第七十五話 突然の告白
『放課後に校舎裏に来てほしい』
少し興奮しながら指定された場所へと歩を進める。
僕のような人間を好きになる人がいるとは驚きだ。
一応入学当初や中学生の時には何度かそういった経験はあるものの、ボクと付き合っているうちにどんどんと僕に幻滅していくようで数週間と保った試しが無い。
校舎裏という定番のスポットに足を踏み入れるとどうやらお目当ての人物がいるようだ。
髪は黒、髪型はツインテールというなんとも高校生としては今時珍しいもの。
背は僕より少し低いぐらいだから……165cmほどか?
体型は標準か少し痩せ。
服装の特徴としてはスカートの丈を短くしていないことと、夏も近いのにニーソックスを履いてることぐらいか。
ふむ? 僕の知り合いではないようだが……?
「僕を呼んだのは君であっているかい?」
「………………」
んー? こっちを見て固まってしまったようだ。
緊張しているのかな……?
「ああっと? 大丈夫かな?」
「……ええ、木石幸平、よね?」
「そうだよ。君に呼ばれたと思ったんだけど」
ふむぅ? 呼び出しておいて名前を確認するとは。
どうやらそこまでこちらのことを知っているわけではないのかもしれない。そうすると、なんでここに呼び出したかが疑問になるのだが。
「あたしは園尾翠」
「園尾さん。確か初対面であってるかな?」
園尾翠……実は一応知っている名前ではある。
確か入学当初に男子の間で騒がれていた人物の一人で美人だと評判だったはずだ。
だが、お近づきになろうしてもけんもほろろな態度で男子からは高嶺の花とされていたはず。
「………………」
「……えーっと? 園尾さん?」
再びの沈黙。
園尾さんはこちらをじっと見て何やら思いを巡らしているようだ。なんだろうか?実物を見て幻滅でもしたのかな?
「……木石くん。あなたに伝えたいことがあるわ」
「はい。なんでしょう?」
ようやく考えがまとまってようで園尾さんがその重い口を開いた。
「あたし、あなたが好きよ。あたしと付き合って」
「……ふむ、悪いけど断ってもいいかな?」
僕は即答でその申し出を断る。
父からは良い人を見つけるように言われているがそれは努力目標であってそこまで重要じゃない。そして相手がよくわからない人間だと思うと仲良くなれる気がしない。
「……じゃあ、友達からでもいいわ」
「随分とあっさりだね。
僕としてもそれなら別に構わないけども」
どうやら話がわかる人のようですぐに食い下がってくれた。園尾翠は確か特進コースの生徒だったはず。そう考えると無駄に感情的になるのは無意味と感じたのかもしれない。
「そうね。……友達の第一歩として、連絡先を交換しましょう、いいわよね?」
「もちろん、これからよろしくね。園尾さん」
こうして僕に新しい友人ができた。
園尾翠さん。正直何を考えているのかよくわからないので……色々と聞き取りを行う必要がありそうだ。