7 ◇◇◇ルカ視点◇◇◇
治癒、夢見、未来予知。この三つのスキルを持つ者は『神官』『聖騎士』『聖女』のいずれかで働く役目がある。
あるとき大神官が未来予知をした。夢見の聖女がうまれたと。
しかし何年探しても、肝心の聖女が見つからなかった。
ルカ・アンドヴェーラ公爵令息は同じ『夢見』の力を持つ聖騎士として、スキルで様々な人々の夢の中に侵入し、夢見の聖女を探し続けた。
ルカはすでに夢見のスキルを上級まで鍛えていたので、国内で『夢見』が発動されている夢の中ならば、全てを自由に行き来することができた。
発動している『夢見』の夢を泳いでいけば、未発見の『聖女』も見つかる。
そう踏んでの活動だった。
そんなあるとき。
誰かの夢で、幼い少女が泣きながら恐ろしい闇に飲まれているのを見た。
その少女は恐怖に泣きながらも、闇を抱きしめ、そして飲み込んでいた。
それだけでも凄いことなのに、あろうことか少女は自分より何倍も年上の男に対し、頭を撫で抱きしめて、こう言ってたのだ。
「大丈夫です。もう怖い夢は飲み干しました。大丈夫、大丈夫」
子どものように号泣し、夢の世界から消えていく男。
その男が消えたのを見あげる女の子は、顔を真っ青にしている。
当然だ。悪夢を飲み干すなど、精神が壊れるほど恐ろしい事だ。
それなのに彼女は微笑んでいた。助けられてよかったと、顔に書いてあった。
――誰かを救って自分は苦しんでいるのに、あんな笑顔ができるのか。
そして彼女に見とれている間に、迂闊にもルカは呪いに巣くわれかけた。
彼女は遠隔で、とっさに、ルカの呪いすら食べてしまった。
その強さにルカは驚いた。衝撃を感じた。
ルカは気がつけば彼女をまじまじと見てしまっていた。
彼女と目が合う。ルカはすぐに夢から抜けた。
「見つけた。黒髪で緑の瞳、年は10代。……予知された年齢とも符合する」
ルカはそうして『夢見』と現実の調査を並行し、ついに手がかりにたどり着く。
社交界で愛想を振りまいていた、新進気鋭の男爵家、ニルニーシュ男爵家の令嬢の顔を見たのだ。その顔は、夢で見た令嬢とどこか似ていた。
ルカはすぐにそのローズ・ニルニーシュ男爵令嬢に接近し、屋敷に潜入した。
屋敷の中は能力者ならすぐにわかるほど、濃密な夢の気配に満ちていた。
言葉で探りを入れても他に子どもはいないと言う。
しかしルカは探り当てた。マリエラ・ニルニーシュという能力者を。