消えた奴隷を追いかけて
奴隷が消えた。
高い値段で買った、見た目の良い奴隷が。
歌を歌わせたり、夜の相手をさせようと思ったのに。
目をはなしたすきに、逃げたらしい。
このまま逃げられてたまるか。
俺は船を使って、必至で探し回った。
この町は水路が張り巡らされた町だから、こうして移動しなければならない。
しかし俺は、別の町から観光にやってきていた途中だったため、慣れない船の操作に四苦八苦してしまう。
俺は、そこそこ裕福な家の息子だから、奴隷探しなんて人に探させることができる。けれど、とにかく頭にきていたし、焦っていた。
それに合法的な手段で手に入れたものではなかったため、人に頼むのは躊躇したのだ。
だから苦労しながらも、自分で探すことにしたのだ。
奴隷の姿を求めて俺は、あちこちをしばらく探し回る。
逃げた奴隷は、たまに姿を見つけられるが、なかなか追いつけなかった。
後もうちょっとというところで、なぜかスピードアップして、あっという間に遠くにいってしまう。
俺はまるで遊ばれているかのような気持ちになった。
いや、まるでではなく、そうだったのだ。
俺は水路を見つめて考えた。
奴隷の種族を考えれば、こうなるのは必然だったのかもしれない。
結末は、仕組まれていたのだろう。
最初から。
気が付いたら俺は、人気のない場所に誘い込まれていた。
「私は人魚族の女王。よくも国民たちを大勢奴隷にしてくれたな。その身をもって罪を償うがよい!」
気が付いたら俺は、大勢の人魚に囲まれていた。
人魚は人食い怪魚を使役しながら嘲笑する。
翌朝、成人男性の白骨死体が川に浮く事になった。
この町には住まない魚の死体が近くにあったため、住民たちは怪訝な顔になったらしい。