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11.犬扱い

 別に感謝しろとか崇め奉れとか言ってるわけじゃない。ちょっとくらい嬉しそうな顔をしてくれても良かったのにと麻梨菜はふくれていた。

「せっかく助けに来たのに……」

「なんでそんな勘違いしたんだよ……」

 レジーナたちがめちゃくちゃにした庭や玄関の片づけを手伝いながら、ジーノスがはあとため息を吐いた。なんでって言われても。

 ジーノスが帰ってこないから悪いんじゃんという麻梨菜の主張は、帰りが少し遅れるという知らせが今頃届いてるはずだと呆れた顔で返されてしまった。そんなん知らんもん。情報化社会に染まり切った麻梨菜にそんな悠長なことをしている暇はないのだ。一分でも遅れたら遅刻である。

 それにレジーナも危険を知らせに来たのだと言い訳しかけて、やっぱり口をつぐんだ。ジーノスに言われて後片付けを手伝っているレジーナは、ひと作業終えるごとに、できたよ!見て見て!というようにジーノスにすり寄っていっていて鬱陶しいことこの上ないが、その様子はジーノスに会えてうれしくてうれしくて仕方がないといった性質のもので、本当にこいつ、ただジーノスに会いたかっただけなのではと思えてくる。結局麻梨菜を連れていこうとしたのも人間と話せる人が欲しかっただけみたいだし、ジーノスに会いたい、でもお屋敷の中から出てこない、麻梨菜に呼びに行かせよう。と、そんなふうな思考回路だったのだろう。

 それにすっかり乗せられてしまったとあっては、人類としての沽券に関わる。だからやっぱり麻梨菜が早とちりしてしまったせいだという説を覆すことができずに両ほほをぷくと膨らませる羽目になるのだった。

 ジーノスは別に捕まっているわけでも危ない目に遭っているわけでもなかった。

 カティアがいなくなって、それこそ神殿の仕業だと早とちりした取り巻きの男どもは、他を調べもせずに真っ先に神殿に殴りこんできたらしい。犯人は別にいると気付いた彼らは手分けして他の心当たりを探しに行くことにして、ジーノスが神殿から一番近い場所を担当したようだ。それがこのお屋敷である。

 果たして彼女は、いた。ここに保護されていたらしい。なんでも、孤児院の卒業生の様子を見に行った帰りに盗賊に襲われかけたところを、このお屋敷の顔見知りに助けてもらったのだとか。しかもその盗賊、過去にもカティアたちと対立しており、また仕返ししに来る可能性がある。とてもじゃないが一人では帰らせられない。孤児院のほうに誰か迎えを寄こすように知らせをやって(この知らせが届く前にあいつらは早とちりして神殿に乗り込んできたのだ)、ようやくさっき迎えが来て彼女は帰っていった。やけに重装備の見張りがいたのも、盗賊の襲撃を懸念してのことらしい。悪の親玉の館かと思ったじゃん紛らわしい……。

 ジーノスももし何かあった時に戦力になればと思って留まっていたらしく、てことは二人きり(でもないが、実質二人きり)で何かあったのではと危ぶんだ麻梨菜だったが、迎えに来たイケメンと盛大に抱き合うカティアを見て、こいつの入る隙はなさそうだと一応は胸をなでおろしたのだった。ジーノスも二人の再会をにこにこと見守っていたし、カティアに気があるんじゃなくって、実は孤児院に泊まった日にあのイケメンと仲良くなっていて、あいつのために協力しようとしたのかもしれない。……なーんだ。

「……。そんな心配した?」

 こちらの気持ちを試すようにちらりと覗きこまれて、麻梨菜はぷいと顔をそむけた。でもその無言を肯定と受け取ったようで、ジーノスはへらりと笑った。何その嬉しそうな顔……、むかつく。先ほどは少しくらい嬉しそうな顔をしろなどと思っていたことは空の彼方に吹き飛んでいる麻梨菜だった。

 そして二人で話していると当然のようにレジーナも割り込んできて、クーンと甘えたような声を出してジーノスに鼻先を押し付けた。

「ああ、レジーナも。よしよし、一人にしてごめんなあ。ちゃんとご飯もらってたか?」

 わしゃわしゃと撫でてもらってレジーナは嬉しそうに目を細めた。それから、お決まりのように麻梨菜のほうを横目で見やる。

 ……ふっ、ざまあ。

 どう好意的に見積もっても、そういうたぐいのことを言っている目だった。……むかつく。こっちだって一人にされてたし救出にだって駆け付けたのに(まあそれは勘違いだったけど)!

「ん!」

 不満顔でジーノスをつつくと、彼はちょっと戸惑うように麻梨菜のことを上から下まで眺めた。その視線が再び上に戻ってくると、やっぱり不満顔の麻梨菜と目が合って、それでようやくおもむろに片手を伸ばして、

「えーと……。よしよし?」

 恐る恐るというように麻梨菜の頭をその手で撫でた。それはずいぶんぎこちなかったが、助けに来てくれてありがとうと言われているように感じてなんとなく溜飲が下がった気分になった。……のだが。

「ちゃんとご飯もらってたか?」

 そのあとレジーナと全く同じことを聞かれて麻梨菜は全力でその手を振り払った。

「うがあ!」

 犬扱い!

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