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四人目?

 翌日、皆で山にきた。ギルとギルの父、兄も付いてきた。


 ギルの父からしたら、子供だけで野盗全員と戦うのは忍びなかったのだろう。以前は下級魔物を倒しながら魔石で食い繋いでいたので、ある程度戦えるはず。こちらとしては戦力が一人増えて有り難い話だ。


「これくらい集めたら来るかな?」


「昨日は二袋だったんだろ? それより多くないと来ないんじゃね?」


 今は下級魔物を倒し、魔石が一袋分たまった。約二十個だ。


「おい、ギル。最近の冒険者のランクEはこんなに強いのか? ワシの若い頃のランクEっていったら下級魔物一体倒すだけでやっとだったぞ」


「親父もびっくりだろ!? オレは弟子入りすることにした!」


「ギルだけずるい! 僕も後で弟子入り申し込んでみよ」


 ギル親子が何やら話している。仲の良い親子だなと、それを横目に俺はジェラルドに提案した。


「よし、ジェラルド昨日の洞窟に行ってみよ。あそこにはコウモリ型の魔物が大量にいるんだ」


「まぁ、ちまちま魔物を倒すよりも手っ取り早いかもな」


「でしょ。みんなここで休憩してて」


 俺とジェラルドは中腹に向かって山を登った。


◇◇◇◇


「おいオリヴァー、お前、俺をはめたのか!?」


「ごめん。まさか今日もいると思わなくて」


 俺とジェラルドの前には昨日と同様にスケルトンがいる。


「大丈夫だよ。倒し方分かったらコイツら案外弱いから」


「そういう問題じゃない!」


 皆知っていると思うがジェラルドは怖がりだ。幽霊の類は全てダメだ。


「でも、魔物は生きてるから大丈夫なんだろ? この間言ってたじゃん」


「こいつらはどう見ても死んでんだろ! もう良いよ!」


 ジェラルドは怒りを露わにしながら詠唱した。


「凍てつく氷よ、此処にある全てのものを凍らせよ、氷結(フリーズ)


「うわッ!」


 俺は咄嗟にジェラルドの上に飛び乗った。


 ジェラルドはここら一帯を全て氷漬けにした。もちろんスケルトンも全て。


「ジェラルドお前、俺も凍らせようとしただろ」


「チッ」


「うわ、舌打ちした」


「ほら、洞窟はどっちなんだ?」


「えっと、こっちだったかな。って、下りるから待って」


「俺をこんな目に合わせた罰だ」


 俺はジェラルドに肩車されながら洞窟を目指した——。


 それから少し歩くと目的の洞窟はあった。


「あ、ここだよ」


「ここにはいないだろうな」


 スケルトンのようなホラー系の魔物のことだろう。


「いないよ……多分」


 コウモリ型の魔物が襲いかかって逃げ出したので、それより奥のことは分からない。


「多分ってなんだよ! もしいたら覚悟しとけよ」


「分かったから。早く倒して戻ろう」


 俺はジェラルドから下りて剣を構えた。


 中に入ると、やはり赤い目が沢山こちらを見ていた。


「よし、ジェラルド行くぞ」


「おう!」


◇◇◇◇


「コウモリは、すばしっこいだけでチョロかったな」


「数を稼ぐにはちょうど良いよね」


 ざっと四十個近く魔石を袋に詰めて、俺達はノエル達が待つ麓を目指している。


「あれ? ギル?」


 ギルが走ってこちらに向かって来た。


「はぁ……はぁ……オリヴァー、野盗が、野盗が現れた」


「あんな目に遭ったのに……俺の苦労を返せ!」


 ジェラルドが俺の胸ぐらを掴んできた。


「ごめんって。それより野盗だ」


「そうだ。野盗、あいつらのせいで俺はあんなお化けを見る羽目になったんだ! オリヴァー行くぞ!」


「珍しく燃えてるな……」


 俺はジェラルドに続いて走った。


 走るとあっという間に目的の場所に到着した。全体を観察していると、エドワードが手招きした。


「オリヴァー、ジェラルド、遅かったね」


「今どういう状況?」


 野盗はざっと十五人はいる。戦闘にはなっていなさそうだ。


「野盗が交渉を持ちかけてるところ。リアム殿下が対応中」


 野盗の(カシラ)っぽい人が口を開いた。


「悪い話じゃないだろ? オレ達に半分で良いから魔石を譲ってくれたら良いんだ。それだけで君たちはタダで聖水が手に入る」


「その聖水が本物だという証拠は?」


「こちらの聖人様が直々に作ったものだ。疑うと言うなら聖人様を愚弄することになるぞ。良いのか?」


 聖人様と呼ばれた男は、ギルの父の情報とピッタリ当てはまった。ピンクの髪に背が高く、切れ長な目に、赤いマントを着た男。ただ、年齢が……三十代? いや四十代か? 


 それに、ピンクの髪も俺は短髪で癖っ毛だが、聖人様は長髪にストレートの髪を後ろで束ねている。俺とは似ても似つかない。


 リアムが笑いを堪えながら言った。


「聖人様は光魔法が使えるんだよね? ここで使って見せてよ。そしたら考えてあげる」


「くそ、生意気な……」


「よせ、まだ(カシラ)から戦闘の許可は出てない」


 野盗同士でやや揉め始めた。


 聖人様と呼ばれる男が前に出て来た。


「良いだろう。見せてやろう」


「え、あの人本当に光魔法使えるのかな? まさか四人目?」


 この国で魔法は貴族しか使えない。その認識自体が間違っているのかもしれない。それなら平民、ましてや野盗の情報などアイリス先生のところまで入って来なかったのかもしれない。


 そして、もし聖人様が光魔法を使えるならば、周りの野盗連中も光魔法を見慣れているはず。これから俺達がしようとしている事は失敗に終わるかもしれない……。


 皆が聖人様に注目した。聖人様が右手を前に出すと、その右手が光った。


「どうだ!」

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