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君を自転車で轢いた後 ※完結済み  作者: じなん
第十四章 燃える炎のように
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第八十三話 趣味


 土曜日は園尾さんとのデートで潰れたので、日曜日は本来の予定であった趣味の時間に費やすことにした。


 実は今の僕のマイブームは……骨格標本作りなのだ。


 以前、山のフィールドワークとして動植物を調査している時に、猟師の方と知り合った際にいただいた鹿の頭骨の骨格標本を作るために、一年間ほど乾いた砂の下に埋めておいたのをそろそろ取り出そうと思っている。


 ほとんど毎週末、様子を見に行ってたびたび掃除をするのは少し面倒だったが、こうして完成が近づくとなんともわくわくしてくる。

散策用のカジュアルな服装に着替えて大きなリュックを持って出かける。


 大沢は近くに森林公園がある緑豊かな地域だ。

山もほど近くキャンプ場もある。バスで奥地へと進んでいくと、どんどんと高い建物が無くなって田園や山が近くなってくる。


 こういうアクセスが良い森林は貴重だ。日々アスファルトの上で排気ガス混じりの空気を吸いながら生活していると、無性にこういう場所に帰りたくなる。


 そんなことを思いながらも……。



 僕はとりあえず、目的地とは違うバス停で途中下車をした。



(ふむ……。降りてきたね。どうやらこれは……)。


(尾けられている……ってやつかな?)




 バス停に乗る前からもしや……と思って少し意識を向けていたがこれでほぼ確定かもしれない。僕は何者かに尾行されているようだ。


 こうして適当に道を歩いている間にも何処の誰かは知らないが、十数メートルの距離で僕の後を追う人影があるようだ。



(ストーカー……というやつかねぇ……?)



 しかし……これは少し困ったことになった。

何もやましいことがないなら別にこのままでもいいのだけれども、僕には思い当たる節があるのだ。


 それは園尾さんのことだ。


 彼女は人気がある人だし、僕は最近彼女に告白されたという噂を情報部経由で流している身だ。

だとすると、彼女を慕う誰かが僕を付け狙っている可能性はなくも無い。



(となると、このまま人気のないところに行くのはちょっと怖いねぇ……。大回りして今日は帰るとするかぁ……)。



 万が一に備えて僕はそのまま帰宅する道を選んだ。一応、骨格標本の方は別に一週間ぐらいなら放っておいてもいいだろう。


 しかし……困ったことになったな。


 僕にストーカーがいるとなるとあまり単独で人気のないところに行くのは憚られてしまう。

それにこういうものは実害が出ない限りは警察は対応してくれないものだと聞いたことがあるから、外部からの協力も難しい。何より今日の尾けられているという予想は、あくまで予想であって実際にそうなのかもわからない。



(ストーカーに悩む人の気持ちが少しわかるねぇ)。



 早めに家に帰って自分の部屋で寝転びながら、どうしたものかと考え巡らせる。いっそのこと適当に手を出させてから正当防衛で確保するぐらいが妥当だろうと結論づけて、通販で防犯スプレーを予約しておいた。


 けれど……今回の件は園尾さんにも影響があるかもしれないから、もし過激なストーカーであるなら逆恨みして彼女を狙いかねない。今も登校時と放課後は彼女と過ごしているのだが、今後は彼女の盾となる覚悟も必要かもしれないなと自分にしては珍しく殊勝なことを考える。


 なんだかんだで友人の身に危険が及ぶのは僕には看過できない問題だ。とりあえずは今日のことは彼女にも伝えておくべく簡単にまとめて彼女へとメッセージを送信する。するとすぐに返信が来た。



『報告してくれてありがとう。

あたしも気をつけておくわ』



 なんとも簡潔だが、下手に怖がられるよりはマシかもしれない。彼女の安全のことを心の片隅で考えていたからか、週末の時間はあまり楽しむことはできなかった。


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