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君を自転車で轢いた後 ※完結済み  作者: じなん
第十四章 燃える炎のように
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第八十五話 キャンプ当日


「まいったねぇ……これはあまり良くない状況だ」



 朝に今日の天気予報を見てうめく。

どうやら予定よりも大幅に悪くなってしまっていて、昼過ぎからはけっこうな雨が降るとのことだ。


 あんなに楽しみにしていた彼女には悪いが、今回は安全を機して延期するには妥当なように思える。



「もしもし……ああ、園尾さん。天気予報は見たかい?」


『ええ……雨、降るみたいね』


「そうなんだよ。あまり良くなくてねぇ。

せっかくのキャンプだけれども、今回は___」


『行くわ』



 言葉を遮られて宣言される。そこには確固とした意思があるようで、思わず驚いてしまった。



「しかしねぇ……かなり慌ただしいキャンプになると思うよ? テントを張って、食事をしたらすぐにテントを閉じて帰るような日程になりそうだ」


『……まあ、仕方ないじゃない。

それにこれを逃したら、次は期末テストの後になるわ』


「ああ……そういえば期末テストもあったねぇ……」



 僕にはあまりにもどうでもいいので半ば忘れかけていたが、特進コースの彼女にとっては重大なイベントだろう。しかしここまでキャンプに執着するとは思わなかった。



「わかったよ。そこまで言うなら行こうじゃないか。ただかなり手際良く作業していくつもりだからね」


『……もちろんよ。楽しみね』



 そう言って、駅での待ち合わせに急いだ。

まあ今回のキャンプは日々勉強続きの彼女への息抜きが主な目的だし、そんな彼女が行きたいと強く言っているなら、こちらとしては強く反対することもないだろう。


 そう思いながら、待ち合わせ場所で待っていたのだが……?



(……んんん……? ……遅いねぇ。もう予定時刻から30分ほども時間が経ってしまっているよ)。



 普段は待ち合わせ時間を違わずに来てくれる彼女が、どういうわけか今日に限って来るのが遅い。


 慣れない荷物で多少の遅れはあるとは思ったけれど、それにしたって遅いのではないだろうか?

そんなことを考えながら更に1時間ほど待つと、ようやく声をかけられる。



「ごめんなさい……木石くん。かなり待たせてしまったわね」


「……あー……何かあったのかい?」


「ええ……その。荷物を運ぶのに手間取ってしまったの。後は雨具とかを一応持って来たから、それを収納するのにも時間がかかったわ」


「ああ……まあ今日は予報が突然外れたから仕方ないよ。今度からは雨用の装備も事前に組み込んでおくといい」


「……本当にごめんなさい。今後気をつけるわ」



 多少のトラブルはあったものの、バス乗り場からキャンプ場最寄りまで急ぐ。キャンプ場はそれなりに山間にあるため、バスの乗車時間も長くなるだろう。



「……こうして木々が増えていく光景も、なんだか懐かしくていいわね」


「そう思うかい?……喧騒からどんどんと離れていくようでね。僕も好きだよ」



 これがよく晴れた日ならそれもひと塩だったのだが、今日はあいにく曇り空の下での運行だ。

けれども、そんなどんよりした感じもそれはそれでノスタルジーが増して良いかもしれない。


 それに、天気が悪いからかバスの中にいる客の中で、キャンプ場に行くような大荷物を持っているのは僕たちだけのようだ。



(まあ、雨の中でのキャンプは一般的には中止だからねぇ。僕たちが異常とも言えるか)。



 そんなことを思いながら、どんどんとその色を濃くしていく雲に思いを馳せる



「……わくわくしてくるわね。木石くん」



 そんな僕の不安をよそに当の本人は相当にテンションを上げているようで、これはこれで珍しい光景だとのんきに思ってしまった。

 

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