表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/159

初めての魔物退治

 山に足を踏み入れた俺達は周囲を警戒しながら歩いた。


 バサバサバサッと鳥が飛び立つ音がする。


「ノエル大丈夫か? 怖かったら……」


 ノエルを心配して後ろを振り返れば、目をキラキラさせていた。


「お兄様? どうなさいました?」


「えっと……楽しい?」


「はい! もうピクニック気分ですわ」


「あ、そう。良かったね」


 魔物退治をピクニックとは……流石ノエルと言うべきか。

 

 そんなやり取りをしていると、目の前にオークが現れた。


「うわ、これが魔物か」


「本で見るよりも実物の方が素敵ですわね!」


「え、素敵?」


 あれが素敵……。ノエルの目には俺と違ったものが映っているのだろうか。


 エドワードが既にオークに斬りかかっていたのだが、すんでのところで制止し、戻ってきた。


「エドワード?」


「これ、僕が倒したらノエルに嫌われない? オリヴァーやってよ」


「いや、剣の修行したいって言ったのエドワードじゃん」


「そうだけどさ、お願い。次は僕が斬るから」


「しょうがないなぁ」


 俺は剣を引き抜いて体勢を低くした。そして、向かってくるオークに飛びかかり、縦一閃刃を入れた。


 オークはその場に倒れて動かなくなった。


「うわー、斬っちゃったよ」


 藁や木しか切ったことがなかったのに……いや、暗殺者っぽい人斬ったか。それにしても生身の魔物は生々しい。


「これ、どうやったら魔石出てくるの?」


「心臓の辺りにあるって聞いたことあるよ」


「え……まさか、えぐり取るの? ムリムリムリ。ジェラルドやってよ。剣貸すから」


「嫌だよ」


「では、わたくしが!」


 ノエルが嬉しそうに前に出てきた。


「いやいやいや、ノエルにはさせられないよ」


 俺は恐る恐るオークに近づき、心臓に剣を向けた。


 俺はふと思った。これは魔王より残虐非道な行いをしているのではなかろうか。このオークは俺がここに来なければ死ぬこともなかった。そして死んだ挙句に体をえぐられるのだ。


 しかしながら、そんなことを考えても後の祭りだ。やってしまったものはしょうがない。俺はオークの心臓に刃を入れる前に一つ魔法を施した。


「聖なる光よ、汝に安らかな眠りを、冥福(ブリス)


 すると、オークの体がサラサラサラと上の方からゆっくり消えていった。残ったのは赤い魔石だけだった。


「え……」


 呆気に取られていると、ジェラルドとエドワードに呆れた顔で見られた。


「お前、そんなこと出来るんなら最初からやれよ」


「本当だよ。あんなに騒いでおいて」


「いやいや、さっきのはおまじないみたいなやつで、体が消えたりしないはずだよ。多分」


 今まで使ったことがないから分からない。しかし、体が消滅するなんて聞いたことがない。


「相手が魔物だから浄化しちゃったんじゃない?」


「光魔法は特別ですものね!」


「そうなのかな……」


 理屈は分からないが、魔石をえぐり取らなくても良くなったことに安堵した。

 

 俺は剣についたオークの血を拭ってから鞘に収め、魔石を拾って鞄に入れた。


「さて、前に進んでみよっか」


◇◇◇◇


 俺を先頭に歩を進めて行くと、何やら周りから視線を感じる。


「見られてる?」


「見られてるな。結構な数いそうだ」


 俺が立ち止まると後ろを歩いていたジェラルド達も自然と立ち止まった。


 草陰からヒョコッとゴブリンが現れた。一体姿を現すと次から次へとゴブリンが出てきた。


「こんなにいたら流石に怖いな」


 ゴブリンが軽く二十体はいる。それでもノエルだけ上機嫌だ。


「キャー! 生ゴブリンですわ! お兄様、あれがお母様であれがお父様かしら。それともお兄様?」


 ん? 確かに大きさがそれぞれ違って顔つきも若干違うようにも見える。


「いや、あっちが父親じゃないかな? こっちの子にそっくりだ。って、知らないよ! ゴブリンの家族構成なんて!」


「お前ら兄妹で何ふざけてんだよ」


「あ、うん、ごめん」


 ジェラルドに言われて臨戦態勢をとるが、ゴブリンにも家族がいるのかと思うと何だか複雑な気分になった。このまま殺すと一家虐殺?


「オリヴァー、余計なこと考えてると負けるよ」


 リアムに『負ける』と言われると本当に負けそうだ。こんな所で死ぬわけにはいかない。相手は初対面のゴブリン一家だ。情は捨てよう。


 一番大きなゴブリンが何やら合図を出すと、一斉に短剣で斬りかかってきた。


 俺とエドワードは目の前にきたゴブリンを剣で斬り倒し、ジェラルドは魔法で対抗した。


「凍てつく氷よ、敵の心臓をも貫け、氷弾(アイスバレット)


 ジェラルドの氷の弾丸は一気に五体のゴブリンの心臓辺りを貫き、魔石が出てきた。


「ジェラルド凄ッ!」


「僕も負けてらんないな」


 エドワードも本気になったようだ。ゴブリンの攻撃をかわしつつ、一体一体軽やかな身のこなしで確実に斬り倒していった。


「綺麗ですわね」


「エドワードは音を立てないんだよ」


「確かに何の音もしませんわね。それに、まるで踊っているかのようですわ」


 ノエルがエドワードに見惚れている。後でエドワードに教えてやろう。


 俺は三体目のゴブリンを斬り倒すと、既に他のゴブリン達も皆倒れていた。


「聖なる光よ、汝らに安らかな眠りを、冥福(ブリス)


 最後に俺が詠唱すれば、ゴブリンは魔石だけを残して一斉に天に昇るように消え去った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ