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君を自転車で轢いた後 ※完結済み  作者: じなん
第十四章 燃える炎のように
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第八十一話 キャンプ用品


 そんな日々を過ごしている内についに週末が来たので、二人でキャンプ用品を買いに行くことにした。


 特進クラスの園尾さんは土曜日に二時間だけ学校での勉強があるため、昼過ぎから遊ぶことにした。

駅前で僕が待ち合わせ場所で本を読んでいると、園尾さんが近づいてきて話しかけてくれる。



「やあ、園尾さん。休日に会うのは初めてかな?」


「そうね。今日は色々とよろしく」



 園尾さんの今日の格好は……。

白のブラウスに白い花とストライプのスカートか。

全体として清楚に纏めていて、彼女のツンとした雰囲気を和らげていてよく似合っている。


 けれども、この時間だと学校から直接来るものだとばかり思っていたのだが……?



「その服、園尾さんらしくてよく似合っているよ」


「木石くんもよく似合ってるわ」



 一応僕も黒のポロシャツに黒のパンツ、白のシャツで全体的に細めに見えるように揃えてきたが、とりあえずは社交辞令と受け取っておこう。



「……制服じゃないんだねぇ?」


「……ああ、今日は午前授業は休んだわ。せっかく初めてのデートだもの。オシャレしたいじゃない」



 驚いた。彼女ほどの優等生が学業よりも私事を優先するとは。確か土曜日の授業は出席を取らないビデオ授業だったはずだが、それでもこの日のためにサボるとは。



「楽しみにしてもらえて嬉しいよ。

さて、早速キャンプ用品のお店に行こうか。

もうお昼ご飯は食べているよね?」


「そうね。早く行ってじっくりと内容を吟味したいわ」



 二人並んで歩いているとそれなりに人がこちらを向いてくる。どうやら園尾さんは衆目を集めてしまうようだ。隣に並んでいる身としては少々鬱陶しく感じる。


 そんなことを思いながらキャンプ用品店に到着した。



「今更だけども……園尾さんは僕と一緒にキャンプに行くということで良いのかい?」


「? そうよ。あなた以外とは行かないわ」


「いや、二人用だと結果的には安くなるけど、今後一人で行く時とかに使いにくいだろうし、安い買い物じゃあないからねぇ」


「一人では行かないし今後もあなたと使い続けるから問題無いわね。さあ、おすすめを教えて」



 それならいいんだけどねぇと思いつつ、真剣にテントを吟味していく。今後、彼女一人でも大丈夫なようになるべく軽く設営しやすいものを見つけて、とりあえずそれを折半して買った。



「後はチェアとグランドシート、食器類かねぇ。

それ以外は僕のものを流用できるけど、一人でキャンプするなら別途必要になりそうだ」


「そうなのね。寝袋とかはいらないの?」


「……いや、まあ泊まる予定がないなら別にいらないけどねぇ……。この際だから買っておこうか」


「お願いするわ。備えておけばいずれ必要になる時もあるだろうし」



 ……本当に僕と一緒に一晩過ごすつもりなのか?

とは言わないながらも、彼女が欲しがっているなら……とおすすめを選んでおく。

まあ今後災害とかで緊急避難が必要な時にあって困るものではない。



「買ったものは全て郵送で君の家に届けてもらうといい。荷物になるのも手間だろう」


「そうするわ。……自分用のものでも見てきていいのよ」



 そういえば結構手持ちのものは草臥れていたな……。

と思い、その場を離れて自分の消耗品や買い換えるものを探してみる。彼女が住所を書いている時にそれを盗み見ようとも思ったが……まあ、そこまでする必要もないだろう。

何処に住んでいるかなんて、些細な問題だ。



 無事にキャンプ用品を買えたので、ひとまずはおやつを食べることにする。

彼女は甘いものが好きなので何かあるかと探していると、ちょうどクレープ屋の屋台を見つけた。



「クレープでも食べようか?」


「いいわね。あたしはチョコ味のものにするけど、

木石くんはどうするの?」


「んー……今日はバナナの気分かなぁ」



 二人でクレープを注文してそれぞれのものを受け取り、公園のベンチで食べることにする。


 久しぶりに食べたがクレープは美味しい。

香ばしいクレープ生地と中の新鮮なフルーツの甘みが脳に栄養を与えてくれる。

チョコシロップと控えめな甘みのクリームもあって食べる口が止まらない。



「……木石くんは本当に甘いものが好きなのね」


「まあね。このクレープは特に美味しいから」


「……そうだ。取り替えっこしましょうか」


 

 すると、僕の手に持ったクレープを取り上げられ、代わりに園尾さんが持っていたチョコクレープが手渡される。



「えー……っと? いいのかい? その……」


「こういうことをしたほうがデートらしくていいでしょう?」


「……まあ、デートらしいと言えばらしいけども」



 なるほどこれは彼女の目論みの一種なのか。

一応は僕への好意を表すために色々と画策していくつもりらしい。まあ、僕としては気になっていたチョコフレーバーが食べられて嬉しい限りだ。


 クレープを食べ終わり目的を果たせたので解散でもしようかと思い、彼女に声をかけてみる。



「美味しかったねぇ。さて、そろそろ解散しようか」


「……まだちょっと時間があるわね」



 すると、園尾さんは少し考えた後にふと思いついたように口を開いた。



「そう、映画でも観に行きましょう。どうかしら?」



 どうやら、デートはまだまだ続くらしい。


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