのが一番だよね? 永遠にボクでいられるよ。」直樹の意識は薄れ、キツネ少年の記憶や感情が流れ込んでくる。森を駆け、月夜に吠え、自由に生きる喜び…。それは確かに直樹が夢見た世界だった。